筆者は現在、米国カリフォルニア州北部、サンフランシスコから北へ来るまで25分行ったところにある街、バークレーに住んでいる。カリフォルニア大学の本校であるバークレー校がある街で、米国の学生運動やヒッピー文化、カリフォルニア料理などが発祥した街だ。またAppleのお膝元の州ということもあり、街のカフェでは老若男女がMacやiPadでWi-Fiを拾ってメールを書いたり、仕事をしたりする風景が当たり前だ。
9月12日にiPhone 5が発表されると、テクノロジー系のメディアだけでなく、地元のテレビ局のニュースでもその内容や詳細を伝えていた。サンフランシスコ、シリコンバレー、バークレーなどを含む「ベイエリア」では、Appleに限らずGoogleやFacebookといったテクノロジー企業の話題は、「ローカルニュース」として扱われ、もはや生活情報の一部になっている点が面白い。
サンフランシスコのApple Store前はテントで住み込みの行列も
日本から遅れること約17時間後。こちらの時間9月21日午前8時に、Apple StoreでiPhone 5が発売された。その風景は日本のiPhone発売の様子と同じだが、お客さんの盛り上がりというか、テンションはより高い。そしてiPhone購入の行列もあったが、サンフランシスコ市内の中心部にあるApple Storeの目の前は長い間工事が続いており、銀座の店舗のような開放感はなかった。
しかし、いち早くiPhoneを手に入れようと、店の前にはテントを張ってキャンプ状態で待つ人たちの姿があったり、場所取りをいくらかで譲る、という人が現れたり、日本以上に自由にiPhone行列を楽しんでいたようだ。Appleの共同設立者で、毎回iPhoneをいち早く手に入れる姿が報じられているスティーブ・ウォズニアク氏は今年はカリフォルニアにはおらず、世界でも一番早く発売されるオーストラリアにいたようだ。
配送を待ちながらスペースシャトル見物
米国で発売されるiPhoneはVerizon・SprintのCDMA系と、AT&TのGSM系、さらにSIMロックフリーモデルも用意される。Apple Storeで並んでも良いが、当日手に入れられるかどうか分からないことと、並ぶのが面倒なので、オンラインでオーダーの方が良い。それでも、「Apple Storeの旗艦店であるニューヨーク5番街やボストン、メンフィスの行列は、iPhone 4Sよりも83%長かった」というPiper Jaffrayの調査もあるから驚きだ。
今回、行列に並ばないにしても、オンラインのオーダーも熾烈な競争だった。
予約開始の米国西海岸時間9月14日午前0時(ニューヨークなど東海岸の場合は午前3時……)をまわってから、Apple Store Onlineは約1時間ほど、その他のキャリアのオンライン予約も3時間ほどで初回入荷分の予約数に達し、3~4週間待ちというステータスに変わってしまった。Appleによると、初めの24時間で200万台の予約を受け、iPhone 4Sの倍のペースだったとしている。筆者もVerizon Wirelessのオンラインストアで予約して、配送会社FedExの配送状況をちょくちょくチェックしていたが、9月21日午後3時までに配送される予定、というステータスになっていた。
その日は、配送されてくるのを待つにはぴったりの金曜日だった。
ベイエリア一帯を、退役したスペースシャトル「エンデバー」が、NASAのジャンボジェット機に取り付けられて飛び回るイベントが予定されていたからだ。アパートの隣人たちと、朝10時頃に配送トラックを待ちながら、空ではジャンボジェット機を眺めて興奮する、という貴重な体験をすることになる。スペースシャトルが飛び去るやいなや、配送のトラックが到着しはじめ、iPhone 5開封の興奮へと引き継がれるのであった。
なお筆者のiPhone 5は予定通り、午後3時頃届いた。配送の人に話を聞くと、筆者のエリアだけでも80台以上のiPhone 5を届けていて、いつもよりも訪ねる場所が多いため骨が折れるとのこと。FedExの人は「まあ、僕はGALAXY S IIIを使ってるけどね」とニコニコ。