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米HPのパソコン・プリンター事業トップが語る、2012年のPCとイメージング事業

2012年06月26日 06時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 6月25日、米ヒューレット・パッカード社でプリンティング&パーソナルシステムズ(PPS)事業を担当する、トッド・ブラッドリー上級副社長が来日し、都内で記者会見を開催した。HPは3月にプリンター(イメージング)事業のIPG(Imaging Printing Group)とパソコン事業のPSG(Personal System Group)を統合。ブラッドリー氏は2005年からパソコン事業を統括してきた人物で、現在はPPSの責任者となる。

米ヒューレット・パッカード PSS事業担当の上級副社長、トッド・ブラッドリー氏(右)と日本ヒューレット・パッカード 取締役 副社長 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の岡 隆史氏(左)

部品調達を効率化し、安定した投資を確保

 HPはメグ・ホイットマンCEOのもと、「セキュリティー」「クラウド」「ビッグデータ解析」(Autonomy)の3つを事業の柱に据え、ハード、ソフト、サービスを組み合わせたインフラプロバイダーとしての足場を固めている。PPSの事業もその延長線上にあるが、特に“Create Connected Environment”(接続された環境の創出)をキーワードに、コンテンツを作り、蓄え、活用する環境を整えようとしている。

2月にラスベガスで実施されたGPC 2012で初めて公に姿を見せたメグ・ホイットマン氏は、ハードを含むインフラ事業からの撤退を否定。全世界のパートナーに対して、そこがHPの核であると再定義した

 これまでもHPは、クラウドを活用してPC以外のデバイス(タブレットやスマートフォン)から印刷を可能とする“ePrint”や文書管理ソリューションなどを展開してきた。同時にインクジェットプリンターを導入することでコストを下げ、生産性を上げるといった取り組みを小規模オフィス向けに展開したり、電子と紙の融合を進め、オフセット印刷が適さない少部数のチラシなどを効率よく作成できるオンデマンドソリューションを展開するといった施策を進めている。

 一方パソコン事業ではENVY 14 Spectreを始めとしたUltrabookに注力。薄型でバッテリー駆動時間が長く、機能に優れた製品の開発を進めてきた。また年末に登場するWindows 8に関しては、発売と同時に対応製品を投入する計画で、5月に上海で披露した最薄クラスのUltrabookや、POSなど特定業種に向けたユニークなWindowsマシンなどを市場投入していく。

携帯性に優れたビジネスPC「EliteBook 2170p」

Officejet 150。3kg前後と非常に軽量なMFP

 会見に同席した日本ヒューレット・パッカード 取締役 副社長 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の岡 隆史氏は国内における主軸が法人向けPCである点に言及したうえで、SMBおよび大企業向け製品のカバー範囲を広げるとともに、シンクライアント、仮想化、POS端末、MultiSeat Computingなどソリューションを拡張。11.6型のビジネスノート持ち運べるMFP(複合機)など、新しい領域へのリーチを拡大していく意向を示した。また、国内で年間5兆枚と言われるプリンティング市場において、オフセット印刷機が占める割合は4.3兆枚と大半を占めているとし、パソコン事業との統合効果も視野に入れながら、この分野に積極的に働きかけていきたいとした。

 パソコン事業とプリンター事業の統合の具体的なメリットとしては、部品調達の効率化や、営業面でのシナジーなどが挙げられるが、ブラッドリー氏はこれが余裕を持った投資ができる土壌を育くみ、「製品開発における革新」を加速させるとする。

 熾烈な競争が存在する業界で勝ち抜くためにはコンテンツを作成し、活用できる強いプロダクトが必要である。同時に単純なコスト効率だけでなく、開発した商品が量産され市場に出て行くまでの時間の短縮(Time to Market)という点でも、優位性を追求していく必要があるというのが同氏の考えだ。

主にビジネス分野でWindows 8搭載タブレットを計画

 ブラッドリー氏は、動きが早く、利益率も減少する中でアグレッシブな成長を志向するパソコン事業は“ビジネスイノベーション”を追求してきた一方で、イメージング事業は活用提案を軸にした“インダストリーイノベーション”を狙ってきたとする。その上で企業としてより高い効率を目指していくためには、事業統合を通じてこの異なる2つのイノベーションを統合していく必要があると述べた。

マイクロソフトが開発を表明したSurface

 会見では米マイクロソフトが自社で開発することを表明したWindows 8搭載タブレット「Surface」について苦々しく思う点があるのではないかという質問も飛んだが、ブラッドリー氏は「特定のプロダクトについてフォーカスすることはしない」と取り合わなかった。またAndroidタブレットを始めとした非Windowsのスマートデバイスに取り組むかどうかという質問には「携帯電話という点ではない」と答え、「フォーカスはあくまでもコンピューティングプロダクトであり、タブレットは視野に入れているが、現時点で発表しているのはWindowsの製品だけである」とした。

 全世界のタブレット出荷台数は2012年に年間1億台に迫るという調査会社の予測も存在するが、一方でパソコン自体の出荷台数は3億8000万台程度と成長はしているもののその割合は鈍化している。このような状況を鑑みてパソコンメーカーの大半は自社のラインアップにAndroid搭載のタブレットを持っているが、HPは昨年webOS事業から撤退。空白のラインアップとなっている。

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