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クラウドにフルスイング!KVHの熱い取り組みとは? 第5回

語学と文化を超えたコミュニケーション力で顧客に安心を

単なる「バイリンガル」ではない!KVHの熱血サポートの裏側

2012年10月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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語学力を超えた品質の高いコミュニケーション

 こうした日本品質をうたうサービスの要となる「サービスデスク」について見ていこう。サービスデスクは顧客と直接やりとりを行なういわば「KVHの顔」で、特にテクニカルサポートをはじめとする他部署や提携先のキャリアと連携し、24時間365日体制で顧客の要望に迅速に対応する。KVH サービス・オペレーション本部 ネットワークオペレーションセンターグループ アシスタントマネージャー 呂 玥欣(ろ げつきん)氏は、「バイリンガル対応をうたっているので、日本語と英語に堪能な人材を確保しています。アウトソーシングではなく、KVH自身がサポート部隊を抱えているのもユニークです」という。

サービス・オペレーション本部 ネットワークオペレーションセンターグループ アシスタントマネージャー 呂 玥欣(ろ げつきん)

 しかし、グローバルネットワークを高い品質で顧客に提供するための、苦労も大きい。前回のテクニカルサポートの話でも出てきたが、やはり外資系企業と日本企業で求められるサポートの品質は大きく異なるという。呂氏は、「たとえば、障害が発生した際には、日本のお客様は復旧までの時間と障害原因を知りたいとおっしゃいますし、再発防止策まで求められます。しかし、海外のキャリアは復旧時間と理由くらいは教えてくれますが、具体的にどの機器でどんなことが起こっているかまでは教えてくれません。また、再発防止策を講じて、同じトラブルを起こさないようにするという意識が薄いんです」といったギャップを感じるという。

 実際、日本以外の提携先キャリアの障害報告レポートは、各項目で1行程度という内容。「これではお客様に報告できません。ですから、お客様の要求に満たす報告ができるよう、KVHとして継続的に努力を進めています」(呂氏)という。具体的には、サービスデスクからではなく、現地のKVHオフィスのエンジニアが問い合わせることで、障害の詳細な内容を得たり、本来口頭でしか出ない情報を書面のレポートでもらうよう働きかけたりする。これにより、可能な限り正確な情報を収集し、顧客に提供するわけだ。実際、台湾沖で海底ケーブルが破損した際にも、現地のキャリアとの情報共有を密に行ない、それを基に交渉を行なうことで、いち早く顧客の通信を復帰したという。

 なぜこんなことができるのか? 呂氏は、「人脈というか、KVHの担当者とキャリアの担当者との信頼関係。あるいは現地の人だからこそできるコミュニケーションで実現しているとしか言いようがありません」と語る。単なる語学力やビジネス上の契約を超えたサービスレベルを実現しており、これがKVHの大きな強みになっているわけだ。もちろん、これが一朝一夕で培われたわけではない。「KVHが国際サービスをスタートさせて、6年くらい経ちますが、われわれも苦労してきました。おそらくお客様も、提携先キャリアも理解できなかったことがいっぱいあったと思います。しかし、各自が学習し、経験することで、確実にサービスの品質は確実に上がっています」(呂氏)。

 たとえば、従来は海外キャリアが計画的なメインテナンスを行なう際、事前予告がなかったり、数時間前に来たりといった状態だった。しかし、KVHは24時間体制で利用している顧客がいることを海外キャリアに伝え、何度もミーティングしたことで、かなり早い段階で予告が来るように改善されたという。

グローバル基準のよさもお客様に伝えたい

 こうした文化の壁のほか、やはり言語の壁も超えてきた。KVHのGNOC(Global Network Operation Center)では英語が使われており、サービスデスクから問い合わせも、提携先キャリアとの折衝も英語で行なわれるのが基本。しかし、ヨーロッパ諸国や中国などでは、英語の習熟度も差があり、コミュニケーションがうまく行かない場合もあるという。「以前は、GNOCと中国のキャリアとのやりとりを英語と中国語で仲介しつつ、その内容を問い合わせてきた日本企業に日本語でフィードバックするといった例もありました」(呂氏)という。技術的な用語や業界特有の表現も入り交じるわけだから、相当に難易度の高いオペレーションといえる。

GNOCと日々連携をとってオペレーションを進める国内のKVHのNOC

 グローバル人材で日本品質のサービスを提供するというのは、前回紹介したテクニカルサポートでも、今回のサービスデスクでもKVHの一貫したテーマだ。「もちろん、外資のお客様と日本のお客様でサービスを変えることはありません。でも外資のお客様からは、連絡が速いとか、品質劣化だけで連絡するとか、期待されているレベル以上で驚かれることもあります」(呂氏)という。

 こうして日々カイゼンを続けるKVHのサポートは、今後どこへ進むのか? 呂氏は、あくまで個人的な意見と断りながら、「日本のお客様と長く接していて、再発防止を求める点など、要求する内容に納得することも多いのですが、たまに過度なリクエストだなと思うこともあります。むしろグローバル水準の方がスムースな場合があるんです。それをお客様にも理解していただき、日本とグローバルのギャップを埋める架け橋になりたいと思います」と語る。ともすれば誤解されやすい言い方なのかも知れないが、盲目的に顧客の要求を聞くことだけが、いいサポート、品質の高いサービスとは言えないという意見。日本を学び、世界を学ぶことで、顧客とともにグローバル展開にチャレンジしていくのが、KVHの方向性といえるだろう。

 こうした問題意識を現場の担当者がきちんと抱え、チャレンジを試みていく姿勢は顧客にとってもきっと心強いはずだ。

■関連サイト

(提供:KVH)

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