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すべて見せます! 「iPhone 5」&「iOS 6」総力特集 第17回

“5年目”を次のステージに導く「iPhone 5」—誰もが予想できなかった魅力を備えて堂々デビュー

2012年09月19日 10時00分更新

文● 林信行、●撮影:パシャ/小野田哲也

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ハード、OS、アプリケーション:
三位一体の進化が、新しいステージを切り開く

 以前、アップル社内では1mm違いの案が出る度に製品のモックアップを作って、その手触りを試すと聞いたことがある(アップルでは、他メーカーと比べて5〜10倍ほど多く検証用モックアップを作るといわれる)。これこそが、あのiPhone 5の驚くほど手にフィットする体感を生み出している。

 ほかのスマートフォンは、同じOSを搭載した他社の競合製品と戦わなければならないため、ハード的にもソフト的にも、何かを付け足して差別化を図らなければならないが、アップルの場合は、そもそもそれがiPhoneというだけで、他のスマートフォンと差別化できている。

 アップル自身が特定の用途用の機能を追加するまでもなく、App Storeの65万本のアプリが——知育教育の機能から、電子書籍、カラオケ、ゴルフのアシスタント、高度なセキュリティー機能に対応したビジネス系通信機能、通訳機能まで——思い付くかぎりの機能をほとんど何でも提供している。App Storeの検索機能で適当な語を入れて検索をしてみると、これはドラえもんのポケットじゃないかと思うほどいろいろな道具が飛び出てくる。

 こうしたアプリ開発者との良好な関係があるおかげで、iPhoneという製品は、本体に余計な機能を加えたり、特定の誰か向けに些末な工夫をすることなく、ただ素の性能をよくするだけで、さらに人気が出る商品となっているのだ。

 そういう意味では、iPhone 5の素性は非常によくなってきている。

 まず本体の持ち心地だが、これまでのiPhone 4や4Sを使ってきた人なら、重量112gと両手で持ち比べずとも分かるほど軽くなっている。iPhone 5ならではの7.6mmという薄さも、しっかりとしたホールド感を与えながらも、引き締まった感じがして持ち心地がいい。だが、持ち心地がいいといえば、何といっても背面のアルミの梨地仕上げだろう。これが、まるで薄くベビーパウダーでも塗ってあるかのようなサラサラとした感触なのだ。

ガラスとアルミだけで作られたiPhone 5。本体背面は中央がサラサラ加工がされたアルミ、上下が電波を通すガラスという2トーン構成になっている

 本体を軽く感じさせる要因は、ほかにもたくさんあるが、なんといっても大きいのは、CPUが新たに「A6」となり高速になったことだろう。

 「ソフトの動作が重い」という言葉あるように、人間は動きが鈍いものを見ると、それだけで(物理的な)重さを感じるところがある。新しいiPhoneが搭載するA6は、ベンチマークソフトで試しても、iPhone 4Sと比べて2.5倍、新しいiPadと比べても2倍以上高速になっている。それに加えてグラフィックスパフォーマンスも大幅に高速化している。

「Geekbench」によるベンチマーク結果。iPhone 4Sで「637」、新しいiPadで「759」というスコアのところ、iPhone 5は堂々と2倍以上の「1600」というスコアを叩き出した

 パフォーマンスと聞くと、どうもCPUパワーと描画機能の2点ばかりに目がいってしまいがちだが、実はそれに加えて通信速度も大幅に向上している。筆者が検証する機会を得たiPhone 5はソフトバンク仕様のもので、たまたま筆者の家の周辺は、多少電波が弱い(アンテナ3本程度)もののLTEがすでに整備されていた。そこで通信速度を比較してみたところ、電波状況が良い(アンテナ5本)iPhone 4Sの3G通信と比べて9倍近いパフォーマンスを発揮した。

左がiPhone 5(LTE)で、右がiPhone 4S(3G回線)。(電波は弱いが)LTEがつながる自宅でその速度を検証したところ、3G接続のiPhone 4Sと比べて9倍近いパフォーマンスが出た

 このA6とグラフィックスの処理能力強化、さらに通信速度の向上が合わさったことで、処理の重たいアプリが快適に動くのはもちろん、個人的にはあまりパフォーマンスと関係のなさそうな、App Storeでアプリを物色するといったちょっとした作業まで、旧機種のiPod機能でカバーフローを使って曲選びをするのと同じくらいの動作の軽快さ、心地よさ、ヌルヌル感で操作ができてしまうのに驚かされた。

 App Storeは、iOS 6になってデザインが大幅に変わったので、もしかしたら、ハード以上にソフトの変更の影響が大きいかもしれないが、そうしたところも含めてアップル流の改善なのだ。ほかの多くのメーカーは、ハードだけで利用体験を向上させなければならないが、アップルは1社でハード、OS、アプリのすべてを作っているおかげで、より総合的アプローチでユーザーの利用体験を高められる。

 iPhone 5は、iOS 6以降でしか動かない、まさに同OSのために作られたiPhoneだ。その意味では、新しいApp StoreもiOS 6以降/iPhone 5で心地よく使えることをターゲットにして開発してきたはず、というわけだ。

一新されたApp Store。グラフィックは増えているのに、快適に操作できる。CPU性能、通信速度、そしてアプリのデザインという、少なくとも3方向からの努力を重ねているからだろう

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