全く異なるミラーレス一眼の戦略
ミラーレス一眼におけるキヤノンの戦略は、これまでの一眼レフカメラやコンパクトカメラの戦略とは大きく異なる。
市場シェアで15%というのは一定の存在感を発揮する水準ではあるが、市場をリードするものではない。むしろ、キヤノンの戦略は、ミラーレス一眼カメラを切り口にして、一眼レフカメラへとシフトアップさせるという戦略が基本となりそうだ。
キヤノンマーケティングジャパンの川崎社長は、「キヤノンは、エントリークラスのEOS Kissシリーズ、本格的に撮影するミドルクラスの一眼レフ、プロやプロのようなこだわりをみせるユーザーへのハンエンドクラスの製品をそれぞれラインアップしている。EOS Mは、エントリークラスの位置づけとなり、これまでのEOS kissシリーズではカバーできない、新たな顧客層を狙う。このクラスで本当の写真の美しさ、写真の楽しさを追求することで、エントリークラス全体のボリュームを広げたい」とする一方で、「写真にはステップアップする楽しみもある。様々なサービスを提供し、より上位の一眼レフカメラへの需要を喚起することで、EOSのさらなる評価を高めたい」と語る。
また、キヤノンの真栄田常務取締役は、「ミラーレスだけを伸ばすのではなく、一眼レフカメラとミラーレスカメラの両方を伸ばしたいのが本音。最終的には一眼レフカメラの世界に来てほしい。それがキヤノンの一眼カメラの戦略になる」と断言する。
先行するメーカーが、ミラーレス一眼カメラを一眼カメラ市場における最重点製品と位置づけているのに対して、キヤノンは、一眼レフカメラへのステップアップのための製品と位置づけている点は大きな違いだ。だからこそ、価格面でも他社とは一線を画しても、高い画質を前面に打ち出し、ステップアップの際にも重視されるレンズのラインアップの強みを訴えたのだ。
カメラメーカーならではの提案が、ミラーレス一眼カメラ市場にどんなインパクトを与えるのかが、これからの注目点だといえる。
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