NEC PCの開発者はとがった製品の開発に着手
一方、合弁前のNECパーソナルコンピュータでは、市場成長が停滞する日本の市場に特化したことによって、年間出荷台数が減少。さらに価格下落が進展するなかで、これが売上高の縮小に直結。それにも関わらず全方位型のビジネスを推進しなくてはならない国内トップメーカーとして取り組みを維持したことで、収益性が悪化。結果として、挑戦的な製品の開発などに遅れるという課題が出ていた。
しかし、レノボ・ジャパンとの合弁後、NECパーソナルコンピュータが置かれた環境は大きく変化した。
世界第2位という年間出荷規模を誇るレノボグループの調達力を背景に、コスト構造の変革に成功。ここで浮いた費用を、戦略的投資に回すといったことができるようになった。
NECパーソナルコンピュータが、2012年1月から電話サポートの使い方相談を無償化したり、無償修理の一日対応を実現するといったサポート体制の充実を図ることができたのも、新たなコスト構造のなかでの成果によるものだ。
そして、同社初のUltraBookである「LaVie Z」の開発についても、NECパーソナルコンピュータの高塚栄社長は、「NECパーソナルコンピュータが独自に開発してきたものだが」と前置きしながらも、「合弁で得たものを製品に再投資した成果。レノボとの合弁がなければ実現できなかった製品」と語る。
世界初となるマグネシウムリチウム合金を本体底面に採用。天板のマグネシウムダイカストとの組み合わせによって、13.3型液晶ディスプレーを搭載しながら約875gの軽量化を実現。「ひとまわり小さい11.6型液晶ディスプレーを搭載するUltrabookでも実現できていない異次元の軽さを達成した」と胸を張る。
当初の公表値は999g以下だったが、この時点で、本体重量を当てるクイズを実施。正解者の中から3人に、LaVie Zをプレゼントするという発売前キャンペーンを実施したが、応募した約7000人の多くが999g近くのところに応募していた。その点からも、875gという重量は、いい意味でユーザーの期待を大きく裏切るものになったといえよう。
マグネシウムリチウム合金は軽量かつ高剛性の合金で、一般的な軽量パソコンの筐体に使用されているアルミニウムの約50%、マグネシウムの約75%の比重を実現する
高塚社長は、「米沢事業場の開発陣は、もともと強い開発力を誇っているが、ノートで3機種、デスクトップで2機種というように、売れ筋製品ばかりを開発してきた。開発した製品は日本ではナンバーワンのシェアではあるが、技術者としては世界一のものを作ってみたい、作らせろという想いがあった。LaVie Zは、それならば、世界一のものを作ってみろという技術者のやる気が結実したもの。技術者が目指したのは、Ultrabookというなかでの世界最軽量。日本の技術を世界にアピールする上で、いい製品ができた」とする。
LaVie Zで開発者が追求したのは、「軽くなるためのことならすべてを試してみる。そして、重くなることがあれば、どうしても必要なこと以外はやらない」というものだった。
たとえば、色付きのパーツを使うことで1グラムでも重量が重くなるのであれば、それはやめてしまうというような判断が、社内では下されたほどだ。
つまり、万人受け狙った無難な製品ばかりが投入されていたここ数年のNECパーソナルコンピュータにとって、久しぶりに、開発者が尖った製品の開発に真剣になって挑んだものだともいえるだろう。
「安心、安全、快適というNECが目指す方針は変えない。これは社内ではAKKと呼んでいる。そして、製品面でももっとイノベーティブな製品がほしいという要望にもきちっと答えていく。ワォ、といってもらえる感動を与える製品を出していきたい」と高塚社長は語る。
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