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山谷剛史の「アジアIT小話」 第29回

日本製品不買!でも使われないほど中華デジカメは駄目なの?

2012年09月04日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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カシオの「EXILIM」と画質に大きな差はない?

カシオの「EX-H20G」。約2年前に発売された機種だが、スペック的には現行機種から大きく進化しているわけではない

カシオの「EX-H20G」。約2年前に発売された機種だが、スペック的には現行機種から大きく進化しているわけではない

 今回愛国者のH5を出先に持っていって、普段筆者がたずえているカシオの旅行デジカメ「EXILIM EX-H20G」と撮り比べてみた(いずれも設定は画像サイズを3Mにし、そのほかはデフォルトで撮影)。

 EX-H20Gは約2年前に発売されたデジカメで、当時の実売価格は4万円前後(現在は1万円前後)という高機能モデルだ。スペックを簡単に紹介すると、撮像素子は有効1410万画素の1/2.3型CCDセンサーで、光学10倍ズームレンズと3型液晶モニターを搭載。1回の充電で約600枚の撮影が可能というロングバッテリーと、GPSとモーションセンサーによる高精度な測位ができるという点からカシオは本機を“旅行デジカメ”と銘打っている。ちなみに、EXILIMは中国においては結構人気があるデジカメブランドである。

EX-H20Gの撮影サンプル

 (日本の高機能デジカメとは比べられないが、と前置きした上で)両方使用してみるとEX-H20Gのモニターでは屋外にいても、はっきり液晶モニターで写真が確認できる上に鮮やかな感じになる。出先ではEX-H20Gのほうが綺麗に撮れるように感じた。

H5の撮影サンプル

 だが、愛国者のH5もなかなか。撮影画像をPCで確認すると、EX-H20Gと対照的に地味な発色ながら使えるレベルで写っていて、過去の中国メーカーで見られた「使いたくない」と思わせるほどの差はない。

 動画も普通に撮れるし、これで実売価格はメーカーロゴがついたものが1万3000円前後(無印のメーカー保証なしの製品が1万円強)で買えるのだから、個人的には意外な驚き。そういう意味でも買ってよかったと思っているし、もうちょっと比較しながら使い続けてみたいと思った。

そこそこの品質で安いものが中国で根付く

中国メーカーは 中国各地で特設会場を設けて家電を安く販売している

中国メーカーは 中国各地で特設会場を設けて家電を安く販売している

 今や百度で「国産」という文字を入力すると「国産 電視(中国産テレビ)」「国産 手機(中国産ケータイ)」と検索ワードの予想一覧が表示される。

 テレビにしろケータイにしろ、中国メーカー各社が「価格が安い」ことを積極的に消費者に訴え、とにかく買ってもらい「言われているほど中国メーカーの製品は悪くない」と認識させた。

 その認識が拡がり、口コミで「中国製でも大丈夫」ということが伝わっていき、ケータイ・テレビ各社の販売キャンペーンが絶えず行なわれた結果、今、中国市場において中国メーカーはシェアを高めている。

 中国のデジカメは何度か過去にレビューしたことがあるが、昔は本当に使い物にならずヒドかった。だが、こうしたそこそこのレベルで安いデジカメが各社から引き続きリリースされ、テレビや携帯電話のように根気よくキャンペーンが続けば、やがて中国人の非日系メーカー製デジカメの評価が変わっていくのではないかという心配がある。

 数年間で気づいてみれば、中国製がバカにされていたテレビや携帯電話といったジャンルで中国メーカーのシェアが高まっていたという過去を見るに、やがて本当に非日系カメラだけで撮られ報告される反日デモが起きる日が来るのではと思うのだ。

 中国の周辺国でも、現在テレビにしても携帯電話にしても、市民にとって中国製の評価は低いながらも、低所得者は中国製を選択し購入している。

 すでに日系カメラメーカー各社は、外国で廉価モデルのデジカメをリリースしているが、さらに積極的に廉価モデルのデジカメをリリースし、台湾など中華デジカメの突き上げでシェアを失わないよう万全の体制を整えたい。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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