解像度の価値をどう受け取るかが
TF700Tのポイント
タブレット部にあるSDカードスロットは「micro SDサイズ」だが、モバイルキーボードドックにあるのは「フルサイズ」。デジカメなどとのデータのやりとりには効果的だ。ディスプレーの解像感を生かす意味でも、SDカードによるデジカメ連携はあるべき要素だ。ビュワー兼簡易画像編集、といった形で、撮影などにコンパニオンとして持ち出すには向いている構成といえる。
ASUSTeKによってプレインストールされた、Androidのチューニングアプリもおおむね適切だ。この辺はいくつかのモデルを経て、成熟してきた証拠といえる。
ただソフトの面で気になったのは、TF700T搭載の日本語入力ソフト「FSKAREN」の出来だ。なぜか変換候補列が巨大な文字で、表示エリア的にも広く表示されてしまい、使いづらく感じる。また他のアプリとの相性かもしれないが、入力時にもたつきが起きることもあった。
タッチスクリーン上からの入力では十分実用的と感じたが、どうもモバイルキーボードドックでの使用に合っていない印象だ。Android用の日本語入力ソフトも選択肢は広がっている。試しにATOKやGoogle日本語入力などを使ってみると、より快適になった。UIを含めた改善を行なうか、他のソフトへの入れ替えを検討していただきたい。
TF700Tは、「解像度が上がった」ことが最大の価値である。だが、他の部分が他のAndroidタブレットより「まったく劣っていない」ことにも着目すべきだ。価値を考えると、やはりモバイルキーボードドックとセットで評価すべきであり、となると7万4800円という価格は、タブレットとしては少々高いものになる。だが、「バッテリーがとにかく持つ、キータイプが快適なモバイルデバイス」と思えば理解もできる。そこで解像度が上がることは、重要なファクターでもある。
ただし、同じプロセッサーを使って解像度は1280×800ドットである「TF300T」は、スペック上のバッテリー動作時間が1~2時間長い。長時間動作させるだけならそちらの方が上だし、価格的にも4万4800円(直販価格)とぐっと下だ。そのあたりの選択は、人によって異なるだろう。筆者としては、解像度の価値に軍配を上げる。
同種のコンセプトの製品は、2012年末に向けて、「Windows RT」を採用した製品も含め、いくつも出てきそうではある。その中でTF700Tがどのような位置にくるかは予測がつかない部分はあるが、「今買えるもの」としては、十分お勧めできる製品だ。
- お勧めする人
- ・低価格でも、長時間使える「ネット端末」を探している人
- ・「高解像度ビュワー」を求めている人
ASUS Pad TF700T(TF700-PR64D/GD64D)の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Tegra 3(1.7GHz) |
メモリー | 1GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 10.1型ワイド 1920×1200ドット |
ストレージ | 内蔵フラッシュメモリー 64GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0 |
インターフェース | タブレット:micro HDMI出力、カードリーダー(microSD/SDHC/SDXC対応)、マイク/ヘッドホン兼用ジャック ドック:USB 2.0×1、カードリーダー(SD/SDHC/MMC対応) |
サイズ | タブレット:幅263×奥行き180.8×高さ8.5mm ドッキング状態:幅263×奥行き180.8×高さ19.4mm |
質量 | タブレット:約598g、ドッキング状態:約1.1kg |
バッテリー駆動時間 | タブレット:約9.5時間、ドッキング状態:約14時間 |
OS | Android 4.0.3 |
価格 | 7万4800円 |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)、「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)。最新刊は「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)。
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