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マイクロソフト・トゥディ 第3回

30周年を迎えた、「マイクロソフト マウス」の挑戦

2012年06月27日 11時00分更新

文● 大河原克行

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デザインに込められた意味、コンセプト

 このほど来日したKENZO MINAMI氏は、日本マイクロソフト本社において、招待された約30人のユーザーなどを対象に、「super pedantic -KENZO MINAMIの衒学的世界-」をテーマにトークセッションを行なった。

自らデザインしたマウスを持つKENZO MINAMI氏

 これまでの作品を紹介しながら、作品に込められた意味やコンセプトなどについて解説。今回のマウスのデザインについても触れた。

 「これまで200種類以上のTシャツをデザインしたが、その意味を知らずに着ている人も多い。それでも、私はいいと思っている。また、その意味に偶然気がつく人がいたり、それを見たほかの人が指摘し、コミュニケーションが生まれることもある。見る人ごとに感じるものが違うという楽しみもある」とする。

 KENZO MINAMI氏は、デザインの中に多くの情報を埋め込むという手法をとる。情報は、事象や人であったり、意外なところでは音楽や病名、素数などと多岐に渡る。

 デザインに多くの情報を入れる一方、これらを理論的に組み上げ、メッセージ性を持ったコンセプトに作り上げ、その上で“大枠”となるものを取り払うことによって、デザインが生まれるというのが、氏に見られる手法だ。そして、KENZO MINAMI氏は、この大枠の部分を「足場」「鋳型」という言葉で表現する。

 「今回のマウスのデザインでは、あえてその足場を残した。生産工程でいえば、バリの部分を削らずに残したようなもの。人間と機械の融合によってどこまで行けるのか、無限の広がりといったものを表現している」とする。

 コネクション、ネットワーク、あるいは「つながり」をコンセプトに、マウスを人とPCとの接点と捉え、それを利用するユーザーの手の骨組みの構造や、神経組織によるネットワークを表現する一方、建築物の鉄骨構造、飛行機の翼の構造、ダイヤル式電話の造形などを融合させ、今後の成長を予感させる未完成の形を描いたという。

 KENZO MINAMI氏は、「マウスは“キャンバス”が小さい。だからこそ、デザインは完結したものにはしないでおこうと考えた。先が広がっている、その先に何があるのだろうという出発点だけを見せたデザイン。こじんまりさせないデザインを心がけた」と明かす。

 デザインの中には「無限性」といったメッセージが込められているという。

 その一方で、KENZO MINAMI氏はこんな風にも語る。「いろいろとデザインについて語ったが、日本のユーザーには、意味合いとかは気にせずに使ってほしい。敷居の高いデザインではなく、日常生活に溶け込んで、さりげなくあるのが一番いいと思っている」。

 そして、笑いながら、続けてこうも語る。「だけど、このデザインが溶け込む日常生活とはどんなものなのか、という疑問もあるけど……」。

 確かに、ぱっと見には生活には溶け込みにくいデザインかもしれない。だが、PCの横に置くと、日常生活のなかでも溶け込みやすいのかもしれない。

 「今後は、マウスをオブジェとしてみせるようなデザインにも挑戦してみたい。マウスとして格好いいもの、というだけに留まらず、机の上に置いているだけで格好いいものをデザインできそうだ」。

 KENZO MINAMI氏が、オブジェの対象としてマウスを捉えると、どんなものができあがるのか、興味深い。


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