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クラウドにフルスイング!KVHの熱い取り組みとは?第4回

日本品質をグローバル人材で実現するワンフロアの熱気

KVHが少数精鋭の効率オペレーションを実現できる秘密

2012年10月01日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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震災や数々の事件の影響で、データセンターやクラウド運用体制については顧客から厳しい目が注がれている。今回、企業向けの通信やデータセンターの幅広いサービスを手がけるKVHに、運用体制やその苦労などを聞くことができた。

ITILv3に基づいた運用が社内に根付く

 ユーザーのシステムや重要なデータを預かるデータセンターやクラウドだが、その運用体制は意外とブラックボックスだ。セキュリティの観点や競合に対して内部を明かしてしまうリスクから、情報公開はなかなか進まない。Webサイトには「熟練のエンジニアが100名体制で運用・監視にあたっています」などと説明されることも多いが、ユーザーが知りたいのはおそらくそんなことではないだろう。信頼性や可用性を確保する仕組み、障害時の運用体制、障害時の備えや訓練の有無、あるいはオペレーションがどこまで自動化されているのか、といったより詳細で客観的な情報だ。国内に4つのデータセンターを手がけるKVHは、どのような運用体制になっているのだろうか?

 KVHは、金融サービスで高い実績を誇る低遅延ネットワークのほか、コロケーションやマネージドサービス、セキュリティサービスなどの包括的なデータセンターソリューション、さらにはオンデマンドで利用できるKVH IaaSやプライベートクラウドなどのクラウドサービスなどを展開している。こうしたサービスを運用するべく、同社では通信事業者としてのネットワーク系とマネージドサービス・クラウドなどのITサービス系の2つのオペレーション部門が組織されている。両者には顧客からのコンタクトを受けるサービスデスク、顧客からのリクエストを解決するテクニカルサポート、ティア2と呼ばれるサーバーやネットワーク部隊、そしてティア3と呼ばれる開発グループなどに分けられている。

ITILの実践を前提としたKVHの運用管理体制

 今回お話を聞いたテクニカルサポートチームは、マネージドサービス・クラウドの技術的な問い合わせや障害対応、監視チームとの連携などを行なっている。KVH テクニカル・オペレーションII部 テクニカルサポートグループ シニアエンジニアのベンジャミン オネカリト オブラ氏は、「サービスデスクからの問い合わせを受け、技術的な対応を行なっています。サービスデスクのバックアップという位置づけも持つほか、監視センター、開発、サーバーやネットワークチームとも連携します」というオペレーションのハブとしての役割を果たしている。電話が来たときだけ、テクニカルサポートのエンジニアが対応するといった体制ではなく、きちんと24時間365日体制でサポートを受け付けている点も強調したいポイントだという。

KVH テクニカル・オペレーションII部 テクニカルサポートグループ シニアエンジニア ベンジャミン オネカリト オブラ氏

 こうした組織体制は、ITサービスマネジメントのベストプラクティス(お手本)として知られる「ITIL(IT Infrastructure Library)v3」を実践すべく構築されており、社員自体にもITILの思想や概念がきちんと根付いているというのが特筆すべき点だ。オペレーション部門だけではなく、バックオフィスまでITILの導入がきちんと進んでおり、資格取得なども奨励されているとのこと。

 KVH テクニカル・オペレーションII部 テクニカルサポートグループ マネージャーの山下仁崇氏は、「ITILが社内の共通言語として利用されているので、これがないと従業員同士のコミュニケーションがスムースにいきません。また、リリースマネジメントやキャパシティマネジメントなど、自分たちになにが欠けているか、改善を施していく指針にもなっています」と語る。外資系の顧客においては、こうしたITILv3準拠は大きなアピール材料になっているという。

KVH テクニカル・オペレーションII部 テクニカルサポートグループ マネージャー 山下仁崇氏

 運用体制自体のバックアップにも取り組んでおり、「3月11日の東日本大震災の際も、電力問題や交通機関に支障のあった東京から大阪へ連絡がとりやすい大阪に移動し、そこから管理や監視を行ないました」(オブラ氏)とすでに実績を持っている。長年、金融機関をメインに手がけてきた経緯から、サービス可用性や信頼性に関しては、特に意識が高いという。

