発熱はやや高め
低価格でもトータルの出来には好感
他方で、ちょっと気になったのは発熱だ。薄いということはそれだけ熱を逃がしにくいということであり、軽いということは、熱を逃がすための機構に重量を割けていない、ということでもある。
ボディーの発熱は全体的に高めだ。高負荷になると、キーボード左側と底面の熱が多少気になる。これは、発熱が大きいSandy Bridge世代を採用しているがゆえの難点といえる。
だが、別の言い方をすれば「このくらいで済んでいる」ということでもある。ボディーがカーボンであり、アルミなどの金属に比べると熱を伝えにくいからだ。金属ボディーの製品は「ボディー全体で熱を逃がす」構造であり、パームレストなどの長く触れる部分まで熱くなりやすいのが欠点だ。だがカーボンボディーのLuvBook Xは、ピーク発熱の高さに比べると、パームレストなどの発熱がおだやかになっている。膝の上で使うと、ちょっと左側が熱いと感じるが、タイプ時にはあまり気にならない。
放熱はヒンジ部にある金属フレームが一手に引き受けている形になるので、ここはとにかく熱くなる。場所的にそうそう触れる部分ではないのだが、予備知識なく触ると、かなり驚くほどの熱が溜まる。この点は認識しておく必要がある。
そろそろまとめよう。トータルの出来として、LuvBook Xは悪くない。見た目からは「MacBook Airインスパイア」な匂いがするし、事実それは否定しきれるものではない。
しかし、その上で実直に「このサイズで求められるものはなにか」を考えて、しっかりとした製品作りをしている印象は強く、低価格だが好感を持てる製品になっている。(失礼ながら)マウスコンピューターのような規模の企業で、これだけ意欲的な製品を作っていくという意気込みは高く評価したい。
他方で、タッチパッドの感度や操作感を中心に、この規模のメーカーではなかなか手を入れづらい部分がある、と感じるのも事実だ。試作機でのチェックであったため、すべての面で満足いく品質であったか、というとそうではない。最終製品がどうなっているか気になる。
Ivy Bridge世代でないことからもわかるように、LuvBook Xはスペックにこだわる人に向けた商品ではない。カーボンのルックスや持ってみた感触などで決めてほしい製品だ。だからこそ最後の決断は、できれば店頭などで、製品を触れてみて下していただきたい。
- お勧めする人
- ・軽いUltrabookを探している人
- ・人がもっていないノートパソコンを持ちたい人
LuvBook X(直販モデル LB-X200S-Pro)の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i5-2467M(1.60GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 11.6型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | SSD 120GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェース | USB 3.0×1、USB 2.0×1、microSDカードスロット、mini DisplayPort出力など |
サイズ | 幅298×奥行き194×高さ5.5~17mm |
質量 | 約985g |
バッテリー駆動時間 | 約5.5時間 |
OS | Windows 7 Professional 64bit版 |
価格 | 9万5000円前後 |
■Amazon.co.jpで購入
スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場 (アスキー新書)西田宗千佳(著)アスキー・メディアワークス
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)。最新刊は「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)。
この連載の記事
-
第116回
PC
「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い -
第115回
PC
ソニーの本気—Haswell世代でVAIOはどう変わったか? -
第114回
PC
渾身の「dynabook KIRA V832」はどう生まれたのか? -
第113回
PC
HPの合体タブレット「ENVY x2」は、大容量プロモデルで真価を発揮! -
第112回
PC
ソニー“3度目の正直”、「Xperia Tablet Z」の完成度を探る -
第111回
PC
15インチでモバイル! 「LaVie X」の薄さに秘められた魅力 -
第110回
PC
フルHD版「XPS 13」はお買い得ウルトラブック!? -
第109回
デジタル
ThinkPad Tablet 2は「Windows 8タブレット」の決定打か? -
第108回
デジタル
今後のPCは?成長市場はどこ? レノボ2013年の戦略を聞く -
第107回
PC
Windows 8とiPadがもたらす変化 2012年のモバイルPC総集編 -
第106回
PC
Clover Trailの実力は? Windows 8版ARROWS Tabをチェック - この連載の一覧へ