Windows 8と“Ready PC”
本コラムの第1回で、Windows 8では“Ready PC”が用意されない可能性を指摘したが、現時点でもその方向性には変化がないようだ。
Ready PCは、現行OSを搭載したPCのうち、そのまま次期Windows OSへ移行しても快適に動作するスペックを有した製品であり、新OS発売前の買い控えを防ぐという意味もある。Ready PCのほかに、Capable PCという名称で呼ばれた時期もあった。
かつてのWindows新バージョンの発売を振り返ると、Windows XPでは、「Windows XP Ready PC」が用意され、Windows 2000 ProfessionalやWindows Millennium Editionを搭載したPCからの移行を促した。Windows Vistaでは、「Windows Vista Capable PC」「Windows Vista Premium Ready PC」をPCメーカーとの連携によって用意。Windows Vistaで一気に高まったスペック要件をカバーする製品であることを訴求した。
Windows 7でも、企業向けPCにおいて「Windows 7 Enterprise Ready PC」を用意。Windows 7の企業向け上位エディションであるWindows 7 Enterpriseを快適に利用できるように動作検証を行ない、「Enterprise Ready」マークを取得したPCとして、NEC、日本ヒューレット・パッカード、富士通、パナソニック、エプソン、レノボのPCメーカー各社から発売された。
では、なぜWindows 8ではReady PCが用意されないのか? 理由を一言でいえば、その必要がないからである。
Windows 8の開発責任者であるスティーブン・シノフスキープレジデントは、「Windows 7が動作しているすべてのPCは、Windows 8が動作する」としている。Windows 8は、Windows 7向けPCでそのまま動作することが前提なのだ。
もちろん、Windows 8の特徴のひとつであるマルチタッチ機能などは、それぞれのハードウェアの要件に影響される。Windows 8で新たに用意された新機能がすべてのWindows 7搭載PCで使えるわけではない。しかし、基本的な機能であれば現行PCのスペックで十分動作する。Atom搭載PCであっても、Windows 7が動作するのならWindows 8も同様に動く。
また、機能が豊富になっていることや、PCメーカーが製品ごとに機能を特化させ、用途を明確に想定したPCを登場させており、これらをReady PCとして認定することが難しいという背景も見逃せない。Windows 8では、メトロと呼ばれる新たなユーザーインターフェースを採用しているだけに、Ready PCやCapable PCを用意すると、それ以外のPCではWindows 8が動作しないという誤解を与える可能性もある。
そこで日本マイクロソフトは、Ready PCは用意しないという方針を決めたのだ。
「Windows 8優待購入プログラム」キャンペーンを
世界規模で展開
その一方で、マイクロソフトおよび日本マイクロソフトは、早くもWindows 8に関する販売キャンペーンを世界規模で開始した(関連記事)。これは「Windows 8優待購入プログラム」と呼ばれるもので、2012年6月2日以降、2013年1月31日までの間にプログラムの対象となるWindows 7搭載PCを購入したコンシューマユーザーに対して、1200円の優待価格で「Windows 8 Pro」を提供するというもの。これは、世界131カ国で展開している世界規模のキャンペーンに日本も参加した格好だ。
Windows 7の時には6月下旬からスタートしたが、今回はそれよりも3週間ほど早い。Windows 8発売前の買い控えを抑えるという役割を果たすことになりそうだ。
日本マイクロソフト独自のキャンペーンは?
ところで、日本マイクロソフト独自のキャンペーンについては、現時点ではまだ公表されていないが、発売直前になれば何かしらの施策が打たれることになろう。また、今後数ヵ月の間に、Windows 7搭載PCを所有しているコンシューマユーザーに対しても、Windows 8の優待購入をサポートするプログラムを提供する予定であることを明らかにしている。今後、どんなキャンペーンが用意されるのかにも注目したい。
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