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最新ヘッドホンでミュージック・ライフを向上しちゃおう! 第1回

ヘッドフォンに新素材! カーボンナノチューブから木材まで

2012年07月02日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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世界最大の70mmドライバーユニットを実現
その決め手は高音域の再現だった

「EXTRA BASS」(XB)シリーズ最上位モデルとなる「MDR-XB1000」

「EXTRA BASS」(XB)シリーズ最上位モデルとなる「MDR-XB1000」

「MDR-MA900」の70mm口径ドライバーユニット

「MDR-MA900」の70mm口径ドライバーユニット

 続いて、同じくソニーから70mm口径のドライバーユニットを開発した松尾伴大氏(ソニーエンジニアリング株式会社 設計2部1課)の話を聞いた。これは、重低音ヘッドホンシリーズの最上位である「MDR-XB1000」(実売価格2万円前後)や、オープンエア型の「MDR-MA900」(実売価格2万1000円前後)に採用されている。

筆者の質問に答える松尾氏

筆者の質問に笑顔で答える松尾氏

 スピーカーの例を出すまでもなく、ドライバーユニットの口径が大きいほど、低音再現には有利になる。しかし、苦労したのは実は中高域の再現だったという。

 松尾:「ソニーのドライバーユニットの口径はそれまで50mmが最大でしたが、さらなる大口径化は1990年代からトライはしていました。やはり振動板の口径が大きいほど低音の再現は有利になりますから。しかし、低音が出るようになると中高域が埋もれて聞こえなくなってしまいます。苦労したのは実は高域ですね。シミュレーターによる振動板の形状の解析などを使って、十分な高域特性も確保できるものがようやく完成したわけです」

 振動板を大きくすると、重量も重くなるのは当然。それを駆動する磁気回路も大きく重くなるので、ヘッドホンとしては使いにくくなる。音はいいけど重いのでは長時間の音楽鑑賞の負担になる。このため、磁気回路の設計にも苦労したそうだ。なお、振動板の素材は一般的なPET系のフィルムを使用し、厚みや断面形状を最適化することで実用化している。

 重低音が自慢のXBシリーズも1号機のMDR-XB700では50mm口径のユニットを使っていたが、最上位モデルとして70mmユニットを搭載したXM1000になると、低音域の出方は明らかに違っていたという。

 松尾:「MDR-XB1000は、70mmユニットの搭載を含めてかなり開発には苦労したモデルです。低音再現ばかりでなくトータルの実力も高くなっているので、ぜひ一度試してほしいですね」

頭を包みこむような自然な広がりのある音を再生できるという「MDR-MA900」

頭を包みこむような自然な広がりのある音を再生できるという「MDR-MA900」

 なお、同じ70mmドライバーユニットを使ったモデルとしては、音楽鑑賞用とも言えるMDR-MA900もある。両方を聴いてみると、これが面白いくらい音が違う。

 MA900は余裕のある低音再現はあまり前に出ず、むしろ中高域の高解像な再現が印象的なモデルだ。ユニットの特性の良さを活かした作りと言えるだろう。開発に苦労しただけあって、いろいろな使い方のできるユニットのようだ。

 XBシリーズの話に戻ると、元々ダンス・ミュージックを意識したモデルだけあって、今後はフロアでズシンと響くような低音の再現を目指したいという。もちろん、低音が鳴ればいいだけでなく、トータルでの実力も高める必要があるだろう。

 松尾:「ダンス・ミュージックは次々に新しい曲が出てくる流行のジャンルですから、最新のクラブ・シーンのトレンドなども意識して製品づくりに活かしたいと思います。最新のヒット曲が求める音にぴったりと合うものを作りたいですね」

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