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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第33回

サンライズ尾崎雅之氏インタビュー(後編)

TIGER & BUNNYは30年後を見据えた種まきだ

2012年08月21日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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舞台版は究極のオーダーメイド

―― 音楽の場合はツアーがあり、各地の需要を少しずつ拾っていくわけですが。

8月24日~9月1日、東京・お台場のZepp DiverCityにて行なわれる舞台『TIGER & BUNNY THE LIVE』(全17回公演)

尾崎 「声優さんが舞台に出演されるとなると、全国ツアーのハードルは上がるかもしれませんね。皆さんレギュラー番組を抱えられていますから。実際、TIGER & BUNNY THE LIVEの公演期間(8月24日から9月1日の計9日間)とその稽古スケジュールを確保するだけでも、本当に様々な方々のご理解とご協力をいただいてます。

 1つのパッケージ=興行を作って地方行脚するというのは、舞台の世界でも行われてますし、それはアニメの舞台化でも同様ですが……様々な課題をクリアする必要があります」

―― そうですね。劇団四季をはじめとしてスターシステムの不採用(出演者と配役を固定しない)が1つの流れになっています。

尾崎 「よくわかります。結局、ビジネスとして両立させようと思うと、それが1つの有効な手立てですから。日によってはダブルキャスティングにまで行き着きますよね。

 言い方を変えれば、今回の舞台は究極のオーダーメイドというか、この奇跡的なキャスティングって、ひょっとしたらこの夏にしか成立し得ないかもしれない貴重なものなんです。

 だからこそ、自分としては生観劇ではないライブビューイングという手段を取っても、観てもらう機会を提供する責任があると考えています」

―― 他方、ライブイベントがポピュラーな音楽業界では“フェスバブル崩壊”などと言われていますよね。

尾崎 「アニメ関連のライブイベントも同じで、どんなものでも受ける、というわけじゃありません。慎重に見極めていく必要があります。

 ただ、市場の成長可能性はある。そこでバンダイナムコグループとしても、きっちりビジネスにすべくバンダイナムコライブクリエイティブという会社を立ち上げて2年ほどになります。(TIGER & BUNNY THE LIVEが動き出したのは)ライブエンタテインメント化のノウハウがグループ内に蓄積されてきた時期でもあったんです。

 しかも僕自身、このバンダイナムコライブクリエイティブの役員を兼任していますので、『イベントをやりたい』と思ったら、スピーディに実現できてしまう(笑)。さらにサンライズでは海外営業部の部長も兼務しているので、(海外配信なども)同様に素早く対応できます。もちろん各会社の承認は必要ですが」

舞台化のきっかけは着ぐるみだった

―― 先ほど、舞台をやりたいという思いはあったものの、最初から計画されていたわけではない、というお話がありました。では、具体的なきっかけは?

尾崎 「2011年11月に、最終回イベントよりも大規模な『HERO AWARDS 2011』というイベントを開催し、そこでタイガー&バーナビー2体のヒーロースーツをお披露目したんですね。リアルな着ぐるみです。正直、あの着ぐるみに(特に)女性ファンがどう反応を示されるかって、不安もあったんですよ。でもその反応がすごく良くて」

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―― 普通はヒーローの着ぐるみと言えば、男性に訴求するものですよね?

尾崎 「そう! 僕自身も、ヒーロースーツを目の当たりにして、すごい燃えたんです。ただ、これがTIGER & BUNNYという作品の、特にイベント周りを支えてくださっている女性層にどれだけ受け入れられるかは、未知数でした。

 ところがイベント内でサプライズとして出したところ、すごい反響と声援があって、これはいけるなって確信したんです。じつは、2011年の初夏にジャパンアクションエンタープライズ(JAE)さんから舞台化のオファーを受けていたこともあり、ヒーロースーツは舞台化という“その先”を見据えて開発していただいた部分もありました」

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