四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第97回
神戸在住のトラックメーカー・tofubeatsに聞いた
関西は「もうなくなりそう」、風営法で危機に瀕するクラブシーン
2012年06月16日 12時00分更新
「インターネットだから余計に言わなければならない、
自分の居場所を」
―― それがメジャーな方面に注目されるようになったのは?
トーフ 高校3年になった頃から、急に大人にフックアップされだしたんです。勝手に作ってYouTubeに上げたリミックスを、本人に聴かれていて。
―― サイプレス上野とロベルト吉野の曲ですね。あれはどういった経緯だったんですか?
トーフ DJやけのはらさん経由で本人に届いて、本人から「レコードを出すからこのトラック入れさせてよ」って。そして、いきなりWIRE'08に出ろという話になって。そこで初めてマルチネのtomadさん、山形のイミジクモくんと会ったんですよ。もう亡くなってしまったんですが、滋賀のimoutoidくん※とも。
※ imoutoid : 日本のネット音楽界に現れた最初の天才。14歳、「ファミコン宇宙人」名義で活動を始め、DTMからSuperCollider(音響合成言語)に至るまで多彩な才能を発揮し、新世代のアーティストとして将来を嘱望された。2009年4月に18歳で亡くなっている。死因は心不全。
―― 初めて人前でDJをやったのはいつですか?
トーフ 今一緒にやっている、オノマトペ大臣※というのが某国公立大学の学生で、その大学の文化祭が最初です。現場だと、やけのはらさんが出る京都のイベントがあるから出なよって言われて。その頃はまだ、次の人にどうやってつなぐのか分かってなくて、音を止めて「ありがとうございました!」って。超恥かいたの覚えてる……。
※ オノマトペ大臣 : 現在は会社員のラッパー。マルチネでのリリースには「街の踊り」がある。
―― それはいい逸話です。それにしてもダイナミックに時代の推移を体感してきたわけですね、まだ若いのに。
トーフ 僕らは自分たちでよく言っているんですけど、ケータイ世代とそれ以前の世代との間なんですよ。僕らより下は携帯でしかネットをしないし、僕らより上は「インターネット=パソコン」みたいな話になると思います。89年から91年生まれくらいは、どっちにも通じる感覚を持っているピンポイントな世代だと思っていて。
―― やっぱりネットは大事?
トーフ 地方にいることもあって、ネットに曲を上げないと、誰もオレの名前なんて知らないわけですよ。インターネットをどう使うかは、他の人達よりはあざとく考えていたと思っていますし、それがずっとテーマだったので。ネットというのは東京の盛り上がりがダイレクトに伝わってくる一方で、いかに田舎に人がいないかを伝えるツールでもある。だから僕は「神戸、神戸」って超言うんですよ。インターネットだから余計に言わなければならない、自分の居場所を。