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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第99回

日本のネットシーンに天才現る――M.Kitasonoの衝撃

2012年07月07日 12時00分更新

文● 四本淑三

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曲のストックは無尽蔵

カザミドリ(シティ・ポップ風) by M.Kitasono

―― でも録音環境がないと、そろそろ上げる音源もなくなりませんか?

M.Kitasono いくらでもあるんです。何でもというのであれば、300は下らないですね。そのうち弾き語りのデモが150くらい。あ、あとは打ち込みが300くらいあります。それと楽譜に書いたまま音源にしていないものもあるので。全部で何曲あるか分からないですが。

―― じゃあいい手を思いつきました。楽譜を公開して「誰か音源にしてください」という手法はありえますか?

M.Kitasono 面白いですね。過去にアレンジャーになりたいと思っていたことをいま思い出しました。

―― ohm studioというクラウド型のDAWがあるんですけど、一つのプロジェクトに対して、いろんな人がトラックを録音したり編集したりできる。

M.Kitasono すごい!

ohm studio。1つのプロジェクトを寄ってたかって編集できるソーシャルDAW

―― 楽譜を渡して他人に演奏して録音してもらえば、KitasonoさんはDAWの画面を見ながらミックスすればいいんです。

M.Kitasono 未来みたいですね。検討します。


自分の理想とするものと同一化したい

南園前衛「透明な餅ときなこ餅の憂愁」 by M.Kitasono

―― いまネットに上がっている音楽は、ご自身の採点としてはどうなんですか?

M.Kitasono 60点くらいですね。

―― ということは伸びしろがまだ40点くらいある?

M.Kitasono そう考えるともっと低いかも知れません。音にしてもアレンジに関しても何か足りない気がするんですね。それと演奏技術ですね。ベースはジャコ・パストリアス、ギターはパット・メセニー、歌はマーク・マーフィー。とにかく自分の理想とするものと同一化するくらい楽器を演奏できるようになりたいです。

Image from Amazon.co.jp
ジャコ・パストリアスの肖像+2

―― するとDAW上でスーパー・セッション状態になるわけですね。うまいジャズミュージシャンが好きなんですね。

M.Kitasono ジャコに関しては技術と言うよりも頭の使い方が。あれほどの技術と音楽のセンスが両方とも備わっているベーシストは、ジャコ以降にはちょっと思いつかないですね。頭も彼は賢いですし、それにも増して美しい、センスのいい音楽という要素が絡んでくるので、特別なんです、彼は。

―― でもジャコみたいに早死しますよ、あまり理想を追求すると。

M.Kitasono よく言われます。君は早死するタイプだねって。

―― 歌詞やタイトルも変わっていますけど、作詞面では?

M.Kitasono 風景描写が好きなので。カポーティとかそういう作家が。まるでそこにいるような気分になるのが好きなんです。

Image from Amazon.co.jp
カバンのなかの月夜―北園克衛の造型詩

―― ハンドルネームのM. Kitasonoというのは、北園克衛(Wikipedia)からですよね?

M.Kitasono もちろんそうです。とても好きです。特に1951年発表の『黒い火』以降が好きなんですけど。子供の頃に帰れる気分ですね。シンプルにものが配置されている単純な世界。感覚だけが入ってくる感じが。

―― Kitasonoさんの曲を聴いて、大抵の人が感想として大滝詠一とか細野晴臣の名前を挙げるわけですが、聴いたことはありますか?

M.Kitasono ティンパンアレイのベスト盤と、細野晴臣さんのファーストは聴きました。聴いたのはだいぶ後になってからなので。日本にもこういう音楽があったのかという感じです。

―― Kitasonoさんの声質で、ジャズっぽいアプローチのポップソングをやると、あの線に寄ってくるわけですよね。あと言われがちなのはキリンジ。

M.Kitasono 日本でAOR臭いのをやっていると、みんなキリンジって言われるんです。

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