Windows 8アプリ開発者・システムフレンド西村誠氏、前本知志氏インタビュー
UIの一大変革期に立ち会えるのは嬉しい――システムフレンド西村氏
2012年10月26日 11時00分更新
Windows 8アプリ開発は、作りながらひと月あれば覚えられる
―― セキュリティー面はいかがでしたか。ネットワークと密接につながるアプリケーションを作ると、情報漏洩や脆弱性の問題もアプリレベルで対処する必要がありましたが。
前本 「パッケージ化されているアプリといえども、やはりデスクトップは何でもできる世界なんですよ。ですからチェックの必要はありますね。
今回のShopBankはネットワークにつながるのでプライバシーポリシーと個人情報の扱い方を宣言する必要があり、個人開発者にとっては敷居が高い部分ではあると思います。ただ、しっかり宣言してマイクロソフトの審査を通ったアプリがストアに並びますから、ユーザーのセキュリティーは強く守られるでしょう」
―― 作る側としては大変だけれども、ルールに則えば安全なアプリができると。
西村 「できます。ここらへんは難しいところですよね。セキュリティーの敷居は上げたい反面、開発者からすると『もっと簡単に作れるようにしてください』という希望はありますし」
―― Windows Phoneよりも楽になったところはありますか。
西村 「やはりコントロールが充実している点と、Win RTという新しいAPIで非同期処理を書きやすくなったことによるコードの可読性向上ですね」
―― では、ご自身のご経験からで構わないのですが、現在Windows Phoneアプリを開発されている方がWindows 8ストアアプリの開発を始めた場合、習得期間はどの程度かかりますか?
西村 「作りながら覚えた部分もありますが、ひと月あれば大丈夫だと思います。移行しないのはもったいない。今、これに乗らない手はないと思います」
―― 西村さんはWindows Phoneアプリ以前はどのような方面を?
西村 「Flashから始めて、EC-CUBEのためにPHP言語、そして平行してコミュニティーベースでWindows Phoneを。そこからWindows 8へという流れですね。じつは、スマホの経験はあまりないのです」
―― 開発環境に関してはFlashやPHPよりも整っていると思いますが、開発のしやすさはいかがでしょう。
西村 「間違いなくプログラマー向けに特化しているのですごく使いやすいです。タイプする量も減りました。Visual Studioは本当にデベロッパーが使いやすいツールなので、もうFlashには戻れないかなと。できることも違いますしね。
例えば、このアプリには入っていませんが、カメラ画像を取得したいときに、僕らは“カメラを呼び出します”という処理を1行書いてあげればカメラが起動して、後はOSに任せられるんです」
―― 写真ちょうだいと言うだけ。
西村 「その後は“届いた画像を受け取って加工しますね”というコードの書き方になるので。利便性の高いAPIですね」
マイクロソフトの手厚い支援とコミュニティーの重要性
―― 最初のアプリ審査に落ちた後、マイクロソフトさんに色々質問したという話でしたが、アプリ開発にあたってマイクロソフトさんからの支援はあったのでしょうか。
西村 「『Application Excellence Lab(AEL)』*というマイクロソフトのラボの担当氏に直接見ていただき、ここはこう直してくださいという助言を受けることができました。ストアそのものについても教えていただいたり。
僕は広島で、開発コミュニティーという勉強会を開催しているのですが、そこでも情報支援をいただいたり、マイクロソフトのエバンジェリストが登壇する開発キャンプ(Developer Camp)を開くなど、コミュニティー支援そして技術者支援が非常に厚い会社だなと思っています」
* 「AELの提供は現在終了していますが、同様の支援プログラムを近日提供予定」とのこと。
―― そういった支援を受ける最初のきっかけは?
西村 「最初のきっかけはですね……Flashの開発者時代、Silverlightが気になって勉強会に行ったら、マイクロソフトの担当氏にお会いして。その後、東京にふらっと出かけたら、その方に『じゃあ飲みに行きましょうよ』と誘っていただきまして(笑)。これ、ほかではまずないシチュエーションですよね」
―― とりあえず飲もうぜ、みたいな(笑)。
西村 「ビジネスの関係ではなく、すごく僕ら開発者に近い形で接してくださる方が多いですね」
―― Flash関連の会社さんではそういったコミュニケーション重視の会社がなかった?
西村 「というか、そこまで開発者とのコミュニケーションにこだわる会社ってあまり聞かないですよ。
マイクロソフトさんの場合、開発者コミュニティーに技術支援するための担当まで存在しますからね。文字通り全国を飛び回っている方々がいらっしゃいます。そうなるとコミュニティーとしてもそれに応えたいというか、一緒にやっていて楽しいですよね」