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スマートフォンアプリで収集したデータから得られたものとは?

ビッグデータに欠けた「ストーリー」を補うEMCのプロジェクト

2012年10月04日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月2日、EMCは全世界で進めている「The Human Face of Big Data」プロジェクトに関するイベントをシンガポールにおいて行なった。イベントでは、スマートフォン経由で幅広く収集した大容量データを解析する壮大なプロジェクトの概要が披露された。

イベント会場となったシンガポールのRed Dot Design Museum

現実的な選択肢になってきたビッグデータ

 The Human Face of Big Dataは、EMCがプライマリスポンサーとして進めているビッグデータプロジェクトで、カメラマンであり、クラウド関連のプロジェクトを手がけるリック・スモーラン氏がプロデュースを担当する。プロジェクトはビッグデータの社会的なインパクトを把握すべく、スマートフォンのアプリケーションからデータ収集。これらを分析・ビジュアル化し、どのような知見を得られるかを調べる社会実験的な内容になる。今回のイベントは、プロジェクトの解説や途中経過、ビッグデータの活用について説明するもので、シンガポールのほか、ニューヨークとロンドンでも開催されている。

 イベントの冒頭、挨拶に立ったEMC Office of The Chairmanのスティーブ・レオナルド氏は、重要性を増すビッグデータのプロジェクトの実例を挙げた。たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんは、さまざまな写真やビデオなどに映されるため、膨大なデータが生成される。そしてそれらはSNSでどんどん波及していく。こうして生成するデータは、国立図書館のデータの70倍に達するという。

赤ちゃんから膨大なデータが生成されると説明する米EMC Office of The Chairmanのスティーブ・レオナルド氏

 レオナルド氏は、テラバイト級のデータを容易に集められるようになった結果、海洋動物の生態観察やマラリアの感染研究、家電の電力消費などさまざまな分野でビッグデータが有効活用されていると説明した。一方で、ビッグデータで必ず懸念点として挙がる情報管理についても言及し、「ビッグデータは怖いものではない」と指摘。セキュリティと利便性を両立させる必要があると指摘した。

ビッグデータに欠けているストーリー

 また、EMC Greenplum部門のマーケティングを担当するマイケル・ハワード氏は、今回のプロジェクトの趣旨を「ビッグデータのストーリーを作ること」と説明する。この背景には、多くのユーザーがビッグデータの定義に迷っていることが挙げられるという。「みんなビッグデータが重要なことはわかっている。地球に変革をもたらすことと思っている。しかし、定義に迷っていた。インターネット黎明期と同じことが起こっているのだ」と述べる。

米EMC Vice President,Marketing,Greenplum A Division of Greenplum マイケル・ハワード氏

 Volume、Variety、Velocityなどの3つの「V」、Webログの解析により高い精度を実現するAmazonのレコメンデーションエンジンの事例など、いろいろな形で説明されるビッグデータは、NISTのクラウド定義のようなものがないのが現状。こうした「不明瞭さ」を払拭するために作られるのが、事例や用途、アプリケーションなどの意味合いを含んだ「ストーリー」といえるだろう。

 同氏はこうしたストーリーの例として、飲料水やワクチンを得られなかったり、ゴミ収集などが受けられなかったアジアのコミュニティが、現地からさまざまなデータを収集し、地図などにマッピングすることで、きちんと公共サービスを受け入れられるようになった事例や、人口12億人のインドが36億ドルをかけて進めているID登録プロジェクトにより、銀行からの融資も容易になったといった事例を紹介。今回、EMCがスポンサーとして進めているThe Human Face of Big Dataも、こうしたビッグデータのストーリーを創出するアプリケーションを用意しているという。

 具体的には「世界を計量する」という大きなテーマの元、スマートフォンのアプリから通信動向などスマートフォンが自動生成するパッシブデータを収集し、日常生活をデータ化できる。また、家族観、関心事、信条、性的関心、幸運などの考え方などに関する質問の解答を集め、自分の答えと世界中のユーザーの答えを比較することも可能だ。さらに自身の写真や移動経路などのアクティビティを収集することで、写真の一致度や行動特性が近いドッペンゲルガー(分身)を探したり、生きているときに実現したい夢や重要なイベントの前に験担ぎを比較することができる。国勢調査的な意味合いもあるが、幅広くグローバルで展開されるというのが興味深いところだ。

世界を計量するというプロジェクトの骨子データ上でのドッペルゲンガー(分身)を発見できる

 こうしたThe Human Face of Big Dataプロジェクトの目的は、「なにか結論をもたらすものではない。投資対効果ではない。データが何をもたらすのかを見ていきたい」(ハワード氏)とのことで、数値目標より、まさにストーリーが重視されるという。また、年末にはエッセイや写真などを含んだ大型書籍も作られ、世界で影響力のある1万人に配布される予定となっている。

 イベントの後半では、アジア地域でのビッグデータの活用事例とともに、EMCのビッグデータ戦略、デモンストレーションも披露された。詳細は別途レポートする。

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