少数精鋭の効率的なオペレーションを実現

 同社の運用体制は、決して大規模ではない。オペレーターの人数を声高にアピールする事業者と異なり、少ない人数で効率的に管理できているからだ。山下氏は、「基本的にオペレーション部隊はワンフロアに集まっています。ですから、障害が起こった際には、すぐに集合し、対策を協議できます」とその小回りのよさをアピールする。他の外資系のキャリアのように、障害対応がいったんオペレーションを行なっている本国までエスカレーションされ、タイムラグが発生するといった事態は発生しない。

 従来のようなヘビーな運用体制が要らない理由の1つとして、「KVH IaaS」のようなクラウドサービスにおいて、とことん自動化を推進している点がある。KVH ITサービス営業部 マネージャーの君島太氏は、「KVH IaaSには『Cloud Galaxy』というGUIツールがあり、仮想サーバーの構築やOSの選定や設定などの作業が行なえます」と説明する。また、専用設備を用いるプライベートクラウドにおいても、設定やカスタマイズを容易に行なえるクラウドコントローラーを提供しているという。

KVH ITサービス営業部 マネージャー 君島太氏

 ユーザー側のセルフサービス化を推進したことで、運用部隊は障害が起こったHDDの交換やソフトウェアの不具合対応などに注力できる。オブラ氏は、「サーバーだけではなく、ロードバランサー、ファイアウォール、さらにVLANにいたる各種設定について、ユーザー側で実施することができます。つまり、可能な限り、オペレーションは自動化を進めているのです」と語っており、インフラ構築に関してはほぼ人手を介さないオペレーションになっているという。また、人的なオペレーションが発生する場合には、人為的なミスを避けるため、「手順書を細かく作成し、2人ペアでチェックします。さらに上司にも承認をもらい、お客様に関係する作業であれば、日程や内容をお客様と共有します」(山下氏)という。

 こうしたマネージドサービスの需要は年々高まっており、君島氏は、「最近はサーバーだけではなく、ネットワーク、ロードバランサー、ファイアウォールまでワンセットで請け負ってほしいというニーズが確実に増えています」と話す。現在の課題は、顧客の専有機材を用いるプライベートクラウドにおいて、顧客のカスタマイズ要求が大きいこと。今後はなるべく「標準化」を進め、よりITサービスの中に組み込んでいく予定だという。

外資系ながら日本基準のサービスレベル

 同業他社に比べ、外資系企業の顧客が多いこともあり、監視やサポートの体制はグローバルを前提に展開されている。たとえば、KVHサービスの監視業務の一部は国内ではなく、インドのバンガロールにて行ない、国内の運用チームと連携して、障害時には迅速に復旧作業に入る仕組みだ。「国内のテクニカルサポートはその監視動向を日々追い続けています。最近ではお客様が実際の障害にいたる前に、プロアクティブにアラートをあげるようなオペレーションも進めています」(山下氏)という。オブラ氏のような外国人のエンジニアも多く、サポートなども多言語対応が可能だ。

 その一方、外資系企業でありながら、日本に本社を持つというユニークな立ち位置が、他の外資系キャリアに比べて高いサービス品質をもたらしている。もともと金融機関向けのネットワークサービスで実績を積んできた経緯もあり、サービス品質に関しては定評がある。これに加え、日本の多くの顧客に鍛えられている。オブラ氏は、「やはり日本企業の求める品質は高いんです。海外の企業からするとレベルが高いサービスなんですが、日本企業からすると当たり前と評価されることもあります」と語る。山下氏も「私たちは外資系ですが、日本人も多いですし、オブラをはじめ日本をわかっている外国人も数多く働いています」(山下氏)と説明する。まさに外資系企業と日本企業のそれぞれのメリットがサービスに活かされている。唯一無比とも呼べるKVHの差別化ポイントといえる。

 次回は、KVHが誇るグローバルでのサポート体制や多国語対応の実態をレポートしていく。

■関連サイト

(提供:KVH)

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