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筺体のコストは倍、キートップは業界トップレベルの仕上がり

ThinkPad X1 Carbon、薄さと軽さの秘密

2012年08月30日 17時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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従来とは倍のコストをかけたカーボン素材

 最後のカーボン素材に関しては、製品名にも示されているように今回最も開発陣の思い入れを感じさせる要素である。これはトップカバーに使用されており、昨年発売されたThinkPad T420sと比較して約2.3倍の強度を持つ最高級グレードの素材となる。最近になってノートパソコンの筺体でも注目を浴びるようになったカーボンファイバーだが、実は1992年に登場した初代ThinkPadでもCFRPはすでに活用されており、ThinkPadユーザーにはなじみの深い素材である。

材質の違いに関する説明。工業製品としてはトップレベルのカーボン素材を採用した

 ちなみにIBMはマグネシウム合金も、他社に先駆けてThinkPad 220などで採用しており、1990年代末の銀パソブーム(関連記事)後は、マグネシウム合金の成型精度(特に薄型化)が進んだため、ThinkPad Xシリーズなど薄型モバイル機を中心に、マグネシウム合金が多用されるようになった(関連記事)。しかし厚みさえ気にしなければ、軽量かつ高強度が得られるため、TシリーズなどA4機を中心に継続的かつ幅広く活用されてきている。

 X1 Carbonでも、キーボードべセルやベースカバーにマグネシウム合金を使用しており、マグネシウム合金とカーボンの両方の素材を特徴に合わせて使い分けている形となる。

マグネシウム合金製のベースカバー

 今回使用したカーボン素材はプリプレグと呼ばれる“炭素繊維を平行に揃えたシート”を利用したもので、使用する炭素繊維の縦弾性率(GPa)は500台。工業製品に使用するものではトップクラスの低ひずみとなっている。これをCFRP(炭素繊維強化樹脂)とすると70~80ぐらいの数値となり、アルミニウムやマグネシウムといった金属よりも強い強度が得られる(従来のCFRPは金属よりも劣っていた)。

トップカバーはCFRPをベースにしつつ、アンテナ部分などを電波を通しやすい樹脂にして一体化している。これをサンドペーパーなどで削って面を合わせ塗装する

同じ厚さ、重量で他の素材とどういった差が出るかを示す展示

 一方、アルミ合金やマグネシウム合金よりも軽く強いというイメージがあるカーボン素材だが、実際の比重はマグネシウム合金と同じか少し重いぐらいである。そこで、X1 Carbonでは、縦方向・横方向2枚のプリプレグシートを重ねて張り合わせ板で、さらに発泡性樹脂層を挟み込んで厚さを稼いでいる。鉄骨などをイメージすると分かりやすいかもしれないが、(仮に中が空でも)2枚の板を距離を置いて配置すれば、曲がりにくくなる。これにより、水に浮くほど軽い比重(0.97g/cm3)となった。

 コストに関してもT430sなど既存モデルに対して倍程度になるとのことで、当面はフラッグシップ機のみでの使用になりそうだ。

限定されたインターフェースだからできたデザイン的な配慮

 デザイン面では、薄さを強調するため側面から見た、ウェッジシェイプ(くさび型のフォルム)を強調し手前に最薄部のしぼりを設け曲面も多用した。またThinkPad X1よりも狭ベゼルとして、液晶パネルサイズの向上にも関わらず、フットプリントは低減している。クリックパッド(タッチパッド)はすりガラスに裏面から塗装したものを用い、滑りやすく快適な操作感を提供したり、ThinkPadシリーズでは初のドロップダウンタイプでかつ180度に開くヒンジを活用している。

 デザインとユーザーインターフェースを担当した高橋知之氏によると、従来のThinkPadでは背面にポート類を配置するため回転軸がすべて液晶パネル側に設けられていたが、薄型のUltrabookであり、コネクター類も最小限に押さえられているため、デザイン面での自由度が増したと話す。こうした、いままでの要素とは違うものを取り入れながらやっぱりThinkPadと思えるものを選んでいるのがX1 Carbonである。

急速充電対応のACアダプターは90Wと同じ容量だが電源用のコネクターが角型に変更となった。隔週変換ケーブルもオプションとして用意される

ヒンジの位置の違いもデザイン上の相違点。薄型であるため、背面にインターフェースを配置しないという点も選択の理由のようだ

 執行役員常務の横田聡一氏は、会見でUltrabookに取り組む理由として「市場ではパッド系のデバイスが普及しており、携帯性がよく操作性もいい。しかし情報を見るにはいいが、クリエーションには不十分」とした。

 その上で「携帯性がありながら、生産性もあるという意味でUltrabookが注目を浴びている。レガシーなポートは不要だが携帯性を重視したものという選択肢としてUltrabookを売り込んでいきたいと考えている。外を回る人、グローバルトラベラー、エグゼクティブがターゲット」であるとした。

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