このページの本文へ

石狩データセンターの冬はどうだったのか?

おらがDC自慢が炸裂!「第1回 DCな人の夕べ」レポート

2012年05月30日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

5月29日、都内にあるビットアイルのセミナールームにおいて、「第1回 DCな人の夕べ」が開催された。さくらインターネットや野村総合研究所(NRI)、IDCフロンティアなどの担当者が短時間で次々と登壇し、データセンター担当者向けのプレゼンやディスカッションが行なわれた。

厳しい自然と戦った?石狩DCの冬

 「DCな人の夕べ」は、今まであまりなかったデータセンター現場担当者向けというユニークなイベントで、NECや三菱総合研究所、さくらインターネット、ビットアイルなどのメンバーが実行委員会として名を連ねている。とはいえ、「夕べ」という会の名称の通り、メーカーやベンダー色は薄く、有志の情報交換会という意味合いが強い。1時間という限られた時間の中で、3社のプレゼンやパネルディスカッションが行なわれた。

 トップバッターとなるさくらインターネット運用部 マネージャーの宮下頼央氏は、「石狩DCで冬を越して」というテーマでプレゼンを披露した。

寒さに弱いのに石狩DCを任されたと話すさくらインターネット運用部 マネージャーの宮下頼央氏

 さくらインターネットの運用部は、データセンターの入退管理、サーバー構築監視、保守対応、顧客サポートなどを担当しており、宮下氏は昨年竣工した石狩データセンターでの運用に就いている。石狩データセンターで冬を越した同氏によると、外気は-15℃を記録したが、サーバー室が冷えすぎることはなかったとのこと。「寒すぎた場合に備えてドライヤーを用意したが、杞憂でした」(宮下氏)。積雪時の外気取り込みも想定していたため、サーバーの運用には直接影響なかったと話す。

積雪対策はばっちりだった

用意しておいたドライヤーは不要だった

 とはいえ、豪雪、つらら、結露などいくつかの問題が起こった。石狩は比較的雪は少ないというが、それでも冬季は積雪は3mにおよんだ。豪雪で外に出るための扉が開かなくなり、「鳶の人にハシゴで登ってもらい、雪かきしてドアを開けてもらった」(宮下氏)という。また、屋根から垂れ下がる「殺人つらら」も数mにおよび、なんと建物内にもつららができたという。毎年除去作業を進めていかなければならないのがけっこう負担になると話す。

殺人つららは石狩DC名物になるか?

建物の中にもつららが……

積雪でドアが開かない状態に

野生動物も登場する自然豊かなDC

 その他、野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 増永 直大氏による「日本一データセンターを見た男」が語る、こんなデータセンターは萌える」や、IDCフロンティア 事業企画本部 林 眞樹氏と住友電工 公共・産業営業部 ネットワークグループ 岸田 拓氏による「光ケーブルの営業がやってきた!運用側はこう突っ込め!」などのプレゼンも披露された。

うちのデータセンターはここが自慢!

 後半のパネルディスカッションでは、さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏のモデレートのもと、NECビッグローブ、さくらインターネット、ビットアイル、セコムトラストなどの各センター長が、「データセンター自慢」を披露した。

後半のディスカッションの様子

NECビッグローブ
基盤システム本部 児山正之氏が、おもに省電力の取り組みを披露。2010年までの取り組みでPUEが頭打ちになったことで、「空調機ごとに細かく値をとって、見える化することで、最適化を図った。台数を増やしてもPUEを下げられた」(児山氏)という施策を進めた。また、社内ボランティアが一定期間サーバーの電源を抜き、消費電力を落とすことで、東京都の優良事業所になったという。

空調機の特性を見極めた上での手動運用がPUE低下に貢献

ビットアイル
iDC本部 品川オペレーション部 本田崇氏が、現場担当者に優しい同社のDCの工夫をアピールした。「受付にきちんと女性がいる。あと汗ふきのためのおしぼりや突然の雨のために傘を用意している」(本田氏)といった工夫のほか、同社のDCの代名詞ともいえるマッサージチェアも披露。「ただ、社員は使えないので、日々拭かせてもらっています」(本田氏)。

エンジニアフレンドリーなビットアイルのデータセンター

さくらインターネット
宮下氏が、電力室を見学するためののぞき穴や同業者に配線図面を見られないようにするパネルなど石狩データセンターでの細かい工夫を披露した。「通常1週間かかる電気工事を不要にするコンセントボックスを使っている」(宮下氏)
セコムトラストネット
セコムトラストシステムズ 業務サービス本部 神戸雄一氏が、災害対策やセキュリティ面での設備について説明。「耐震の本館と免震の新館を渡り廊下をつないでいるという珍しい構造になっている」。また、国内最大の3000KVAのディーゼル発電機を2台所有しており、3台目も導入される予定だという。

セコムトラストネットでは、本館と新館の間に渡り廊下を設置

 パネルディカッションの後は、参加者やパネリストなどとの交流会が行なわれた。現場に携わる人にとっては、他社のデータセンターの運用を知るよい機会だったと思われる。今後はより多くのデータセンター事業者に参加してもらい、工夫を披露してもらいたいところだ。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード