カスタム仕様ヘッドフォンのアニソン専用モデル
Fitear「萌音」
Fitearは、須山補聴器が開発するカスタムイヤフォンブランドで、業務用のステージモニターなどとしても多くのアーティストに使われている。
「萌音」(実売価格 15万7500円)はその最新モデルで、15万円という高価なモデルでありながらも、なんと「アニソン専用」をうたったモデル。
BA型の3ウェイ/3ユニット/4ドライバーという構成で、低音を2つのドライバーで強化しながらも、中域はあえて抑えて音の抜けのよさや解像感を重視している。
自分の耳型を取って作られたハウジングは硬めの樹脂製でサイズも大きめ。だが、装着してしまうとビタっと貼り付くように耳に収まる。
自分の耳型と同じなのだから当たり前だが、この密着度の高さが高い遮音性を実現する。耳の外への張り出しは少ないので、大きさのわりに邪魔になるようなことはない。
少々気になったのはケーブルがやや硬く、タッチノイズを拾いやすいこと。付属のクリップを使い、服などに留めるようにしておくとゴソゴソしたノイズを防げる。
S/Nがとく声の再現性は絶品!
モニターライクで忠実度の高い再生音
音質評価
- 解像感 :★★★★
- ボーカル:★★★★★
- 低音 :★★★★
- 音場感 :★★★★★
試聴は当然ながら筆者用に製作していただいたものを使っているが、遮音性のよさというよりS/Nのよさに感心する。
微小な音まできめ細かく再現され、非常に情報量が多い。それでいて、高域の鋭さは適度に抑えられていて長時間聴いていても耳が疲れるようなことは少ない。
アニソンでは、女性の声の質感がよく出ており、歌い手による声色はもちろん、表情までよく伝わる。低音はかなり出ているのだが、キレ味がよく音の立ち上がりの勢いが豊かだ。
ポップスでも、男性の声を自然かつクリアに再現する。遮音性の良さと微小音の再現の良さのため、ヘッドフォンの外から音が出ているように感じるほど広がり感が豊かだ。
クラシックやジャズも、音色の再現は忠実感が高く、音楽のエネルギー感をよどむことなく描き出す。アニソン専用と言いながらも、その音はジャンルを選ばない懐の深さがある。
モニターライクな忠実度は元の楽曲のよさをつぶさに聴き取りたいという人にもおすすめできるレベル。名称にビビることなく、優れたモデルを求める人なら一聴の価値のあるモデルだ。
音質の点ではいずれも優秀
その差をつけたのは音楽そのものの表現力
今回はさすがに良品ばかりで、音質についてはいずれも自信を持っておすすめできるものばかりだった。見た目や作りのよさなどで自分にフィットするものを選んでも大きな失敗はないと思う(実際に装着してその音を確認するのをおすすめするが)。
今回もっともよかったのは、オーバーヘッド型ではデノンの「AH-D7100」。残念ながらかなり価格が高いものになってしまったが、なんと言っても、音楽の生命力を感じる生き生きとした鳴り方に魅了された。
インナーイヤーでは、ラディウスの「HP-TWF22」がよかった。こちらは価格が2万円ほどど比較的手の届く価格になると思われる。コストパフォーマンスも考慮してはいるが、充実した低音域がささえる安定感は音楽の表情を伝えるには欠かせない要素と感じる。
次点としてはFitEarの「萌音」。こちらも表現力は極めて高いのだが価格も高い。とはいえ、自分専用のカスタム仕様の恩恵はかなりのものなので、関心のある人はぜひとも、いつかは挑戦したいモデルと心にとどめておいてほしい。
ヘッドフォンはここまで
次回はポータブルヘッドフォンアンプなど
次回はiPhoneなどと組み合わせて使うことで音をさらに向上できるポータブルヘッドフォンアンプなどを紹介したい。
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