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活用しよう!マイクロソフト パートナーネットワーク 第1回

専門分野がエンドユーザーにわかるコンピテンシーの仕組み

マイクロソフトのパートナーはなぜビジネスを拡げられるのか?

2012年06月25日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元 
記事協力●日本マイクロソフト

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国内において、IT系の商材はパートナーを経由して販売されることがほとんどだ。こうした中、ITベンダーはパートナーの販売を支援すべく、それぞれパートナー施策の強化に力を入れている。変化の激しいビジネス環境で勝ち抜くため、日本マイクロソフトでもパートナー制度の「カイゼン」を進めているという。

マッチング不全に陥るエンドユーザーとIT業者

 会社で業務アプリケーションを導入したり、IT面での課題を解決しようと考えたとき、情報システムや総務の担当者はどのようにIT業者を選定するのだろうか? 通常は出入りの業者に情報収集を依頼するか、インターネットで製品情報を調べて、導入や運用をおねがいできるIT業者を探すことになるだろう。とはいえ、個人向け製品のように価格比較サイトで一番安い店にオーダーするというわけにはいかない。会社で導入するわけだから、やはり企業としての信頼性を重視したいし、導入したいアプリケーションやソリューションについて実績やノウハウを持っている会社におねがいしたい。

 しかし、オンラインではそこまで情報提供されていることがまれだ。「ゴールド」、「シルバー」といったある意味ITベンダー基準のざっくりしたレベルが提示され、製品単位での導入実績があるくらい。結局、連絡先だけを控えて、いくつかの業者に直接話を聞いたり、とにかくIT業者のサイトを片っ端から回って見積もりを出してもらうことになる。これではいかにも時間の無駄だ。

業者選定でマッチング不全が起こっている

 仕事を受注する側のシステムインテグレーターやソフトウェア開発業者、ホスティング事業者、あるいはコンサルティングなどのIT業者も、こうした業種選定のマッチングに悩みを抱える。単に同じアプリケーションを扱っているだけでは、他社との差別化ができない。また、せっかく特定領域において実績があっても、それをエンドユーザーにアピールする手段がない。コストや会社の知名度だけでIT業者が選定されるのであれば、選定から漏れてしまう会社はいっぱい出てくる。この結果、会社の目の前に実績のあるIT業者がいるのに、エンドユーザーから見えないという例すら出てしまう。日本の市場規模自体が緩やかに縮小し、クラウドの台頭でITの商流が変化している昨今、このIT業者とエンドユーザーの「マッチング不全」は、今後大きな課題になっていくはずだ。

高いハードルのコンピテンシーで真の実力が分かる

 ワールドワイドで約40万社、日本だけでも約1万4000社のパートナーを抱えるマイクロソフトは、こうしたマッチング不全の課題を踏まえ、2010年11月に認定パートナー制度を刷新した。日本マイクロソフト パートナー戦略本部 プログラムマーケティング部 シニアマーケティングスペシャリストの梅田さゆり氏は、「約1年半前は、私たちもゴールド、シルバー、登録メンバーといった大まかなメンバーシップのプログラムしか持ち合わせていませんでした。これをパートナー様の強みや専門性をアピールできる形に変えたんです」と説明する。ここでキーワードになるのが、特定分野で優れた技術力とソリューションを保持していることを証明する「コンピテンシー」という新しいメンバーシップである。

日本マイクロソフト パートナー戦略本部 プログラムマーケティング部 シニアマーケティングスペシャリスト 梅田さゆり氏

 「マイクロソフト パートナーネットワーク」と呼ばれる同社のパートナー制度は、以下のような4つのメンバーシップから構成されている。簡単に言えば、情報提供をメインとするコミュニティ、開発や構築に役立つキットを購読するサブスクリプション、そして特定分野で高い実績と能力があることを示すSilver・Goldという2つのコンピテンシーである。

マイクロソフト パートナーネットワークの4種類のメンバーシップ

 このうちコンピテンシーは、当然ながら参加条件が厳しい。「たとえば、Goldコンピテンシーは特定分野の認定エンジニアが他のコンピテンシーに参加できないという条件があります。つまり、それぞれの特定分野で認定エンジニアを配置する必要があるんです。さらに顧客に対する導入実績の提示や、今後は販売目標の達成も加わります。このようにコンピテンシーごとに厳しい条件が設けられていますので、パートナー様には必然的に高い技術力が求められますし、コンピテンシーを継続するための熱意も必要になるんです」(梅田氏)とのこと。この厳しい審査がエンドユーザーに対する信頼の証となるわけだ。

 一方で、コンピテンシーを取得することで、ロゴ使用、社内使用ライセンスの提供、インセンティブプログラム、テクニカルサポート、アワードプログラム参加など、さまざまな特典を得られる。「社内ライセンスは、プリセールス段階で製品を検証したいといった場合に、重宝してもらっています。あと売り上げに応じたインセンティブも用意していますし、導入したあとのサポートも無償で提供しています」と、パートナーのビジネスサイクルを一通りカバーするように特典が用意されているという。

マイクロソフト パートナーネットワークで提供される支援策

 なによりコンピテンシーを取得することは、特定分野において、高いレベルのマイクロソフトソリューションを提供できる実力が対外的に証明されることになる。エンドユーザーにとってみると、自社が導入したいシステムやアプリケーションに強いIT業者が目に見えてわかるわけで、その効果は大きい。梅田氏は、「参加条件が物語る通り、コンピテンシーは実績や技術力の証になります。エンドユーザー様はそのパートナー様の実力が確実であることがわかります」と、その効果をアピールする。

全29種類でパートナーの強みがわかる

 コンピテンシーは2012年6月現在、全部で29種類が用意されている。BI(Business Intelligence)やコンテンツ管理、ポータル・情報共有、CRM/ERPといったソリューションや、パッケージソフトや受託などの開発案件の種別、あるいはOEMハードウェア、教育、ソフトウェア資産管理などの領域で分類されている。製品やサービス単位ではわかりにくいという声に応えたわかりやすい分類といえるだろう。

 たとえば、効率的なビジネス戦略を立てるための分析を主眼とする「BI」においては、SQL Serverだけではなく、Visio、Office Suite、SharePoint Serverなどの製品やサービスなどを組み合わせたソリューションが対象となる。また、Windows Serverをベースにしたインフラを強みとする「Server Platform」やActive DirectoryやForefrontを中心とした「Identity & Security」なども用意されている。日本マイクロソフト パートナー戦略本部 プログラムマーケティング部 シニアマーケティングスペシャリスト 三田明子氏は、「最近では、ユニファイド コミュニケーションの分野で、MessagingとCommunicationsが設立され、より強化されました。さらに2012年6月からは、Office 365などのクラウド対応製品を主に扱うSmall Businessというコンピテンシーが始まりました」と説明。時代の要請にあわせ、コンピテンシーは逐次拡張されている。エンドユーザーは、こうしたコンピテンシーを基に、自社の課題にあわせた専門性を持つIT業者を選定すればよいわけだ。

日本マイクロソフト パートナー戦略本部 プログラムマーケティング部 シニアマーケティングスペシャリスト 三田明子氏

 また、業者選定も「Microsoft Pinpoint」(http://pinpoint.microsoft.com/ja-jp/home)を利用すれば、約3000社以上のパートナー(2012年6月)のアプリケーションやサービスを検索できる。顧客の課題、注力産業などを検索条件に含めることができるほか、地図上にIT業者の所在地をポイントすることも可能だ。ここでもコンピテンシーやエンドユーザーからの評価が検索結果に掲出されるため、エンドユーザーもIT業者の得意分野が一目でわかるわけだ。なお、マイクロソフトパートナーのアプリケーションやサービスを「ASCII.JP x マイクロソフト」ページの右コラムより検索できるのだ。IT業者を選定する際、ぜひ利用していただきたい。

効率的なIT業者の選定に役立つMicrosoft PinpointはASCII.jpのマイクロソフトタブにもあるぞ

 もちろん、クラウドの台頭やそれにともなう大きな商流の変化にも確実に対応する。「既存のSI事業者がホスティング事業者と協業するパターンも増えてきました。こうしたクラウドや仮想化の進展と共に、今後はSystem CenterやHyper-Vなどを中心としたManagement and Virtualizationというコンピテンシーも重視されることになると思います」(三田氏)とのことだ。

「みんながWinになる関係」を模索した新しいパートナー制度

 IDCが2009年に行なった市場調査によると、マイクロソフトと緊密な関係にあるパートナーは概して高い満足度を得ており、さらに売り上げ拡大や収益に結びついているという。つまり、マイクロソフトのパートナーネットワークを利用し、真摯にビジネスを展開しているところは、そのリターンもきちんと得ているというわけだ。そして、この背景に、エンドユーザー、パートナー、そしてマイクロソフトの3者がきちんと「Win」にするべく、マイクロソフトが続けてきた試行錯誤があったのは間違いない。その結果として生まれたのが、得意分野をアピールするコンピテンシーであり、ライフサイクルに寄り添う各種特典であり、優れた検索ツールであるPinpointというわけだ。

 そして、IT関連に携わる企業であればこのマイクロソフトパートナー制度にいつでも参加できる。はじめは無料で参加できるコミュニティのメンバーシップレベルだが、段階的に専門性をアピールできるコンピテンシーを取得することが可能だ。参加後すぐに活用できる特典(支援策)についてわかりやすく紹介されているので、まずは以下のマイクロソフト パートナーネットワークのサイトをチェック。ビジネス拡大の有効性を理解したら、参加してみるとよいだろう。

 次回は、こうした制度やツールを積極的に活用し、ビジネスに活かしている人たちにマイクロソフトのパートナー制度の魅力や活用法について語ってもらおうと思う。

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