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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第161回

グラフで見るインテルCPUアーキテクチャーとプロセスの進化

2012年07月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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ムーアの法則が終わる?
難航する14nmプロセスの量産開始

グラフ4 プロセスルールと総トランジスター数の変化

 グラフ4は、プロセスと総トランジスター数の関係を比較をしたものだ。こちらも近似値を朱色の破線で示したが、比較的線形というか、微細化にともなってどんどんトランジスター数が増える傾向は、変わっていないことが再確認できる。

 グラフ4はグラフ3の逆であり、ダイサイズが大きく変わらないままにプロセスを微細化すれば、基本的にトランジスター数はどんどん増えていくことになる。現在で言えば、22nmプロセスのIvy Bridgeが14億トランジスターほどを搭載しているが、この調子で行くとSkymont世代の10nmプロセスでは、100億個に近いトランジスターを搭載するのではないかと思われる。その手前、14nmプロセスのBroadwell/Skylake世代では、30~40億トランジスターあたりになるだろう。

 もっともこれは、「ムーアの法則から必然的にそうなる」というよりも、「ムーアの法則を無理やりにも守るべく努力した結果としてそうなる」と評するのが、実情を正しく反映しているだろう。そろそろムーアの法則を守るのが、きつくなっているのは事実である。鳴り物入りで立ち上がった22nmプロセスも、現状はまだ歩留まりが高いとは言えない状況だ。そのため、ハイエンドのCore i7/i5は22nmプロセスに移行しつつも、メインストリームのCore i5はまだそれほど多く投入されていない。一番数量がでるはずのCore i3やその下のPentium向けは、依然として32nmプロセスの製品が投入されている状況である。

 直近のインテルのロードマップからすると、このあたりの製品が2012年末までになんとか「22nmに移行できればいいな」という印象で、まだインテルにも、全製品を移行しきる自信はないようだ。実のところ、第2世代のCore iシリーズと第3世代のCore iシリーズのソケット互換性が持たされた理由は、この22nm世代のプロセスの立ち上がりが不安だったので、22nmが遅れても32nmでカバーできるように、という保険の意味もあったらしい。その保険がバッチリ効いている、というのが昨今の状況である。

 さらに厄介なのは、2013年に予定されている14nmプロセスである。9月には開発者向けイベント「IDF 2012 San Francisco」が開催されるので、そこである程度は情報のアップデートがあると思われる。とにかくこの14nmが、「本当に2013年に立ち上がるのか」は、非常に疑わしい状態である。試作に関しては比較的好調なようだが、問題なのは量産の際の露光である。

 インテルは14nmの世代で、従来の「ArF(フッ化アルゴン)レーザー+液浸露光技術」の組み合わせに代えて、「EUV」(極端紫外線露光技術)を利用すると見られている。だが現状では、EUVでArF+液侵と同じ処理速度を実現しようとすると、「露光装置の台数が5倍必要」という状況である。高価な露光装置を5倍も設置はしないだろうから、そうなると処理できる枚数が大幅に減るのではないかと、噂されているわけだ。

 EUVの処理能力が向上するまでには、もう少し時間を要しそうだ。そうなると、必然的に14nmの量産開始もさらに遅れるだろうとされており、いよいよムーアの法則が維持できなくなるのではないかと考えられる。

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