小売店が気になるところは
顧客の出先の足とギフトカードをいかに取り込むか?
Passbookを導入する効果は、様々な側面に現れます。
店舗からすると、顧客との連絡手段をより深く持てるようになります。会員カードを発行しても、これまで住所と電話番号、かろうじてメールアドレス程度の情報しかありませんでした。何か顧客にお知らせするにも、郵送かメール、そしてご紹介した購買時のレシートくらい。よっぽどの魅力がなければ、家でこれらの情報を受け取っても、わざわざ出かけてくれるとは思えません。車で移動しなければならないので面倒ですし。
しかしこれがPassbookに対応すると、顧客はアプリを導入するため、常に会員カードはポケットにある状態になります。クーポンはプッシュ通知で直接届けられ、気に入られれば、出先からすぐ店に来てもらえるようになります。場所に応じたクーポンは、「ついでに立ち寄る」新たなアクションを作り出すきっかけにもなりそうです。
Starbucksアプリのように、友達にギフトを贈ったり、プリペイドカードのチャージをすることによる、会員のまわりの人へのリーチもひろがっています。ちょうどFacebookも「Gifts」という新しい機能を米国で提供し始めましたが、シェアの時代、広告よりも友人からのちょっとした気づかいやおすすめの方が効果的なのかもしれません。
最後に見ていただきたいのが、近所のCVSのギフトカードコーナー。そもそも、こんなにたくさんのチェーン店があるのか、ということに驚かされますが、とにかく大量のギフトカードが店舗に陳列されているのです。しかも、写真のラックが裏側にもう1つあるのだから、きりがありません。
さらに、日本にも進出している倉庫型店舗のコストコでは、これらのギフトカードを25%程度割り引いて販売していたりします。
もちろんAppleもNFC技術には関心を寄せていますし、今すぐではない近い将来、iPhoneにNFCが入るかも知れません。しかし、この山のように並べられたギフトカードのモバイル化だけ考えても、NFCではなくバーコードのPassbookでやるべき仕事は多いと思わされるのです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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