新ブランドで2強に挑むブラザー
ブラザーは、2011年年末商戦向けにおいて、先行する2社を強く意識した、「プリンターに、第3の選択肢」をキーワードに、積極的なプロモーションを展開。BCNの調査によると、2011年12月の市場シェアは前年の3.9%から、7,7%へと倍増以上へと拡大した。
目標を10%に設定していたことに比べるとそれを下回っていること、キヤノンがタイの洪水被害の影響で品不足に陥っていたという市場環境を考慮する必要もあるが、それでもキヤノン、エプソンの2強が圧倒的なシェアを獲得している国内市場において、年末商戦でこれだけのシェアを獲得したのは過去に例がなかった。その点では評価できるものだといえよう。
今年の年末商戦でも、引き続き、「第3の選択肢」を掲げながら、PRIVIOシリーズにより、前年度の50万台を上回る年間65万台の出荷を計画。「年間15%の市場シェアを目指す」(ブラザー販売マーケティング推進部・大澤敏明部長)と意気込む。
新ブランドへの変更は、同社のプリンター製品に対する強い意志が感じられる。
「ブラザーのプリンターの特徴は、FAX機能や子機が付属するなど、通信機能にあり、その点が評価されてきた。量販店でも主にFAX売り場に置かれ、FAXからの買い換え需要が中心となっていた。しかし、それが需要を限定的なものとしてきた。昨年度からは、FAX機能付きプリンターという領域から、FAX機能を持たないプリンター単体の市場にも本格参入していたが、新たなブランドにより、プリンターメーカーとしての姿勢をより明確にしていくことになる」(大澤部長)
つまり、今回のブランド変更は、キヤノン、エプソンの2強が席巻する国内プリンター市場において、真っ向から戦いを挑むといった意志が、昨年以上に強く感じられるのだ。
個人向けモデルでは、カラーバリエーションとして白を追加。「きせかえデコ」によって、天板内のデコレーションシートを取り替えることによって、デザインをカスタマイズできるといった仕掛けも用意した。
「MYMIOで評価が高かった、従来からの高速プリントやコストパフォーマンスの高さを維持しながら、よりインテリア性を重視した今年の個人向け新製品の特徴」(ブラザー販売・三島勉取締役)
また企業向けモデルでは、A4用紙を横向きに送る給紙方式を採用。本体の奥行きをクラス最小となる290mmを実現しながらA3出力を可能にした。
インクジェットプリンターでは、横置き印刷にすると、紙がカールしてきれいに印刷ができないといった課題があり、実現不可能とされていたが、ブラザーでは、紙に小さな縦波をつけることで、この問題を解決したという自信作だ。
今年のキーワードは、「『ふつう』が、変わるぞ」。
新ブランドでの挑戦が始まった。
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