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仮想化の進化は止まらない!VMworld 2012レポート第4回

エンドユーザーコンピューティング分野での新技術が続々

シトリックスを猛追!Multi-Device Worldを見越したVMware

2012年08月29日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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VMwareは米サンフランシスコでプライベートイベント“VMworld 2012”を開催中だ。2日の8月28日午前の基調講演では、エンドユーザー・コンピューティングを直接支えるアクセスレイヤの最新情報が披露された。

デバイスごとのポイントソリューションの排除

 2日目午前の基調講演は、同社のCTOのスティーブ・ハロッド氏が前日に続いて登壇した。初日の基調講演はデータベースインフラ、2日目はエンドユーザーコンピューティングとテーマを分割した形だ。IT業界でも著名人である新旧両CEOが顔を揃えた初日の基調講演に比べると来場者数は減るのではないかと予想していたが、会場の埋まり具合は前日とほぼ同様という印象で、来場者の関心の高さがうかがえた。

初日に続いての登壇となったCTOのスティーブ・ハロッド氏

 ハロッド氏は、「変革(Transform)」「仲介機能(Broker)」「配信(Deliver)」の3つのテーマに沿って話を進めた。

 変革は、レガシーなコンピューティングをサービス化するという視点だ。ただし同氏は、よく言われる「Post PC World(PC後の世界)」という表現については「PCがすぐになくなることはない」とし、「Multi-Device World(多様なデバイスの世界)」を想定しているとした。PCに加えてスマートフォンやタブレット端末など、多種多様なデバイスが利用される状況だ。

 従来の企業ITでは、利用されるPCはIT部門が管理し、必要な業務がきちんと遂行できるように環境を整えて従業員に提供するが、機能や特性の異なる多様なデバイスが混在する環境では、それぞれのデバイスごと、個々の機能やアプリケーションごとにそれぞれ個別に対応する“ポイントソリューション”が多数並列してしまう。こうなると、管理が複雑化する上、業務に必要なアプリケーションにアクセスできない状況が生じてしまうなど、IT部門としてやりたかったことが達成できなくなるという問題がある。

“Multi-Device World”の問題点。デバイスごとにアプリケーションやデータが分断されており、膨大な数の“ポイントソリューション”が並列的に存在してしまっている

 この問題を解決するには、ポイントソリューションを廃し、さまざまなデバイス/多様な状況に包括的に対応するインフラを整備する必要がある。同社が推進するのが“Horizon”環境だということになる。アプリケーションやデータを個々の端末から切り離して集中管理し、仲介機能(BrokerとしてのHorizon)を介して各デバイスに提供することで各デバイスの機能性を損なうことなく効率的な集中管理が実現できる。こうした“きれいに整理された”アーキテクチャを構築できる点が追う立場の強みだと言えそうだ。

 Horizonはすでに公表済みの取り組みだが、今回は統合プラットフォームとして“VMware Horizon Suite”のαバージョンとして発表が行なわれた。昨年のVMworldの段階ではコンセプトに近い扱いだったHorizonが具体的な製品に近づいたという理解でよいだろう。Horizon Suiteは、“Project Octopus”“Project AppBlast”“ThinApp”“VMware Horizon Application Manager”“VMware Horizon Mobile”のテクノロジーを集約した、「真の意味でのモバイル環境のための初の統合管理プラットフォーム」だと説明される。

“各デバイスの機能性を損なうことなく効率的な集中管理が実現できるHorizon

追う立場のVMwareが繰り出すエンドユーザー分野の拡充

 基調講演の中では、5月22日に発表されたWanovaの買収によって獲得された製品である“Mirage”のデモも行なわれた。Mirageでは、物理デスクトップ環境を「OSのゴールドイメージ」と「ユーザープロファイル」に“分割”し、集中管理できる。このため、IT部門の遠隔操作でユーザーの作業環境をWindows XPからWindows 7にアップグレードする一方、ユーザーが設定した壁紙やデスクトップに配置されたアイコン、ローカルにインストールされた各種アプリケーションなどは元通りに復元する、といった操作が可能になる。

 さらに、既存のVDIソリューションであるVMware Viewとの組み合わせによって、Mirageで管理しているユーザーのワークプレースのイメージをVDIとして配信するなど、物理デバイスと仮想デスクトップを自在に組み合わせた柔軟な環境が実現できる。買収からまだ日が浅いこともあって、今回のデモではMirageとViewが連携して動作する形になっていたが、将来的には両者の機能が統合されることが期待される。

 開発段階の新技術としては、“Project AppShift”と呼ばれるユーザーインターフェイス関連の技術デモも公開された。これは、Windowsアプリケーションをタブレット端末等で利用する場合の操作性を改善するための取り組みだ。

 VDIソリューションを活用すれば、タブレット端末上でWindowsアプリケーションを利用できるわけだが、マウスなどの精密な位置指定が可能なポインティングデバイスを前提としたアプリケーションをそのままタッチインターフェイスで利用しようとすると、「狙った場所を正確にタッチできず誤動作する」といった不満が生じることになる。Project AppShiftでは、タッチインターフェイスとWindows UIを中継するフロントエンドを用意することで、ミスタッチしにくいように拡大したインターフェイスを提示したり、コントールを再配置したりといった手法でユーザーがタッチインターフェイスを介して快適にWindowsアプリケーションを操作できるようにする。

 このほか、Android端末やiOS端末で業務アプリケーションを安全に利用できるようにするためのコンテナ技術など、開発中の新たな取り組みが次々と紹介された。

 エンドユーザーコンピューティングの仮想化に関してはシトリックスが先行しており、VMwareは追う立場だと言えるが、今回の基調講演のデモを見る限り、必要な機能/コンポーネントの整備は急速に進んでおり、ほぼ遜色ないレベルに到達しているように見える。とはいえ、膨大な数のユーザーに快適な作業環境を提供しつつ、効率的な集中管理体制を実現できるかどうか、システムのスケーラビリティが問われることになるため、この部分で十分な品質に達していることをユーザー企業に認知してもらう努力が必要になりそうだ。

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