このページの本文へ

ライブドア時代の実績と信頼感が大きな武器

グローバルなクラウド接続サービスで攻めに転じるデータホテル

2012年06月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

NHN Japan傘下のデータホテルが攻めに転じる。国産の高速ファイル転送ソフト「Skeed Silver Bullet」を用いた「データホテル クラウドコネクト(以下、CLOUD CONNECT)」だ。5年ぶりにInterop Tokyo 2012に出展する同社の意気込みと新サービスの概要をデータホテル 代表取締役社長 嶋田健作氏に聞いた。

ライブドア事件の後も解約はなかった

 ライブドアがデータホテルに社名変更して、約半年が経つ。旧ライブドアは2012年1月にネイバージャパンとともにNHN Japanと経営統合され、もとよりライブドアが展開してきたビジネスのうち、メディア事業はNHN Japanに移管。そして、データセンター事業を引き継ぐ形で、ライブドアがデータホテルに社名変更したという経緯だ。現在は、心機一転「インフラで世界を変える」というコーポレートメッセージで、ホスティングを中心とした法人サービス事業をメインに展開している。

データホテル 代表取締役社長 嶋田健作氏

 同社の強みはブロードバンド黎明期から培ってきたノウハウをベースにしたフルマネージドホスティングサービスだ。Webサービス事業者のビジネスにあわせ、インフラを設計し、構築・運用までがっちり行なう。顧客といっしょに、課題解決に汗を流し、PDCAを回していくというのが、サービスを重視するデータホテル流の「ホスピタリティ」だ。嶋田氏は、「課題が多ければ多いほど、弊社のサービスがマッチします。問題が起こったら、復旧するところまで面倒見ますので、あるお客様からは、『障害が起きたら、うちの社員よりも焦ってくれますよね』と言われました」と語る。ある意味、自社自体が大規模なWebサービスを展開してきたライブドア時代から培ってきたDNAであり、矜持ともいえるだろう。「結果として、ライブドア事件直後も、解約はほとんどなかったんです」(嶋田氏)とのことで、長年にわたる顧客からの信頼は損なっていないという。

 一方で、単価的に他社より割高になる。しかし、嶋田氏は「課題の少ないところは、やはり安いサービスに流れてしまいますが、それはそれでよいと思います。伸びていこうという会社、高度なノウハウを必要とするところは、弊社に戻って来ます。せめて気持ちよく送り出すくらいしたい」と、てらいもなく話す。実際、設計や運用の自由度を得られる反面、「クラウド疲れ」してしまったユーザーが、戻ってくる事例も増えているという。

データセンター間を高速接続する「CLOUD CONNECT」

 顧客の要望に応える「守り」の施策とともに、経営統合から半年が経ったデータホテルは、新たに「攻め」の施策も打ち出す。その第一弾が、データホテルのデータセンターとグローバル、ユーザー拠点などを高速なオーバーレイネットワークでつなぐ「CLOUD CONNECT」である。嶋田氏は「日本から世界の市場に出るお客様をサポートしていきたい」と抱負を述べる。

 昨日発表されたばかりのCLOUD CONNECTは、「世界中のクラウドを1つにつなぐ」をコンセプトに、Skeed社の「Skeed Silver Bullet」という高速データ伝送技術を用いる。Skeed社はWinny事件で無罪確定した金子勇氏が社外取締役として名を連ねていることでも有名。同社が開発したSkeed Silver Bulletは、長距離通信や低品質回線で遅延を生じるTCPの弱点を補うべく、UDP上に独自のトランスポートプロトコルを提供する。このプロトコルにより、使い切れなかった帯域を有効利用することで、日米間の通信をFTPと比較し、約20倍高速化するという。また、暗号化やデータ整合性チェック、サーバー間の差分同期などの機能も取りそろえており、グローバルにおいても高速・安全・確実なファイル送受信が可能になるとのこと。

 CLOUD CONNECTは、世界10カ国のリージョンとそれをつなぐSkeed Silver Bulletをセットにしたもので、ファイルの転送が行なえる。各リージョンのデータセンターも、特に提携しているわけではなく、データホテル自体がユーザーとして借りているだけ。迅速なサービス導入のために、グローバル事業者との提携といった大がかりな話にはしなかったという。

CLOUD CONNECTによるグローバルでの高速接続

 サービスは転送料にあわせた従量課金プランのほか、10万円からの月額定額プランも用意される。Webベースの管理ツールのほか、専用のクライアントソフト(Windows/Linux)からも使えるとのこと。用途としてはオーソドックスなバックアップや災害対策のほか、「世界中のERPのデータを月次で集計するとか、RAWの画像データやログをリアルタイムで収集するとか、そういった大容量データの転送用途に向いています」(嶋田氏)など。顧客と話すと多彩な使い方が沸いてくるサービスだという。今後は、同社の強みでもある韓国データセンターと組み合わせたり、VDIの基盤自体をホストしたり、用途に特化したサービスを投入していくという。

■関連サイト

カテゴリートップへ