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アップル四半期決算—「iPhone」2603万台、「iPad」1704万台

2012年07月26日 22時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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最大の武器であり最大の弱点

 市場の予測値を下回ったとはいえ、アップルは依然として2桁ペースの驚異的な成長を続けている。その意味では市場の期待値が高すぎたのが今回の問題だといえるだろう。だが一方で、今回の決算ではいくつかのリスク要因が顕在化することとなり、アップルの今後を占ううえで重要な判断材料となりつつある。

 まずアップルは24日の決算発表後に行なわれた電話会議の中で、iPhoneの販売減少は季節的な要因であり、今後の秋のiOS 6発表などで挽回していけるとの見方を示している。アナリストらが強調するほどには現時点でのiPhone販売減少は大きな問題ではなく、むしろ「ユーロやほかの多くの新興国通貨に対してドル高」という外的要因のほうがリスクになっていると同社では強調している。決算発表の場では直接触れなかったものの、今秋登場が噂される次期iPhoneが登場すれば状況が一変すると考えているのだろう。

 ただし、この「次期iPhone」こそがアップルにとって最大の武器であると同時にアキレス腱だともいえる。1年に一度のペースで新製品がリリースされるiPhoneは、もはや同社の売上の半分、利益でいえばさらにそれを上回る貢献をしている。もし次期iPhoneがユーザーの期待に添えるものでなければ、この前提は崩れることになる。

 これはアップルにとって大きなプレッシャーだ。現在アップルではiPadビジネスが急成長しており、売上全体の1/4を占めるまでになっている。iPhoneでのリスクはiPadがカバーするのが理想だが、実際にはこちらもAmazon.comのKindle FireやGoogleのNexus 7など、200ドル程度の低価格タブレットとの競争に立たされつつある。電話会議の中でアップルは明言を避けたものの、中国を含む新興国でのiPadの需要拡大など、直接的な競合ではなく市場拡大で売上増加ペースを維持していくとの見方を示している。「7〜8インチサイズの小型iPadを低価格でリリースして直接対抗する」という噂も存在するが、こうした直接的な対抗策についての返答はなかった。

iPhone/iPadの成長ドライバー

 iPhoneが最大の武器であると同時に最大の弱点であることはアップル自身も認識しているようで、決算発表の場では何度もビジネスや教育現場でのiPhone/iPadの大量導入事例、そして新興国での事業拡大について触れていた。

 特に、中国では倍々ペースでの成長を実現できており、近年同社が力を入れている中国市場での成果を報告する形となった。スマートフォンやタブレットが一部のマニアだけに受け入れられていた時代は終わり、広い層へと普及が進むことで成長を維持していくということだろう。

 例えば前述の200ドルタブレットが限定的な市場での展開にとどまっているのに対し、iPadはすでに世界展開が進んでいる。iPhoneについても先進国ではすでに機能的には同製品を上回る選択肢が増えつつあり、絶対的優位な存在ではない。グローバル展開や広い市場での受け入れが、現在のiPhone/iPadの成長ドライバーになりつつある。

 またiPhoneやiPadの影に隠れてはいるが、Macビジネスについても引き続き同社は力を入れている。特に今四半期はIvy BridgeというIntelの新プロセッサーが登場し、Mac製品ラインナップも「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」を含めて一新されたこともあり、比較的好調だった直前の第2四半期に比べても台数ベースで増加している。

 決算発表の場ではMac用次期OSの「OS X Mountain Lion」が販売開始となることも報告されており、しばらくはOS X Mountain LionとMac絡みの商戦で市場が沸くことになるだろう。



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