AVX導入に合わせて帯域幅を256bit化
そのからくりとは?
第2の特徴はAVX命令と256bit化である。インテルはSandy Bridgeの世代で、256bit幅のSIMD命令であるAVX命令を実装した。なお「AVX命令とは何ぞや」については3年前の記事を参照していただきたい。
AVX命令は256bit幅となるため、データを1サイクルあたり256bit読み込めないと、せっかくの256bit幅が生かせなくなる。AVXにあわせて旧来のSSEレジスタは、すべて256bit幅に拡張されている。だが実行ユニットそのものまで256bit幅のものを搭載するのは、さすがに難しいと判断したのであろう。実行ユニットそのものは128bitのままながら、各ポートごとにユニットを追加して、これらをALU/FPU/SSE/AVXで使いまわすという方法をとった。
どうやって実行ユニットを使いまわしたのか? まずALUとSSE Int、SSE FPUに関しては、データパス(データ転送を行なうバス)をそれぞれ別に用意して処理する。一方AVXに関しては、SIMD INT用とSIMD FP用の両方のデータパスを使うことで256bit分の処理を可能にした。
データパスの256bit化の次は、入出力の256bit化だ。面白いのが、CPUコアと1次データキャッシュ間は256bit化されているにもかかわらず、1次命令キャッシュとCPUコアの間は、128bit幅のままとなっている点だ。「IF 1」~「DEC 3」までのx86命令の解釈部は、引き続き16byte/サイクル(=128bit幅)で、最大4命令/サイクルのx86命令をデコードする「Merom」(Core 2)の構成から変っていない。
AVX命令になっても、命令長そのものが256bit幅になるわけではない。しかもAVXに関しては、Sandy Bridgeの世代では1命令/サイクルでしか処理できないから、128bit幅あれば十分だ。ALU/FPU/SSEは128bit幅で十分であることがMerom~Nehalem世代で確認されているから、結果としてロードストアユニットと1次データキャッシュの間のみが、256bit化されるに止まったわけだ。
ロードストアユニットは、使用するポートは引き続きPort 2~4のままながら、LoadとStore Addressを多重化することにより、「16byte/サイクル×2のリード」と「16byte/サイクルのライト」を同時に行なえるようになっている。P6世代から長らく変わらなかった部分であるが、ついに256bit対応ができるようになったというわけだ。
AVX命令の場合は、1つのレジスタへのロードを2つのロードユニットを使って行なうし、それ以外の場合は2つのロードを同時に行なえる。このあたりはAVX以外の命令の性能改善につながる改良といえよう。
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