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[ad:tech tokyo 2012] 検索マーケティングとスマホのお話

文●渡辺隆広/SEMリサーチ

2012年11月02日 14時17分更新

記事提供:SEMリサーチ

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[ad:tech tokyo 2012] 検索マーケティングとスマホのお話

2012年10月30、31日の二日間に渡って開催された ad:tech tokyo のセッション「The Future of Search;How to Integrate the Search Ecosystem into Marketing Mix」に登壇させて頂きました。今年で3回目の登壇で、こういう場はあまり緊張はしないのですが毎年悩むのは「この場で何を話そうか」ということです。当日の内容については他のメディアやブログ等でレポートがあると思いますので、ここでは私のショートプレゼンテーションの背景について簡単に。

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スマートフォン(以下、スマホ)が急速に普及するにつれ、スマホからの検索数も大幅に伸びてきています。Yahoo! JAPAN、Google 各社ともにその点は指摘していますし、日常ウェブ解析をされている方であれば認識していることでしょう。こうした環境変化に伴い、スマホサイトを準備・開設する企業も増えてきています。

けれども実際に色々なスマホサイトを生活者として利用してみたり、あるいは企業担当者とお話をしたり、あるいは、素敵なレスポンシブウェブデザインを採用しているサイト一覧みたいなリンク集を使って訪問してみますと、「何考えてこんなサイトを開設したんですか」と問い詰めたくなるような不思議なスマホサイトが多いわけです。

もともと私はサイト制作やユーザビリティーの仕事をしていたので、もちろん”デザイン的に”見ると確かに良いサイトは理解できるのですが、マーケッターの視点で見ると、なんだこれと言いたくなるものが多いのです。検索マーケティングの視点を絡めると、不思議なサイトがたくさん見受けられます。つまりスマホサイト制作者の自己満足なんですよ。

いくつか実例を挙げますと…(社名は伏せます)

  1. サイトの性格上、とても重要であるはずの機能がスマホ版では簡単に利用できない
    (例 会員用ページにアクセスする際に、デスクトップ版は1クリックでログイン画面に行けるのに、スマホ版では、(1) いずれか任意のページを開く、(2) デスクトップ版トップページに移動するリンクをクリック (3) そのトップページから、ログイン画面へのリンクをクリック、と何故か画面を3回タップする手間暇がかかるサイト。スマホ版サイトを軽量化したいのでしょうが、必要なものを削ってはいけない)

  2. デスクトップからある商品名で検索すると、検索結果上位に出てくるリンクをクリックしてアクセスできるが、スマホで同じキーワードで検索して同じリンクをクリックすると、404 Not Found が表示される
    (eコマースサイトで時折見かける事例。UA振り分けを適切に行っていない、リダイレクト設定がおかしいなど技術的な原因によるもの)

  3. 同じくあるキーワードで検索した時、デスクトップ版だと該当商品のページにアクセスできるが、スマホからだと何故かカテゴリトップページにリダイレクトされる
    (本来は商品ページを1:1でリダイレクト対応させなければいけないのに、たぶん面倒くさかったんでしょうね、どの商品詳細ページもスマホからだとトップページに一律リダイレクトさせられる)

  4. 若い女性向けのあるサービスサイト、スマホからアクセスすると「スマホ版をご覧頂けます」のリンクがある→クリックしてスマホ版トップページに移動→画面上部にある、現在実施中のキャンペーン告知バナーに興味があってクリック→デスクトップ版にリダイレクト... orz
    (中途半端なスマホ対応の事例。これは頻繁に見かけます。トップページだけスマホ対応しても何の意味もないだろ!

  5. とあるチケット予約サイト。予約が完了すると予約番号が発行され、この番号を持って窓口に行くと、チケットが手に入る。デスクトップ版サイトから予約するとこの番号が発行されるのだが、スマホ版サイトからはその番号を確認できない。そこで「スマホからデスクトップ版にアクセスして…」と考えるのだが、スマホからデスクトップ版にアクセスするためには自分でUA変更して偽装する必要があるという、一般人には無理な仕様。
    (これは私が実際にはまった実例。サービス内容的に生活者が複数のデバイスを併用して最終タスク(=チケットを手に入れる)を完遂したいはずなのに、そういうことを一切考えないスマホ版サイトの設計は謎だが、そういう仕様にも関わらずスマホからデスクトップ版サイトにアクセスすることを標準で許可しないその発想も謎)

  6. とあるオンライン宿泊サイト。一見するとスマホ対応しているが、スマホからだと宿泊施設の場所を示す地図を操作することができないので場所確認ができない
    (これまた実体験に基づく。生活者が複数のデバイスを場面に応じて使い分けながらサービスを利用することを意識した設計ができていない例)

