iPhone／iPadが圧倒的に便利になる新Mac用OS

「OS X Mountain Lion」—iOSの勢いをMacに取り込み攻勢かけるアップル

「iCloudドキュメント・ライブラリー」
（Documents in the Cloud）

　iOS製品とMacの連携の最たる例は、「iCloudドキュメント・ライブラリー」（英語でいうところの「Documents in the Cloud」）機能を使うことだ。

　Mac上で同機能に対応したアプリケーション、例えば「Keynote」を起動し、メニューから「開く」を選択すると図のようなダイアログが現れる。

「iCloudドキュメント・ライブラリー」

　このダイアログ、実はウィンドウ上部の「このMac内」という箇所をクリックすると、これまで通りの見慣れた「開く」ダイアログが現れる。

ウィンドウ上部の「このMac内」という箇所をクリックすると、「開く」ダイアログが表示される

　一方、左側の「iCloud」を選択した状態だと、iCloud上で、そのアプリケーション用に割り当てられたスペースに置かれた書類の一覧が表示される。

　過去に作成したKeynoteの書類などをこのダイアログにドラッグ＆ドロップすると、ファイルがMacのFinderからiCloud上に移動する（Finder上のアイコンは消える）。

書類などをドラッグ＆ドロップすると、MacのFinderからiCloud上にファイルが移動する（Finder上のアイコンは消える）

　そして、iPad／iPhone版KeynoteのiCloud対応バージョンから参照できるようになる（執筆時点では未リリース）。

　なお、MacのiCloud上ではいくつかの書類をひとつに束ねてフォルダー化することが可能だ。iCloud上の容量が少なくなってきたら、古いファイルをFinderにドラッグ＆ドロップ操作で移動（iCloud上のファイルは消える）させて、空きスペースを作ったりといった操作もできる。

アップルならではの
クラウドコンピューティング

　さて、仮に今日、どこかでプレゼンをする必要があるとしよう。資料をイチから作るのは大変なので、昔作った資料をベースに情報をアップデートしてプレゼンするという想定だ。

　あなたは、まず元となる資料をFinderで見つけて、それをKeynoteのiCloudドキュメント・ライブラリーのダイアログにドラッグ＆ドロップする（この時点でFinder上のファイルは消える）。

　しばらくするとダイアログのアイコンの下に雲のマークが現れるが、これはiCloudにアップロード中のマークだ。

　雲のマークが消えると、同じ書類をiOS 6対応機器でも参照できるようになるが、ここではとりあえず、画面サイズが大きく、物理的なキーボードも使えるMacで作業を続けよう。

　あなたは統計が出ているスライドを最新の数字に更新したり、今日のクライアントだけに宛てたスライドをいくつか追加するなど変更を加えると、間もなくクライアント訪問に出かける時間になった。

　移動中、iOS 6に対応したKeynoteを使ってiCloud上のプレゼン用ファイルを開くと、特別なことはまったく何もしなくとも、先ほど編集したばかりの最新スライドが表示される。それを見ながらプレゼンの内容を頭の中に叩き込むのもいい。途中で誤字を見つけた場合でも、iOS 6対応機器上で修正するのもたやすい。

　訪問先にはMacは持ってこなかったので、鞄からiOS 6デバイスを取り出し、Keynoteを起動してiCloudからプレゼン用資料を開く。すると、Macで用意し、移動中誤字を直した状態のファイルが表示されるので、これを使ってプレゼンを行なう。

　これらは、いずれもiCloud上に保存された同じファイルを開いている。Mac、iOS 6デバイスで同時に同じ書類を開いておくことも可能で、いずれかのデバイスで文字を直したり画像を入れ替えたりをすると、数秒後にはその変更がほかのデバイスの画面にも反映される。

　これぞ、アップルならではのクラウドコンピューティングの真骨頂だ。

　こうしたクラウドコンピューティングの機能をiOSとOS Xの双方がOSの根っこのレベルでサポートすることで、スマートフォンもタブレットもパソコンもアップル製品で統一したユーザーは、自分の状況／状態に応じて車のギアを切り替えるように、まったく違和感なくどのようなギア（デバイス）でも作業の続きができてしまう。

　思い出してほしい。これまでは、アップルが作っているMac同士でも、同様の連携をしようとした際、いちいちiTunesを起動し、そこに書類をコピーしないとiPad／iPhoneにスライド書類を転送できなかったのだから、これは劇的な変化だ。

　ただ残念ながら、他OSとの連携は、OS X Lionまでと同様にiTunes経由のままでとどまってしまう可能性が高い。Macの場合、OS X Mountain Lionが、根底レベルからiCloudに対応してくれたおかげで、まったく新しい時代に突入できたのだ。