11月15日、EMCジャパンはフラッシュ製品の戦略に関する発表会を開催した。ここでは"Flash Everywhere"を旗印に、ストレージだけではなく、アプライアンスやサーバーまでさまざまなフラッシュストレージの製品を積極的に投入していくことを明らかにした。
2008年開始のフラッシュ導入が実を結ぶ
EMCは2008年にエンタープライズストレージにフラッシュを初めて導入。現在では、VMAXやVNX、アイシロンなどのストレージでフラッシュを搭載可能になっており、フラッシュやHDDを含めた自動階層化を実現している。今回の発表会では、こうしたフラッシュの適用領域の拡大や今後の製品戦略を披露するものになる。
発表会の冒頭、製品戦略を説明したEMCジャパンのマーケティング部 本部長 上原宏氏は、クラウドやビッグデータとともに、フラッシュの到来もいち早く予見していたとアピール。自動階層化の普及やノウハウの蓄積、販売体制の拡充と歩調をあわせて出荷も伸びており、2010年10PB強だった容量も、2011年は24PB強に増加。「早い時期に目を付けた技術が今になって実を結んでいる」(上原氏)と述べた。
次にEMCが目指すのは、"Flash Everywhere"を旗印にフラッシュの適用領域を拡大すること。上原氏は、従来のストレージでのフラッシュ利用に加え、サーバー側にも積極的にフラッシュ製品を投入し、さまざまな用途に適材適所で対応していくと説明した。
上原氏は、具体的な製品ジャンルを、サーバーのPCIスロットに挿入する専有型のフラッシュカード、複数サーバーで共有できるサーバーフラッシュアプライアンス、オールフラッシュストレージアレイ、そしてフラッシュとHDDを混在させた従来のハイブリッドアレイの4種類に分類した。そして、このうちコード名「PROJECT X」と呼ばれるオールフラッシュアレイ、コード名「PROJECT THUNDER」と呼ばれるサーバーフラッシュアプライアンスが現在開発中であることを明らかにした。
あわせて、HDDより3000倍高速なPCIeフラッシュ、300倍高速なフラッシュSSDなどのコストが毎年40%という勢いで下落している動向を示し、「圧倒的なパフォーマンスの向上を低コストで実現できるようになっている」(上原氏)とアピールし、需要の拡大が進むという見通しを明らかにした。
サーバー領域を侵食するVFCacheの威力
続けて、EMCジャパン テクニカルコンサルティング本部 プロダクト・ソリューション統括部 統括部長 永長純氏がサーバーフラッシュ製品の詳細を解説した。
まず永長氏はサーバーフラッシュ側のフラッシュについて、「システムをトータルで高速化し、データを保護する。(EMCの事業領域であるストレージ分野から)サーバー分野に侵食していく商品」とポジションを明確化。10月に発表されたサーバーフラッシュ製品の第一弾「VFCache」を紹介した。
VFCacheはサーバーのPCIeスロットに挿入するタイプのサーバーフラッシュ製品で、SANストレージのライトスルーキャッシュのほか、一時的なデータを保存領域としても使えるという。現在、300GBと700GBの2種類の製品が提供されており、ドライバーと共に提供されている。
永長氏は、VFCacheの導入効果として、エンタープライズアプリケーションに多いランダムリードのパフォーマンスを大幅に向上させ、レスポンスタイムを大幅に短縮できる点を挙げた。「レスポンスはミリセカンド単位からマイクロセカンド単位になる」(永長氏)とのことで、オラクルDBのOLTP処理においてレスポンスタイムを6割減、トランザクション数を210%にまで拡大できたという。さらにサーバー側でアクセスが完結するため、ストレージの負荷を減らし、全体としてのスループットを向上できるという効果もある。
特徴としてはキャッシュの重複排除機能を利用することで、使用容量や書き込み回数を減らすことができるほか、VMwareのvMotionでの相互運用が保証されている点、サーバー側のフラッシュでありながらEMCのストレージであるSymmetrix VMAXと統合されている点などが挙げられた。
質疑応答で上原氏は、価格の下落により、フラッシュの導入が俄然現実的になってきているとアピールした。また、ノウハウや技術解説などを進めてきたおかげで、販売体制も整ってきたという。そして、来年度の中旬に出荷が予定されている「PROJECT X」と「PROJECT THUNDER」の登場で、フラッシュの導入が一層進むと期待を示した。