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冨田勲コラボ、初音ミクは「指揮に合わせ歌う」新技術で登場

2012年08月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ビルボードジャパン、日本フィルハーモニー交響楽団……
ライブ関係者が語る「冨田勲feat.初音ミク」

 ただ、一般的には、冨田勲と初音ミクの組み合わせは、相当トリッキーに見えるのではないか。そうならまだいいが、クラシック界に初音ミクが何なのかを知っているのは少数派だろうし、初音ミク界隈の人たちに冨田勲の音楽が万遍なく知られているとは思えない。なにしろかたや80歳、かたや発売されてから5年のソフトウェアである。記者会見から冨田さんと伊藤さん以外の登壇者が、この組み合わせにどういう印象を持っているのかを拾ってみた。

ビルボードジャパン・小菅氏「現代の先端アートの象徴として…」

 「現代の先端アートの象徴としてライブやメディアで活躍しておられます初音ミクさん。その歌と踊りがイーハトーヴの世界を彩ることになる。音楽性が音楽の可能性を探求し、半世紀以上において音楽シーンをリードしてこられた冨田先生の最新作にふさわしいものになると期待しています」(株式会社阪神コンテンツリンク 常務取締役 小菅亨太氏)

日フィル・平井氏「伝統と歴史を守りながら、さらに発展」

 「日本フィルハーモニーは56年の歴史を持っています。幅広いレパートリーと新鮮な演奏スタイル。これをもって音楽界に新風を吹き込んできた楽団でございます。この伝統と歴史を守りながら、さらに発展していく。そういう機会を日々考えてきております。このような企画に参加させていただきましてワクワクしているところでございます。現在私たちもいろいろな文化とコラボレーションをしていく必要があるのではないかと考えています」(財団法人日本フィルハーモニー交響楽団 専務理事 平井俊邦氏)

日本コロムビア・岡野博之氏「今までと違った関心を呼んでいるのかなと」

 「ライブで収録して1月にリリースするという形で関わらせていただいております。冨田先生とはずいぶん仕事をしておりまして、色々記者会見もやっているんですけれども、今日驚いたのは(会見会場に)いつもより若い人が多いなと。今までと違った関心を呼んでいるのかなと思っています」(日本コロムビア A&R本部 インターナショナル制作宣伝部 部長兼プロデューサー 岡野博行氏)

指揮者・大友直人氏「(初音ミクのことを)この話を聞いて初めて知った」

 「冨田先生は若い頃からいろいろなことに果敢にチャレンジをされて、その時代の新しいムーブメントを的確に捉えて、自分の中で消化されてきた。今回は初音ミクさん。実は正直、私自身認識がありませんで、この話を聞いて初めて知ることになったんですけれども。ただ新しいサウンドとして取り入れるのかなと思っていたんですが、「宮沢賢治の世界の中にある、姿の見えない行きどころのない声」という位置づけで取り入れられるというアイディアを伺って、さすが冨田先生だなと」(指揮者・大友直人氏)

 やはり普通のクラシックのコンサートとはかなり違っているようで、誰にとっても新しいチャレンジであるのは同じようだ。そもそも新作なので、誰もまだ曲を聴いたことがない。楽曲中に合成音声が登場するのは当然として、それはどのような曲になるのか。まず初音ミクは「注文の多い料理店」の中のエンターティナーとして登場するらしい。

コンサートのテーマは宮沢賢治。故郷である岩手県の風景もモチーフになっているという

冨田勲氏「伊藤さんに、なんとか(初音ミクに)出演してくれないかと」

 「料理店の中に人は出てこない。声だけはどこかから聞こえてくるけれど、ボーイの案内もない。でも二人の猟師はいろんな部屋に通されて、結局は自分たちが食われるということ分かかって。でも逃げ出そうとしたけれど逃げられない。そこに初音ミクが出てくるわけです。猫のレストランに閉じ込められて、(猟師が)もう自分たちは出られないという気持ちになったとき、突然サーカスみたいな音楽で初音ミクが出くる。そこで歌うのが「わたしは初音ミク、かりそめのボディ」と。ミクもパソコンの中にしかいられない。もうあなた方も出られないんですよ、ということを暗示するには、初音ミクしかない。

 それでここにおられる伊藤さんに、なんとか出演してくれないかとお願いしたんですね。そうしたら非常にのってくださって、これで失敗できないなと思いまして。しかも大友直人さんの指揮ですから。作り上げたアニメとはちがうわけですから。(指揮)棒にあわせて初音ミクが歌わないといけないわけですから。この構造はしゃべっちゃいかんのですか?(会場笑い)じゃ、やっぱり伊藤さんの方から話していただきます」

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