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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第107回

イヤホン激戦区に投じられた「K374」

「K3003」の遺伝子を受け継ぐ低価格イヤホンの実力は?

2012年12月01日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ボリュームゾーンにおけるブランド力

 イヤホンの性能は、同じテスターが相対的に比較しなければ意味がない。というのは私の考えだが、K374が投入された価格帯はボリュームゾーンゆえに製品が多すぎ、その音質を相対的に比較しようにも難しい。だから、この価格帯の製品は発表されたことがニュースとして流れるくらいで、レビュー記事は滅多に見かけない。

 買う側から見れば、音の差がいまひとつ掴み切れないものだから、色やデザインのように目に見えるところで選ぶしかない。売る側にしても、他と構造的に差別化する要素がないのだから、それは同様である。

 逆にK3003のように、何かが飛び抜けた製品というのは強い。価格的にイチバンということになると、必然的にみんながどんなものかと聴きたがる。だからそこでコケると一大事だが、技術力のあるメーカーは、そういう大事なところは外さない。そこで得た評価がブランドの財産になる事を知っているからである。

 身も蓋もない言い方をすると、今回の製品はその財産の切り売りだ。ただ、「AKGだから何かいいような気がする」という漠然としたイメージではなく、「K3003直系の音の割に安い」という説得力を普及価格帯の製品にも持てるという事である。しかし、他のメーカーでもそうだが、安い製品でそうしたブランドの特徴を維持するのは難しい。

 ダイナミック型ドライバを使ったカナル型は、どれも似たような構造にならざるを得ず、おのずと音質の長所や欠点も似通ってくる。特にK374の投入された価格帯の製品は、どんぐりの背比べ。その中でK374は頭半分くらい抜けた製品とは思う。ただ、K3003の遺伝子を引き継げたかと言えば、残念ながら首を横に振らざるをえない。

 一方、K391NCはノイズキャンセリングという特殊なモデルながら、途中に余計な回路を挟んでいる欠点を感じさせない上に、K3003に近い音に躾けられている。K374の倍以上の値段だが、それでもお買い得のように感じられるのは、消音性能の高さと同時に、やはり私が「K3003直系の音の割に安い」と感じてしまうからだろう。

 
AKG K374、AKG K375(K374のスマートフォン向けマイク・リモコン付きバージョン)
周波数特性 10Hz~24kHz
インピーダンス 28Ω
感度(1mW 104dB/mW
AKG K391NC
周波数特性 12Hz~24kHz
インピーダンス 32Ω
感度(1mW 92.5dB/mW(パッシブ)、100dB/mW(アクティブ)
 

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