  7. SEOを一生懸命頑張っているメディアサイトなんだけど、その割になぜかスマホ版ページとデスクトップ版ページのインデックスプロパティの統合をしようとしない、SEO的なリンク構築のロスを垂れ流しにしているサイト、あるいは逆に、スマホ版を何とかしようと一生懸命がんばっているけどアノテーションの使い方が間違っているので意味のないサイト
     (両者ともに頻繁に見かける実例。前者はSEOの意味を理解していないのか、リンクが自然に生まれるものであるという認識が欠けているのかわからないけれど甘い、後者は実装するなら正しい知識を身につけることと、検証をきちんとしてほしい)

  8. (これはスマホサイト自体の話じゃないけれど)スマホ版サイトはスマホからしかアクセスができないもの、キーワードは単語、ビッグキーワードが大多数という前提で考えているウェブ担当者
    (たぶんガラケーの発想だと思います。ガラケーの時代は、基本的にデスクトップからケータイ版サイトにアクセスすることはないし、提供サービス自体がそれを想定していないし、でもその前提で間違ってはいない。でもデスクトップとスマホはそれとは違う)

実際のところ、スマホと検索エンジンに関する相談は最近増えました。でも私は、ユーザーエクスペリエンスの観点で回答をする場面が多いのです。つまり、検索連動型広告やSEOをスマホでもやりたいという意向は理解したけれど、その前にそのスマホサイトを何とかしろよと声を大にしていいたいんです私は。上にあげたいくつかは時間の経過とともに自然と学習して改善が進むとは思いますけれど。

自分たちの顧客をよく観察して、彼らがいつ、どんな場面で、何を求めてスマホから(デスクトップから)アクセスしてきているのか理解することが最初に行うべきことでしょう。その上で、スマホ版の役割や位置づけ、提供するコンテンツやサービスを決定すべきです。クロスデバイスを意識した検索マーケティングの戦略や戦術は、それに準じて考えていけばいい。

たとえば、「Googleが検索サービスの観点からレスポンシブウェブデザイン(RWD)を推しているから、RWD を採用しよう」という人は最近増えているのですが、それは本当に正しいのでしょうか。そうではなくて、皆さんが運営しているサイトの役割や提供するソリューションの内容にあわせて、ユーザー体験を意識したスマホサイトを設計すべきではないのでしょうか。SEO云々の要件はその後で決めればいいはずです(第一、GoogleはRWDでなければSEOはできないなど一言も発言していませんし、RWD 以外でも検索エンジンフレンドリーな仕様にするための機能は提供しています)。

同セッションで登壇したKevin RyanやRhonda Hanson、Googleの小野さんも言及しました通り、あるタスクを完了するためにスマホから検索が始まることもあればデスクトップから始まることもある、スマホ(デスクトップ)で検索した事柄を、あとでデスクトップ(スマホ)から検索することもあります。異なるデバイスからアクセスしてくるということは、たとえ同じキーワードであっても異なるインテント(検索意図)を持っている可能性があり、その検索シーンや時間、場所によって求められる回答は異なるかもしれないのです(同じかもしれないし、違うかもしれない。これは皆さんが運営するサイトが顧客に何を提供するのかによって変わるでしょう)。

たとえば先の”オンライン宿泊予約サイト”を例にとれば、私はデスクトップからアクセスする時には、出張先で適当なビジネスホテルを探したくてアクセスしたわけですが、スマホからアクセスした時は、今から向かうホテルの場所を確認したくてアクセスしているのです。ちょっと気になった商品を自宅で見つけて、後日実際の店舗にいってその商品を確認して、でもちょっと知りたいことがあって(以前デスクトップでアクセスした)ページに検索使って再訪問しようとしたらカテゴリトップに飛ばされたらガッカリなのです。別の例を挙げますと、先日、海外旅行の計画をしていた私の姉は、自宅ではデスクトップで適当なツアーをあれこれ探していますが、家族がそろった場面ではスマホを使って複数の人と話をしながら検索して情報を探していました。

このように、スマホ(やタブレット)は、検索される場面やシーンを増やしているのです。そういう変化を理解した上でSEM考えてみてください。


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というのが、私のショートプレゼンテーションの背景です。まとめると、『広告主は、検索利用者がそれぞれのデバイスで、いつ、どこで、何を探しているのかをよく観察すること』、そこからユーザー体験を意識しつつ、SEMの戦略を考えていきましょう、ということを言いたかったのです。

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