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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第3回

色をデザインする~黒が隠す感情、視覚的トリック

2012年10月29日 09時00分更新

文● 前田知洋

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剣術や合気道は黒か紺の袴で足の動きを隠す

 筆者は趣味で合気道と少々と居合道をほんの僅かだけ嗜んでいる。高段者の中には、高齢にも関わらず、とても素早く動いて技をくりだす人が多い。鍛錬といってしまえば、それまでだけれど、稽古を続けるうちに足運びに秘密があることがわかってきた。

袴で足捌きを隠す合気道

 ところが、その武道の達人たちの足の動きはとても見えにくい。その理由の1つに黒か紺の袴にある。心優しい達人たちは稽古のときに袴の裾を少し上げ、足の動きを門人たちによく見えるようにしてくれるが、ひとたび袴の裾を下ろすと、その動きはサッパリわからなくなってしまう。


プレゼンテーションにおける悟られないことの意味

スティーブ・ジョブズ

 米国Apple社のスティーブ・ジョブズは黒のタートルネックとジーンズを愛用し、キーノートでのプレゼンテーションを通じて世界中で最も有名なトレードマークになった。経験のある人ならご存知だと思うが、観衆を引きつけるプレゼンテーションは難しい。

 もちろん、「ジョブズのプレゼンテーションの成功の秘密が黒のタールネックにあった」なんて断言するつもりはない。ただ、プレゼンターが進行する「起承転結」を観客に悟られてしまえば、見ている人のテンションは多いにさがってしまう。

 そんな意味では、(衣装から特別な印象を与えにくい)ジョブズの黒いタートルネックは効果的だったことは確かだと思う。

 特に「One more thing..(もう1つ、発表することがあるんだ)」で始まるフレーズ、そしてその後に発表されていた新製品は、キーノートの会場にいた人々だけでなく、世界中を驚かせた。

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