「薄くする」という点については、東芝としてはギリギリまでがんばった、というところなのだろう。例えばEthernetコネクターは本体に内蔵されているものの、そのままの厚みでは実装できない。そこで、コネクター部が下に開いてちょっと飛び出す、特別なものが採用されている。
そこまでしてEthernetコネクターを搭載しているのは、R542が「モバイルとしてのUltrabook」であるのと同様に、「据え置きノートとしてのUltrabook」を指向しているからである、と考えるのが自然だ。この広大なディスプレーは、やはりじっくりと腰を据えた作業に向く。薄さや、後述するバッテリー駆動時間の長さは、移動しつつ「ちょっと作業」というよりも、自宅や職場で完全に据え置きとして使うか、「移動先でもがっつり仕事」という、(あまり好きな言葉ではないが)「ノマドなワークスタイル」に適切なもの、と言えそうだ。
キーボードやタッチパッドは、サイズに余裕があるせいか、とても快適だ。縦方向が短くなってはいるが、それでも13型クラスのコンポーネントを使っているので、使う上での制約はまったくない。キーボードバックライトのムラが大きく、コストダウンの厳しさも少々感じられるが、それ以外には大きな不満はない。
映像より「仕事」向け?
専用ユーティリティが光る
R542のディスプレー解像度は1792×768ドット。一般的な13型クラスのディスプレーが、そのまま横にだけ長くなったもの、と思えばいい。サイズ的には「14.4型」ということになっているが、一般的なディスプレーのタテヨコ比とは違うので、この数字を見ても大きさを感じることは難しい。すでに述べたように「15型の横幅と同じ」と考えた方が正しい。
縦横比は21:9。すなわち、いわゆるシネマスコープ(シネスコ)比率、ということになるのだが、だからといって「映画に最適」と言ってしまうのはちょっと早い。現在の映像ソフトはみな、DVDもしくはブルーレイの16:9を基本に作られており、シネスコ作品はそこに黒帯をつけて表現される。この黒帯だけをうまくカットして表示しないと、そもそも「シネスコ再生」にはならない。
21:9のシネスコの中に16:9の映像を入れても、それはそれでバランスが悪い。ディスプレーパネルの解像度的にも、DVDソースではぼけるしブルーレイでは解像感が足りない。そもそもR542には光学ドライブが搭載されておらず、「シネスコの映画を楽しむもの」としては決定的なパーツが欠けている。
「じゃあこの縦横比に意味はないのか?」と言われると、むしろ「映像以外で強烈にアピールする」というのが私の感想だ。要はこれ、「メインの情報の横にもちょっと情報が表示できるディスプレー」なのである。
上の画像は、ウェブブラウザーを2つ横に並べてみたもの(編注:縮小していない大きな画像なので拡大時は注意)。左のウインドウは4:3、右が1:1の比率で並べている。なかなかいい感じではないだろうか。ウインドウを自由なサイズで並べるというより、「メイン+サブ」で並べる、という感じが適している。
ノートパソコンの画面は、やはり基本的に狭い。マルチウインドウでいろいろな情報をたくさん並べて使う、というのは厳しい。だからマルチディスプレーを、さらに大きなディスプレーを……、という話にもなるのだろうが、ノートパソコンの気軽さも捨てきれない。となると、ディスプレーそのものを横に長くして、いわゆる「全画面」の状態に近いウインドウを2つ横に並べられるようにすれば……。それがR542の発想だろう。
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