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Apple Geeks 第89回

もうすぐ秋、「新しいiPhone」を考える

2012年08月17日 18時00分更新

文● 海上忍(@u_shinobuTELAS

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 本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

 UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。

 立秋を過ぎ、夕刻近くともなると秋の気配を感じるようになった。もうすぐ秋……そう、WWDC 2012で今秋リリースと発表された「iOS 6」の登場は近い(関連記事1関連記事2)。9月か10月か、はたまた11月か? 具体的な日程は定かでないものの、そろそろ情報を整理し始めていい時期だ。

WWDC 2012で今秋リリースと発表された「iOS 6」の登場は近い……はず

 iOS 6が出るのであれば、ハードウェア方面でも何かあるはず。具体的には、“新しいiPhone”だ。昨秋のiPhone 4Sが小幅な改良にとどまったこと、大幅な仕様変更を伴ったiPhone 4から2年数ヵ月が経過したことからしても、新モデル発売のタイミングとしては絶妙だ。それも手伝ってか、真偽の定かならぬ情報が巷を飛び交っていることは、あえて触れるまでもないだろう。

 ウラの取れぬ情報を云々してもしかたがないので、本稿では事実をもとに推測可能な“新しいiPhone”の新仕様/新機能について考えてみたい。

ポイントはグラフィックスをになう「GPU」

 新しいiPhoneでもっとも注目されるのは、液晶パネルの大きさも含めた筐体デザインであり、薄さや重さなのだろうとは思うが、一方で「軽快さ」も重要だ。そしてその軽快さを支えるのは、システム全体を統括するCPUのスペックにかかることも確かだろう。

 そのCPUについて現状を整理してみよう。2008年のP.A. Semi買収効果か、iPhone 4からiOSデバイスのCPUは自社設計(による部分が多いと推測される)のApple A4/A5に変更されており、この路線は継続される可能性がかなり高い。アップルが設計し、Samsungなどファウンドリ企業に製造を委託する、という構図だ。

iPhone 4SのCPU/SoC「Apple A5」

表:歴代iPhoneに採用されたCPU/GPU
CPU GPU
iPhone 3G Samsung 1176JZ(F)-S(ARM) PowerVR MBX
iPhone 3GS Samsung S5PC100(ARM Cortex-A8) PowerVR SGX540
iPhone 4 Apple A4(ARM Cortex-A8) PowerVR SGX540
iPhone 4S Apple A5(ARM Cortex-A9) PowerVR SGX543 MP

 この構図は重要で、話はCPUコアにとどまらない。GPUコアが変わればチップ全体の設計に影響が出てくるため、GPUコアもセットで設計されるだろうからだ。だからこそ、“新しいiPhone”が他のCPU/SoC、たとえばSamsungの「Galaxy S III」に採用されている「Exynos 4 Quad」ベースに変わるという噂はにわかに信じがたい。

 Exynos 4 QuadのGPUコア「Mali-400 MP」は、1080p対応のマルチコアGPUとして高い性能を有しているが、これまでのiOSデバイスにほぼ一貫して採用されてきたPowerVRシリーズとは異なる。それは、PowerVRを捨てMail-400 MPに乗り換えるという単純な話ではなく、アプリの互換性にも影響する話だ。

 「OpenGL ES」を例に説明してみよう。iOSは、大きく「Cocoa Touch(UIKit)」と「Media」、「Core Services」と「Core OS」の4層で構成されるが、OpenGL ESフレームワークはMediaレイヤーの重要な要素であり、UIKitでは難しい2D/3Dの描画処理を担う。具体的には、ゲームなどのアプリが大きく依存している。

 このOpenGLのサブセット規格は、CPUの命令のような厳密な規定がないため、GPUにより描画結果が多少異なることがある。しかもiOSでは、PowerVRへの最適化が徹底して行なわれ、拡張命令も多数用意されているため、これを今すぐほかに変えるとは考えにくい。

OpenGLベンチマークアプリ「GLESView」で、iOS用独自拡張を確認したところ。このように、OpenGLには特定のGPUに依存する傾向がある

 だから、“新しいiPhone”でも引き続きPowerVRシリーズが採用される可能性は高いと考えるのが妥当だろう。今や豊富な人材と潤沢なキャッシュフローを持つアップルなだけに、Apple A5の後継版を軸に互換性あるPowerVRシリーズのGPUを添えた、自社設計のSoCを用意すると思うのだが……。


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