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塩田紳二のWindows 8 IN-N-OUT 第13回

Windows 8はクラウドも使ってアプリの消費電力を減らす

2012年07月26日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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 Windows 8がターゲットとするフォームファクターのひとつがタブレットだ。タブレットは一般的にノートPCよりも小型だから、バッテリーを大きくすることは難しい。そのため省電力はWindows 8開発の大きなテーマだ。今回はWindows 8の省電力機能について取り上げよう。

Windowsが本格的に省電力を重視したのは
モバイルPCが主流になったVistaから

 WindowsがモバイルPCに本格的に対応したのは、2007年出荷のWindows Vistaからだ。それ以前のWindowsはデスクトップPC向けに開発されており、それにモバイル向けの機能を追加していた。そのため省電力機能は持っているものの、Windowsの内部は省電力の点から見れば、無駄の多い構成だった。

 例えば省電力に重要な仕様である「ACPI」は、Windowsがデバイスを管理するために、システムが持つデバイス構成情報を取得することが利用目的のひとつである。デバイスのオン/オフ状態の管理は「電力管理」ともいえるが、本来はデバイス構成情報のひとつに過ぎない。Windows 98でACPIが必須となった背景には、システムの電力管理を強化するというよりも、デバイスの管理に必要という側面が強かったのだ。

 少し昔話をしよう。かつてはプロセッサーメーカーも、デスクトップ向けのプロセッサーからモバイル向けプロセッサーを派生させて、基本的に性能重視で設計していた時期がある。インテルは386世代で、低消費電力の「386SL」シリーズを作ったものの、製造ラインの限界から、1990年代前半にSLシリーズを486世代で打ち切ってしまう。

 しかし、その後デスクトップ系のプロセッサーは、「Pentium 4」系列(NetBurstマイクロアーキテクチャー)から、「Pentium-M」で採用された「Banias」系列のプロセッサーに切り替わり、デスクトップも含むメインストリームラインを引き継ぐことになった(関連記事)。そのため、モバイル向けではあるものの、デスクトップ向けに性能も重視せざるをえなくなった。結局、根本から省電力に取り組んだ「真のモバイル用プロセッサー」は、2008年登場のAtomプロセッサーからとなる。

 かつてプロセッサーによる省電力は、最大消費電力と平均消費電力を抑える程度のものだった。バッテリーで駆動させるには、冗談としか思えない消費電力に達していたからである。しかし、バッテリーで動作可能な程度に消費電力を下げても、実用的な性能が出るようになったので、次にアイドル時の消費電力を下げることが目標となった。人間が直接利用するコンピューターでは、ユーザーの入力を待つアイドル時間が多い。プロセッサーの性能が向上すると、同じ処理でも実行時間が短くなる。つまり、その分アイドル状態に入る時間が長くなる。アイドル状態の消費電力を下げない限り、バッテリー駆動時間を延ばすことはできなくなったからだ。

 世界的に見ると、モバイルPCの比率がデスクトップPCを逆転したのは、2007~2008年である。日本では当時でもノートPCが6割を超えており、逆転が起こったのは2000年頃だ。そのため日本にいると、もっと早くにモバイルPCに切り替わったように思えるが、それが世界的な動きとなってOSにまで波及するには、さらに7~8年が必要だったのである。

Vistaで導入されWindows 7にも受け継がれている「Windowsモビリティセンター」

 モバイルPCへのWindowsの対応は、前述のとおり2007年にVistaが登場するまで、止まったままだった。Vistaでは、かろうじてモバイルPCを主要なターゲットとし、「Windowsモビリティセンター」のようなモバイル向けの機能を搭載したほか、電力管理の基本的な枠組み(電力プラン)を導入した。しかしVistaの時点でも、Windows自体の本格的な省電力対策を盛り込むまでには至らなかった。これを達成されたのはWindows 7である。Windows 7では、デバイス制御の方法やタイマー割り込み、サービスプロセスなどに改良を加えて、プロセッサーが長い時間アイドル状態を保つように改良された。

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