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2015年より先を見据えたクラウドビジョンに必要なもの

インテルが進める「ストレージも、SDNも量産サーバーで」

2012年10月19日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ビルディングブロックの標準化は
ストレージとネットワークへ

 そして、今回の大きなテーマは、2つめにあたる「最適化されたプラットフォーム」で、いわばクラウドプラットフォームのアーキテクチャーを標準化しようという作業だ。業界標準のサーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアなどを組み合わせ、セキュアで、効率的、自動化された運用を実現しようという取り組みになる。田口氏は、「従来のコンピューティングとの最大の違いは、縦割りビルディングブロックでありながら、標準のアーキテクチャに則っていること。標準でボリュームの出るブロックを使うことが重要だ」と語る。アーキテクチャを共通化し、マルチベンダーの相互接続を支援するインターフェイスを用意することで、管理の統合化・セキュリティの自動化などが実現すると説明した。

オープンなクラウドプラットフォームの進化

 ブロックの1つであるサーバーに関しては、こうした最適化が急速に進んでおり、標準的なプラットフォーム上で、仮想化やセキュリティ強化、省電力化が一気に進展。5年で16倍以上の効率改善が実現したという。一方で、毎日新たに200以上のルートキットが生れるというセキュリティ面での課題解決、特定の負荷要件に応じたプラットフォームの開発、運用効率のさらなる追求などが必要になるという。また、インテルがまさに心血を注いできた電力管理の最適化については、インテルノードマネージャーやデータセンターマネジャーの取り組みを改めて紹介。「講演するとサーバーって電力レポートできるんだと驚いていた方も多い」(田口氏)とまだまだ認知度を伸ばす余地があると説明した。

 そして、田口氏は新たな取り組みとしては、クラウドストレージのプラットフォーム標準化を挙げた。オブジェクトストレージの技術をベースにしたクラウドサービスはすでに実用化されているが、商用の分散型オブジェクトストレージ製品は高価だ。これに対して、田口氏が紹介したのは、巨大なオブジェクトストレージ環境を低廉なコストで実現するErasure Codingというソフトウェア。Eracure Codingでは、量産サーバーベースのストレージを組み合わせ、「5000年経ってもデータが消えない」(田口氏)という99.99999999%という高い信頼性を実現した。

量産サーバーとEracure Codingによるオブジェクトストレージ

 もう1つのトピックは、今年大きなブームとなっているネットワーク仮想化の標準化。こちらも従来のネットワーク機器は、設定が固定的で、仮想マシンの移動やマルチテナントなどの要件に応えられなかった。しかし、OpenFlowなどを中心とするSDN(Software Defined Network)であれば、プログラムからネットワークを制御し、ダイナミックに変更することが可能になる。インテルはSDNに関しても、プラットフォームの標準化を推進していく予定で、まずはWind River製のLinuxスタックをベースにしたこの「Seacliff Trail(開発コード名)」と呼ばれるSDNのリファレンスプラットフォームを提供していくという。

インテルが提供するSDNのリファレンスアーキテクチャ

ODCAの要件をクラウド選びに活用

 セキュリティの分野に関しては、従来のクライアント領域からクラウド領域にまで拡張を行なう。インテルとマカフィーは共同でクラウドのセキュリティを強化し、「現行のベストクラスのエンタープライズセキュリティ以上にする」(田口氏)と宣言。今まで、クライアント分野で用いられてきた、McAfee Deep DefenderやDeepSAFE Technologyをクラウド基盤にも適用していくと説明した。さらにセキュリティのみならず、IT基盤自体が一目で分かるツールやフレームワークを拡充していくと説明した。

 インテルは第3ステップとして、検証済みのソリューションを提供するクラウドビルダーズの拡充に加え、要件にあったクラウドサービスを容易に探すための「クラウド・ファインダー」という取り組みも進める。ODCAの定義を元にユーザーに必要なクラウドの要件を決め、その要件を満たすクラウドサービスを探すというものだ。

クラウドビルダーズとクラウド・ファインダーの取り組み

 幅広くコンピューティングの分野で大きな影響力を持つインテルだけに、標準化・オープン化に強いコミットを示したインパクトは非常に大きい。サーバー分野での標準化は事実上、ベンダー間の製品の差別化を難しくしているだけに、これがストレージやネットワークの分野に派生していくのは業界のベンダー争いにも影響を与えてくるだろう。今後、ハードウェアの汎用化が進むとともに、インテルが支援を進めるさまざまな分野のオープンなソフトウェアの品質が向上してくれば、ユーザーから幅広い支持が得られる可能性を秘めている。

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