このページの本文へ

仮想化の進化は止まらない!VMworld 2012レポート 第1回

海の向こうでは、拍手の中、ポール・マリッツCEOが卒業

ゲルシンガー新CEOが「Software-Defined Datacenter」を語る

2012年08月28日 09時00分更新

文● 渡邉利和

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

8月27~30日の4日間、ヴイエムウェア(以下、VMware)はサンフランシスコでプライベートイベント“VMworld 2012”を開催中だ。初日27日午前の基調講演では、9月1日付けでCEOに就任する予定のパット・ゲルシンガー氏も登壇した。

新CEOパット・ゲルシンガー氏が基調講演に登壇

 2008年の就任以来4年に渡ってVMwareを率いてきたポール・マリッツ氏がCEOを退き、新CEOにパット・ゲルシンガー氏が就任することが明らかになっているが、今回のVMworldの基調講演はその公式なお披露目の場となった。

基調講演に登壇した現CEOのポール・マリッツ氏

 基調講演に登壇したポール・マリッツ氏は2008年に開催された1回目のVMworldの時点を振り返り、当時25%ほどだった仮想化されたワークロードの割合は現在では60%に、認定技術者(VCP:VMware Certified Professional)の数は2万5000名ほどから12万5000名に、VMworldの参加者数は1万3000名から2万名に、と順調に発展してきたことを紹介した。さらに、クラウドに関しては2008年当時は「クラウドとは何か(What?)」が問題になっていたのに対し、現在では「どう実現するか(How?)」に関心が移っていると指摘した。

マリッツ氏が振り返った2008年当時の状況と現在の比較

インフラ、アプリケーション、アクセスの3つのレイヤで変革を実現していく、という基本方針は堅持されている

 同氏は、新CEOのパット・ゲルシンガー氏を壇上に招き、この先の未来について語る役割を任せてステージから降りたが、その際には来場者の多くが立ち上がり、同氏に拍手を贈っていたのが印象的だった。

マリッツ氏と、新CEOのパット・ゲルシンガー氏

 ゲルシンガー氏は、2008年の25%から現在は60%にまでなった仮想化ワークロードの割合が、今後3~4年で90%以上に達するとの見通しを示した上で、かつての物理サーバーの時代に新たなサービスを展開するには数週間単位の時間が必要だったが、現在の仮想化インフラでは数日~数時間単位に短縮されているが、これをさらに数分~数秒単位で実現する必要があるとした。このための基本的なアイデアが“Software-Defined Datacenter”で、アプリケーションとVMに加え、データセンター内にあるすべてのコンポーネントを仮想化していく、という考え方になる。あらゆるリソースを抽象化し、プール化した上で自動化を実現する、という同社の基本的な取り組みは不変だが、その対象が物理サーバからデータセンターへと拡大していることが改めて明確化された形だ。

Software-Defined Datacenterの基本的な考え方。当然だが、SDN(Software-Defined Network)のコンセプトをさらに推し進めたものだ

vRAMのライセンスモデルは廃止へ

 基調講演の中ではあまり細かい部分にまでは触れられなかったが、新製品としてvSphereのバージョンアップ(vSphere 5.1)が公表され、vCloud DiretorやvCloud Networking and Security、Site Recovery Managerといったコンポーネントが一斉に5.1にバージョンアップしている。

 このほか、新CEO就任に合わせる形でライセンスモデルの変更も発表された。物理サーバのメモリ搭載量に応じて課金するというvRAMというコンセプトは複雑で不評だったということで、CPU/ソケット単位のシンプルな体系に回帰することが発表された。

ゲルシンガー氏のCEO就任記念といった感じでvRAMの廃止宣言が行なわれた

 IAサーバーの仮想化という点ではすでに成熟が進み、大きな進化は期待しにくくなっているのが現状だが、VMwareはデータセンター全体の仮想化に向けて着々と製品を充実させている。ハイパーバイザーのレベルでは競合製品も遜色ないレベルまで進化してきているが、ハイパーバイザーの上に包括的な仮想化環境の運用管理体系を構築しているという点に関してはまだまだVMwareのアドバンテージは大きい。今回Software-Defined Datacenterというコンセプトが打ち出されたことで、まだ当面はVMwareが仮想化環境の整備をリードしていく、という状況が続くものと思われる。

初出時、筆者名が誤っておりました。お詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2012年8月29日)

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事