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ワイヤレスジャパンで語られたアジアのモバイル業界の現状

2012年05月30日 22時30分更新

文● ASCII.jp編集部

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 東京ビッグサイトで開催されているモバイル業界の展示会「ワイヤレスジャパン2012」では、基調講演や各種カンファレンスなども行なわれている。その1つ、「アジアの移動通信サービス、現状と将来像」と題されたパネルディスカッションでは、アジアの携帯事業者が抱える現状についての説明が行なわれたので、その一部を紹介しよう。

モバイル業界の急激な成長を支えるアジア
日本とは桁が2つも異なるキャリアの収入

 まず、モデレーターであるITU無線通信規則委員会委員の伊藤泰彦氏は、モバイル業界の現状として、アジア市場での驚異的な伸びを挙げた。世界における携帯電話の契約全体のうち、約半分をアジアがしめており、しかも今年の成長幅と予測されている約7億7000万契約の約4億5000万契約がアジアなのだとする。

 そんなアジア圏の中でも特殊な状況を抱えるのがインドだ。インドのタタ・テレサービシズ(NTTドコモが出資している)の大野弘司氏は、日本のモバイル業界とは大きく異なるインドの現状について解説した。

日本の感覚では圧倒的に小さなARPUを前提に携帯事業者は経営を行なっている

 まず、契約数は人口比で約70%台まで達している。プリペイド契約が中心のアジア圏ではこれが普及率にそのままつながるわけではないが、それでも固定電話の普及率が10%以下の同国では、あらゆるインフラの中で圧倒的に高い普及率と言えるとする。

 一方、ユーザー1人あたりの月間収入であるARPUはわずか1.8ドル。音声通話の1分あたりの収入は1円に満たない。また音声通話以外の収入が全体に占める割合は10%台。モバイル端末のインターネットアクセスによるものとなると、その10%台のさらに5分の1程度という。

 携帯電話自体の普及率はまだまだ成長の余地はあるが、これから携帯電話を持つ層の経済力は当然さらに低いと考えられ、この低い収入でどう収益を上げていくかが課題となるとした。ただ、一部のお金持ちがスマートフォンに移行するだけで、大幅に収益が伸びる可能性については期待しているとのことだ。

スマートフォンが爆発的に普及する韓国
3Gサービスもこれからのベトナム

 つづいて登場した韓国最大のキャリアであるKTのキム・ソクジュン氏は、韓国の状況について、今年度中には4分の3がスマートフォンに移行するだろうという見込みを示した。データ量の爆発的な伸びは、日本と同様で3G網は急速に逼迫している。

韓国最大の携帯キャリア、KTのキム氏。急激なデータトラフィックの増加に対応すべく、あるモノ全部を使って対応している

 KTは固定通信も展開しているので、全国に25万の無線LANスポットを用意するほか、モバイルWiMAXの韓国版であるWiBroも活用している。W-CDMAとWi-Fi、WiBroを合わせ、これを3W戦略を呼んでいるとのことだ。また、LTEについても一気にエリアを拡大したほか、キャリアの収益確保のため、ミュージック共有サービスなど、コンテンツの強化も進めている。

 最後はベトナム。VNPT(ベトナム郵政通信公社)のトラン・ビン・フック氏によると、ベトナムの3Gサービスは2009年末にスタートしたものの、2011年時点でユーザー数は携帯利用者の3%とまだまだ少数。ただ、現在はすでに7%まで伸び、データトラフィックの増加はやはり急速に進んでいるという。現在の収入源はやはり音声通話やSMSが中心。スマートフォンの割合もまだ8%だが、安価なスマートフォンを普及させることが今後のカギになるとの見方を示した。

ベトナムではまだ3Gネットワークの構築が行なわれつつある段階。ただしスマートフォンは伸びている

周波数の不足は技術革新で解決される?

 データトラフィックの爆発は、程度の差こそあれ、各国で共通の課題だ。特に周波数不足は大きな問題となっている。

 タタの大野氏はインドの携帯事業者が1社あたり通常4.4MHz幅の周波数しか持っておらず、「大変です」とする。そしてインドの現実として、政府高官の不正があり、割り当てられるはずの周波数がキャンセルされてしまう事例を挙げ、まずは安定した政策が必要とする。

 一方、ドコモの辻村清行氏は周波数の逼迫について、「非常に楽観的に考えている」と意外な回答。携帯電話がスタートした当初は、今では最も使いやすいと言われている800MHz帯ですらも、非常に高い周波数だとされていたとし、需要さえあれば3~4GHz帯といった周波数も活用される未来を示唆。「(携帯事業者は)技術革新を信じて、サービスを磨いていくことの方が重要ではないか」と語った。

ドコモの辻村氏


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