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雑誌編集に学ぶ、ソーシャル運用の秘訣 (2/2)

2012年12月04日 11時00分更新

文●小池 勉/コンテンツブレイン

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SNS的編集会議の進め方

 編集会議ではどのような議論をすればいいのでしょうか。

 SNSは、対話が基本。発信された情報に対して自分の考えを述べるというコミュニケーションが普通です。だから企業SNSのネタ探しでも、ユーザーに参加者意識を持ってもらえるような「リアクション」を想定することが重要となります。

 つまり、「対話の元」を提供するという観点からネタを吟味するのです。「より大きなリアクションを呼び起こせるようなネタは何か」という狙いを持って、情報を発信していくわけです。

 SNS担当者が、取材から帰って、編集者に話をしたとします。そのときの編集者の反応によって「この人は、この部分に興味を持ったようだ」と理解することもあります。自分が興味を持ったこと、他人が興味を持ったことの違いを理解することは、発信する情報の幅を広げることに役立ちます。

 編集会議でのネタ探しというと、みんなで情報を持ち寄るイメージがあると思いますが、ネタに詰まったときは「おもしろいと思う写真を持ち寄ってみよう」といったあいまいな編集会議があってもいいでしょう。各自が見つけた写真にコメントを入れてボードに貼り、みんなで感想や意見を出し合うのです。その中にはみなさんの会社の魅力を引き出すネタもきっと見つかるでしょう。

 ときには、製品開発担当者や営業担当者の方を編集会議に参加してもらい、新しい風を入れることも効果的です。

興味を喚起するネタは「現場」に落ちている

 以前こんな事例がありました。ある輸入メーカーの新製品の実物が、海外から届きました。しかし海外ではすでに発表されているので、国内でも知っている人がいることはわかっていました。

 そこで編集会議で提案しました。「今さらカタログの写真をアップしても、驚きはない」「社内の人間だからこそ撮れる写真を掲載しよう」と。通関を通って届いたばかりの段ボール箱の山を背景に、開封した製品を撮影して、「いま届いた!」というシーンを見せたのです。この事例では、新製品を魅力的に紹介するために、「SNS的な演出(対応)」として「ホット感」や「ニュース性」を追加したわけです。

 段ボールの写真によって、読者に「匂いが届くような」倉庫の覗き見を体験させることができました。ファンの心理を理解した、おもしろいアイデアだったと思っています。

 実は、このアイデアを編集会議に出したのは、国内に届いた段ボールをいつも開封している現場の人でした。

言葉の限界、写真の威力

「新製品が日本に届いた」ということを言葉だけで伝えても、ユーザーのリアクションはあまり期待できません。しかし、1枚の写真を追加することで、大きなリアクションを喚起できたわけです。

 写真は、言うまでもなく、文字よりも情報量が多いのが特徴です。人物、背景、場所、雰囲気が一発で伝わります。料理の写真なら「美味しそう」という雰囲気、パーティの様子の写真なら「楽しそう」という雰囲気も。

 写真をうまく活用すれば、リアクションを呼び起こしやすくなります。たとえば結婚した友人の写真を見れば、まずは「おめでとう」とコメントしたくなりますよね。みなさんの企業のなかにも、思わずコメントしたくなるような写真が撮れるシーンがあるのではないでしょうか。

 このような運用も、担当者1人だけではなく、編集チームとしてやっているからこそ実現できることです。SNSの手法、運用を考える上で編集会議が重要という意味が理解できたでしょうか?

 最後に一言。私はSNSの運用とは、長く続くピンポンのようなものだと思っています。試合の勝ち負けではなく、心地よいラリーを続けることが楽しいピンポン。相手が打ちやすいところに返す、また相手もあなたにいい球を返す、そんなふうになれば成功です。SNSは、あなた(企業)とユーザーをきっと近づけてくれます。


著者:小池 勉(こいけ・つとむ)

株式会社コンテンツブレイン 代表取締役。Webマーケティングプランナー。家電、自動車からアパレル、食品、ブライダル、クレジットカード、PCメーカー、部品メーカーまでさまざまなジャンルのサイトプランニングを数多く手掛ける。またWebにおけるCRM戦略の立案、アイトラッキングを活用したWebコミュニケーション効率化なども行なっている。


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