イエデンワについて
イエデンワユーザーが詳しくお伺いするなど
──誰しもが感じたと思うのですが、なぜイエデンワを企画されたんでしょうか? ビジュアルでいえば、固定電話。でもPHSだからモバイルもOKと突っ込みどころ満載なのですが。デザイン的には20年前と変わらないですよね?
檜山 デザインからすると、ダサいです。ウィルコムさんもダサいのがいいというのもあります。コンセプトモデルとしてウィルコムのショーで展示していたことがありまして、そのときはハンドセットもワイヤレスだったんですが、カラーはピアノブラックでした。当時は、おじいちゃんは使えないだろうと思っていたので……あえてダサいのでいきましょうと。
──ではあの、ジーコジーコとダイヤルを回すタイプもあったんですか?
檜山 ありましたが、子どもが使うところを見てやめたんです。番号のところプッシュしちゃうんですね。「お父さん、掛からない」っていうんです。これじゃいかんということで、諦めました。レトロ風にもう1回作るのはアリなんですが……、昭和初期のデザインになりませんかという要望もきます。技術的には可能なのですが、売れるか売れないかの問題がありますよね。
──想定していた層はやはりシニアだったんですか?
檜山 一般的な考えとしては、シニア層を想定していました。昔、シニア向けの端末も出していたんですよ。ワンプッシュで使えるものだったんですが、逆に「俺はまだボケてない!」と言われてしまいました。それでは、ストラップフォンみたいなものを作ると「小さくて見えない」と(笑)。スマホは使わないし、電話番号は全部覚えている……その部分をイエデンワでくすぐったら、とても反応が良かったんです。
──ABITサイト上のお知らせに「旅するイエデンワ」「スマサー」といった同人誌への掲載情報があるんですが……、あれはどなたがもってきたものなんでしょうか?(編註・林氏はスマサーでも書いている)
檜山 たしか、ご同業の方がもってきてくれたハズです。こういう風に取り上げてもらえる……、というか、かわいがってもらえるのはうれしいですね。イエデンワを出すときに、そういう熱心なファンを掴んでみようという狙いもあったんです。最初に情報をTwitterに流して、さらにアニメ方面にもさら~っと流してもらいました。それにしても「旅するイエデンワ」の制作者さんはすごいですね。見ていて、うれしいばかりです。まさか同人誌が出てくるとは思っていませんでした(笑)。
──ハッシュダグ「#旅するイエデンワ」を見たときに印象は?
檜山 小道具になった携帯電話(?)はめずらしいなと。新しい文化でもありますね。単純に考えて、固定電話を持ち歩くっておかしいじゃないですか。性能評価の記事はたくさんあるんですが、写真でサマになっているというのは、ものすごくおもしろいです。某カフェのテーブルにイエデンワがいっぱい並んでいるだとか、空港の荷物チェックを通過しているイエデンワだとか(笑)。
──意外と自己主張が強いですよね。iPhoneとかの行列取材のときに出しておくとかなり目立ちますし、編集さんにイエデンワが目印といえば通じてしまうくらいです。
檜山 まだイエデンワが出る前にページを作ったんですが、そこでもイエデンワを持って外で電話をしているカットがあるんです。撮影のときは、やたらと注目されました。フィールドテストがあって、ハチ公の裏で電話したり電車の中でチェックしていたんですが、もはや通報寸前でしたね。「あの人、話す相手がいないのに、固定電話で電話してる!」って(笑)。
──スカイツリーのオープン前に開催された内覧会に持って行ったんですが、そのときはTVクルーのほうから、同じような視線をいただきました(笑)
檜山 そうやって色眼鏡で見られがちだけど、1回使ってもらうと、なんでこんないい音声なんだって驚かれます。イエデンワの場合はアンテナがいいし、スピーカーもいいものを入れているので、固定電話と音質的にも大差ないんですよね。そういう点でも、おもしろい製品になったんじゃないかなと思います。