TR25200シリーズで世に出る……はずが
1995年にBitBoysは、同じくフィンランドのVLSI Solutions社とパートナー契約を結び、「TR25200」シリーズの3Dグラフィックチップを完成させる。最初に登場した「TR25201」は、5000万ピクセル/秒の描画性能と、100万頂点/秒のT&Lエンジンを搭載。200MHzのRAMDACを内蔵するという、登場時期を考えるとかなり有望なグラフィックチップであった。この時期はまだDirect 3Dすらないので(DirectX 1.0が「Microsoft Game SDK」として発表された頃)、対応APIは当然OpenGLである。
だが、このTR25201はかなりバグが多く、性能はともかく画面がまともに表示されないという致命的な問題を抱えていた。これを修正したチップが、「TR25202」~「TR25204」となる。最終的にTR25204では問題のほとんどを解決するとともに、VGA互換コアを搭載するに至る。
このTR25200シリーズのチップは、TriTech Microelectronics社により「Pyramid3D」というグラフィックスカードに採用されて、1997年6月に発表される。発表の場はマイクロソフトのゲーム開発者向けイベント「Meltdown '97」の会場であり、ここで「Direct3D 6.0」に対応したバンプマッピングのデモを披露するという、なかなかインパクトのあるデビューであった。ちなみに、この時のデモに使われたのはTR25202である。
ところがこのPyramid3Dは、思わぬ理由から闇に葬り去られることになる。TriTechはこの当時、Pyramid3Dとは無関係の特許論争に巻き込まれており、これに敗退してしまっていた。これによる賠償金はTriTechを立ち行かなくするには十分であり、その結果Pyramid3Dは製品化が行なわれる前に、葬り去られることになってしまった。
次世代アーキテクチャー XBAで再起を図るも
バグ取りで難航しているうちに出遅れ
幸いに……と言うべきかどうかはともかく、BitBoysはTR25200シリーズの基本設計が一段落した段階で、TR25200シリーズのバグフィックスと平行して次世代グラフィックチップである「XBA」(Xtreme Bandwidth Architecture)の開発を始めていた。このXBAは、コアが150MHz動作ながら内部は512bit幅と極めて広帯域で、最大9MBのエンベデッドDRAMと接続して6億ピクセル/秒のピクセルフィルレートを実現するという意欲的なものだった。
やっかいなのは、これを製造できるファウンダリーが限られたことだ。当初はエンベデッドDRAMを使わずに、RAMBUSのRDRAMを使った設計なども考慮していたようだが、最終的にはエンベデッドDRAMの技術を持っているということで、Infineon Technologies社の0.2μmプロセスを使うことになった。
ここで問題になったのは、BitBoysにはグラフィックチップの設計に熟練した人材が足りなかったことだ。TR25200シリーズのときは、チップのコア部分設計をVLSI Solutionsに、メモリーコントローラーを初めとするバックエンド部分はTriTechに作業分担してもらうことができたが、Infineonは純粋に製造のみの契約だったようで、結果として「Glaze3D」という名称になったXBAコアの開発は、2001年までずれ込むことになった。
実はチップそのものは2000年に完成しており、DirectX 7対応のGlaze3Dがすぐ出荷できれば、また違った話になったのだろう。ところがTR25200ファミリーの時と同じくGlaze3Dもまた多数のバグがあり、これを解決するのにかなりの時間を要した。そのため、気がつくと2001年になってしまっていたというわけだ。
しかも、その前年である2000年11月に、マイクロソフトは「DirectX 8.0」をリリース、2001年になるとWindows XPが「DirectX 8.1」を搭載してリリースされており、Glaze3Dは製品リリース前に出遅れになることが明らかになってしまった。
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