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競合との差別化では「星取り表」を追求するのか?

戦略より戦術重視?IBMの「スマーター・ストレージ」の意義

2012年06月06日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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6月5日、日本IBMはビッグデータ活用を支援する新ビジョン「スマーター・ストレージ」を発表。将来的な開発移項表明も含めて、多くの新機能や技術も発表したものの、競合に対抗するにはやや迫力不足な部分も見られた。

ストレージを伸ばすための3つの注力ポイント

 今回発表されたスマーター・ストレージは同社が推進する「スマーターコンピューティング」を実現するための戦略で、米国で開催中の「IBM Edge 2012」で発表された内容になる。ビッグデータやクラウド、ワークロードの最適化などに対応すべく、「Efficient by Design」「Self-Optimizing」「Cloud Agile」という3つを掲げる。

スマーター・ストレージの3つのビジョン

 Efficient by Designは、開発設計段階から効率性を追求し、増え続けるデータ容量をワークロードをかけずに管理し、コストも抑制することだという。こうした効率性に関しては、これまでもXIV Storage Systemの分散ミラーリングやProtecTIERサーバーの重複排除などの機能が用意されていたが、今回新たにIBM Storwize V7000/SVC(SAN Volume Controller)のリアルタイムデータ圧縮機能が追加された。最大80%の圧縮効果があり、パフォーマンスの影響がないというメリットを持つという。日本IBM ストレージ・テクニカル・セールス ソリューション担当部長 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐野正和氏によると、「ユーザーは完全に透過的に使える。圧縮をかけても重複排除がきちんと効くように一部を圧縮している」といったメリットを説明した。

日本IBM ストレージ・テクニカル・セールス ソリューション担当部長 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 佐野正和氏

 また、Self-Optimizingはアクセスパターンを分析し、パフォーマンスチューニングを自動化するといった機能で、おもに階層化機能を指す。これに関しては、これまで提供してきた「Easy Tier」を拡張し、サーバーのSSDと外付けHDDを自動階層化する機能を新たに開発すると表明した。さらに、アプリケーションとミドルウェアの要件にあわせ、データの配置を自動的に最適化するAPIの提供もあわせて表明した。

サーバー側のSSDと外付けHDDで階層化管理を実現するEasy Tierの拡張

 Cloud Agileという点においては、変化に対応するストレージや自動的なサービスのプロビジョニング、確実なデータ保護などを実現するという。もとより同社は「SONAS」というストレージソフトウェアにおいて、拠点間で同じディレクトリイメージを共有するシングルファイルシステムイメージという機能を提供しているが、今後これをより低価格なIBM Storwize V7000 Unifiedや他社のNAS装置で利用できるようにするという。

シングルファイルシステムイメージをSONASのほか、V7000 Unifiedや他社NASへ拡張

 新機能としては、IBM Storwize V7000において最大32PBのクラスタリングが可能になった点が挙げられる。さらに使用状況を分析し、投資対効果の高いストレージを提案する簡易診断プログラム「Smash」を提供するという。

 こうした戦略をとる背景として、佐野氏は毎年倍々で増えてきたHDDの容量拡張が今後緩やかになっていくというIBMの予測を披露した。「今までは必要な容量が増えたにもかかわらず、投資額は変わらず、容量単価の下落も著しかった。今後は性能面も頭打ちになり、GB単価が上がるため、ストレージの投資は増加傾向になる」(佐野氏)という分析の結果、前述した3つのポイントでストレージを強化し、ビジネス的に伸ばしていこうという方向性になったようだ。

2000年からの10年は年率で容量が倍増していたが、今後は25~40%程度に落ち着くというIBMの予測

「戦略」よりも「戦術」の説明は迫力不足か?

 数多くの新製品が投入された「EMC World 2012」の直後ということで、対抗するIBMとしてもストレージ製品のビジョンを展開したわけだが、今回の発表会を見る限り、「戦略」よりも「戦術」をメインとした説明に終始した印象だ。

 後半の質疑応答でも、「競合に対抗できるような目玉機能はないのか?」「IBMが開発表明している機能は、すでにEMCで実装しており、先進的とは言えないのでは?」「現状、IBM以外のユーザーは多いのか? グローバルでの実績よりも、日本での事例や戦略を知りたい」といった質問が飛び交ったが、各論的な機能のアップデートや差別化をアピールするにとどまっている印象であった。垂直型コンピューター「PureSystem」やビッグデータ向けの先進的なソフトウェアの投入、あるいはグローバルを前提としたクラウドサービスなど同社のアグレッシブな面を理解している担当も含めたプレスにとってみれば、今回の発表は「迫力不足」と感じたに違いない。

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