9月12日に「iPhone 5」が発表され、モバイル業界はiPhone一色である。一方、そのiPhone 5発表の翌日に上海でAcerが計画していた最新のスマートフォン発表イベントが突然キャンセルとなった。どうやらAndroidを開発するGoogleが動いた結果のようだ。年内にはスマートフォンで世界最大の市場になると予想される中国で何が起こっているのか?
Androidのアプリも動く中国製モバイルOS搭載機の
発表会が突如中止される
Acerが9月13日に発表する予定にしていたスマートフォンは「Cloud Mobile A800」という機種だ。最大の目玉(というよりも、唯一わかっていること)は、このスマートフォンが「Aliyun OS」というOSを搭載するという点だ。
中国市場に詳しい方ならご存知だろう。Aliyun OSは中国の大手ECサイトであるAlibaba Groupが開発し、2011年にローンチしたスマートフォン向けのWebベースOSだ。端末は、発表した週の週末には店頭に並ぶ予定だったようだ。
Cloud Mobile A800の発表イベント中止は突然のことだったようで、上海のイベント会場に出向いたジャーナリストが右往左往した様子も伝えられている。気になるキャンセルの理由について、Acer側は翌日にDow Jonesに対してGoogleが懸念を表明したためと説明した。
Dow Jonesはまた、Alibaba側のコメントとして、「もし製品がAliyun OSベースであれば、Androidが関連する協業および他の技術ライセンスについても打ち切るとGoogleがパートナー(=Acer)に伝えた」とも報じている。Acerは引き続きGoogleと話し合いを持ち、製品のローンチにこぎ着けたい意向という。
Googleのサービスとの連携が
逆に中国で弱みとなるAndroid
Googleはその後、The Vergeなど一部メディアに対し、「Androidの互換性を維持する必要がある」と理由を説明している。引用されている声明文では、「Aliyunのような、Androidと互換性のないバージョンは、(Android)エコシステムを弱める」と主張、Open Handset Alliance(OHA)メンバー企業はすべて、1つのAndroidプラットフォームの構築にコミットしていると続けている(OHAはAndroid開発と推進のためのコンソーシアムで、AcerもOHAに加入している)。
バージョンが異なる、あるいはUIなどカスタマイズにより、同じAndroid向けアプリケーションの中で動くものと動かないものがある、エコシステムが分裂しているなどの"Androidの分断化"は、新しい問題ではない。たとえばAmazonはAndroidをベースとした「Kindle Fire」タブレットに加え、アプリストア「Amazon Appstore」も展開している。
Amazonについては、The Vergeが指摘しているようにOHAに加入していないという違いがあるが、Googleの今回の阻止にはもう1つの背景がある。――巨大市場中国のスマホ覇権を巡ってのAlibabaとGoogleとの戦いだ。
アメリカなど先進国より少し遅れて立ち上がった中国のスマートフォン市場では現在、Androidが席巻している。だがAliyun OS搭載機は2011年7月のローンチから1年未満で100万台を売り上げており、地元企業であるAlibabaは、チャンスは大いにあるとみているようだ。
Alibabaの最高戦略責任者、Zeng Ming氏は9月初め、Wall Street Journalのインタビューで、Google検索、Google MapsなどのGoogleサービスが中国では提供されていないなど、Androidは課題を抱えているとし、「中国におけるAndroidと同じぐらい強い存在になりたい」と述べ、対抗心をむき出しにした。現在、Aliyun OSのメーカーは2社(「K-Touch」ブランドのBeijing Tianyu Communication EquipmentとHaier)だが、年内に5社に拡大する計画だという(Acerはその1社ということになる)。
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