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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」第96回

ニコニコ動画「Nsen」にあって、au「LISMO unlimited」にないもの

2012年06月05日 12時00分更新

文● 四本淑三

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世界中で音楽を共有する場所ができたらいい

―― Nsenが意図通りに音楽の発見につながったとして、これはシーンにどういう影響を及ぼすと考えていますか?

あべちゃん ニコニコの音楽圏が拡大したとしても、商業音楽をおびやかすほどではないんじゃないかと、まだ思っているんですよ。むしろ商業音楽の人たちが、上手いシステムを構築できていないんじゃないか。それは権利を持っている色んな人たちがバラバラな動きをしていて、トータルで設計を考えられない環境にも問題があると思います。

ニコニコ動画の音楽はまだ「商業音楽をおびやかすほどではない」とあべちゃん

―― そういう意味でどうしてもNsenを一般の定額配信サービスと比べてしまうんですが。

あべちゃん この時代、何百万曲も聴けますということが、果たしてユーザーのニーズを満たすのかという話だと思うんですね。僕がニコニコ動画の色々なサービスを考えるに当たって、まず気をつけているのは、場を作ることなんです。それはNsenもしかりで。新しいツールができたとか、どういう点が便利になったより、同じような趣味の人達が集まって盛り上がれる場所を、どう作るかが先なんじゃないかと思うんです。

―― かつてのテレビやラジオみたいに、人気のある場所で流行した音楽が、ブームになるわけですよね。

あべちゃん 産業革命のように、新しいテクノロジーだったり、新しい文化がいきなり出てきて、その産業をもう一回支え直すことはあるかなとは思っています。まずボーカロイドが音楽業界の中で1つの文化になりつつある。それが一般の音楽市場の中でどれくらいの割合を取っていくかには興味を持っています。ただ音楽を聴く人に一定の影響を与えるかもしれませんが、CDチャートのようなものではすぐには明るみに出てこないかもしれないですね。メジャーのCDで買う層が集まっているわけではないので。

―― カレッジチャート(アメリカの人気ランキング。大学発のFMラジオ局が発信していた独自ランキングをまとめたのがはじまり)みたいなものが乱立している状況で、細分化の方向に進むとそうなりますよね。

カレッジチャートは現在もカレッジメディアジャーナル(CMJ)が発行中

あべちゃん とは言えティーンエイジャーにとって、ボーカロイドはクラスの中でもほとんどの人が知っているものだし、何年後かには分からないなとは思っています。あとは世界中でこういう場所に溜まって音楽を共有できる場所ができたらいいな思いますね。

―― turntable.fmがまさにそれでしたね。いろんな国の言葉がチャットで飛び交う。

あべちゃん それって外国の音楽だったらできるんですよね、英語が標準なので。でも日本のメジャー音楽ってなかなか日本を超えられないんですよ。

―― それも初音ミクなら超えられませんか?

あべちゃん そうなんですよ。初音ミクが出てきて、マイケルが亡くなった時に、次のマイケルになるのは初音ミクじゃないかと思ったんです。マイケル・ジャクソンって唯一無二の技術とカリスマ性を持っていたじゃないですか。かつ英語圏でいろんな人に聴いてもらえる。日本からその可能性があるとしたら、まず言語の壁を超えるということと、アイコンとなるカリスマ性が必要で。海外の状況を見ても、たった一人でマイケル・ジャクソンクラスの仕事ができるスターって、今だったらレディー・ガガくらい。

―― でもボーカロイドは背後にいる無数の人が支えていると。

あべちゃん 今クリプトンさんが開発されている英語版が発売されたら、面白い現象が起きてくるんじゃないかと思っています。やり方によってはマルチランゲージで、いろんな国のリスナーが同時に同じ曲を消費できる。初音ミクはそういう可能性を秘めていると思いますね。

―― じゃあ、まずティーンエイジャーにNsenを普及させないと。

あべちゃん そう思ってスマホ対応は必要だと思っているんですけどね。もうちょっと待っていただけると……。

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