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ネットワークの祭典「Interop Tokyo 2012」レポート第6回

ジュニパーCTOが語るOpenFlow対応の戦略と覚悟

SDNは“破壊的な革新を受け入れる”ことで実現する

2012年06月15日 09時00分更新

文● 渡邊利和

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6月14日、幕張メッセで開催中のInterop Tokyo 2012の基調講演としてジュニパーネットワークス プラットフォームシステム部門最高技術責任者(CTO)のマイケル・ビーズリー氏が講演を行ない、SDN/OpenFlowに対する同社の取り組みについて説明を行なった。

“The New Network”とSDNの融合

 マイケル・ビーズリー氏はまずSDN(Software-Defined Networking)の基本的な説明と、それが登場した背景から話を始めた。ストレージ/サーバーの仮想化が進行し、柔軟でダイナミックな負荷管理が実現できるようになったが、この動きにネットワークが取り残された形になっており、“レガシーネットワーク”とまでいわれるようになってしまっている。既存のネットワークが抱えている複雑さとコストの問題を解決するための新しいアプローチが必要とされている。

米ジュニパーネットワークス プラットフォームシステム部門最高技術責任者(CTO) マイケル・ビーズリー氏

 ジュニパーでは、こうした課題に対する同社独自の取り組みとして、同社のネットワークOSであるJUNOSをベースとした“The New Network Platform Architecture”を掲げている。そのメリットとしては、「仮想化により初期コストを削減」「オートメーションにより運用コストを削減」「ネットワークの進化を加速」という3点が挙げられている。一方、SDNの目指すところもこの3点であり、同じ目標に向かう異なるアプローチ、という関係になっている。そこで同社では、この両者を統合する形でSDN/OpenFlowに積極的に取り組む戦略を採っている。

同社のコンセプト“The New Network”は、SDNと同じ目標を目指しているのだという

 同氏は、現時点でのOpenFlowがOpenFlowコントローラーとOpenFlowスイッチの間のやりとりに注力していることを指摘した上で、同社ではOpenFlowコントローラより上位の「ビジネスプロセス/ワークフロー」や「アプリケーション」といったレイヤーの拡充にも積極的に取り組んでいくとした。

現在のOpenFlowは、SDNが必要とする要素のうちの物理層に近い部分をカバーしている

SDNのコンセプトを完成させるためには上位のアプリケーションレイヤの拡充が不可欠であり、JUNOS等の同社の機能が活きる部分でもある

 OpenFlowでは、従来のネットワーク機器の機能を“コントロールプレーン”と“データプレーン”に分離し、スイッチの役割はパケットを転送することだけに単純化。パケットをどこに転送するか、といった指示はコントローラから行なう、といったアーキテクチャを採っている。これは、ネットワーク機器のコモディティ化を推進するアプローチであり、“安価なスイッチでネットワークの足回りを構築し、高度な機能はすべてソフトウェアで実装する”ということでもある。つまり、現在のネットワーク機器ベンダーにとっては高付加価値に繋がる部分はすべてハードウェアから切り離され、ハードウェア製品は「コモディティ化による」価格の大幅な下落を受け入れなくてはならないということをも意味する。

同社のアーキテクチャと、SDN対応のための機能群

 こうした認識を踏まえてか、同氏は「SDNのリーダーに求められるもの」として、「幅広いネットワークドメインの経験」と「破壊的な改革を受け入れること」の2点を挙げた。前者は、“現状のネットワークがどのようなユーザーにどのように使われているかを熟知し、必要な機能を実装できる”といった主に技術面での能力を意味し、後者は“従来のビジネスモデルに固執するのではなく、積極的に変化に対応していく”といった企業文化に関するものだ。その上で同氏は、この2つの条件を満たすのは現状同社のみだとした。製品面では、2013年中に同社の主要製品ファミリー(MX/EX/QFX)でOpenFlow 1.3に対応していくことも表明された。

ジュニパー自身がNorthbound APIの開発注力

 基調講演の後でプレス向けのQ&Aセッションも行なわれた。その席で同氏は、現状のONFがOpenFlowコントローラーと上位のアプリケーションレイヤを接続するための“Northbound API”の標準化に関してまだ確固たる方針を打ち出していないことに触れ、「SDNの本来のメリットを享受するためには、適切な抽象度を備え、パワフルかつオープンなNorthbound APIが標準化されることが不可欠だと考えている」と語った。同氏は、Northbound APIの標準化が行なわれなかった場合、現状のネットワーク機器によるロックインが、OpenFlowコントローラ上のアプリケーションによるロックインに置き換わるだけ、とも指摘した。その上で、同社が今後オープンで安定したNorthbound APIの開発に注力していくと明言した。

 さらに、OpenFlowをベースとしたネットワーク環境が普及し、すべてのレイヤがオープンなAPIで接続できるようになった場合には、同社自身がコモディティスイッチに対して汎用的なネットワーク・アプリケーション・ソフトウェアを提供する“ネットワークアプリケーションベンダー”に転換せざるを得なくなるのでは、と聞いたところ、同氏は「その可能性もないとはいえないが、考えてみればジュニパーは設立当初からソフトウェアの企業だったのだとも言える」との回答だった。JUNOSを中核としたソフトウェアが同社製品の競争力の源泉であることは確かにその通りだろう。また、同社自身がSDNの普及によって引き起こされるである「破壊的な革新」の影響を受ける立場であることも織込み済みということでもあるようだ。

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