パナソニックは、自発光型のプラズマディスプレイパネル(PDP)を採用した電子黒板「インタラクティブ・プラズマディスプレイ」(「TH-65PB1」)を6月末から出荷すると発表した。
「パネルの非テレビ用途において、重要な役割を担う製品」とこの製品を位置付けるのは、パナソニックの役員であり、AVCネットワークス社の伊藤好生上席副社長。
また、パナソニックプラズマディスプレイの白土清社長は「電子黒板に最適なパネルを追求した結果行き着いた。PDPならではの滑らかな書き込みの実現、最大4本の電子ペンでの同時書き込みなど、PDPならではの特徴を訴求していきたい」と語る。伊藤役員、白土社長にインタラクティブ・プラズマディスプレイへの取り組みを聞いた。
インタラクティブ・プラズマディスプレイは、パネル事業の事業構造改革に取り組んでいるパナソニックにとって、新たな事業を模索する重要な製品となる。
パナソニックでは、2011年度実績でパネル事業が赤字に陥り、2012年度第4四半期での四半期黒字化、2013年度以降の通期黒字化を視野に入れた取り組みを開始している。
生産拠点の再編を進める一方、収益性の高い大型化を促進するなどの構造改革を進めているところだ。その中でも戦略的事業に位置付けているのが、非テレビ事業である。プラズマディスプレイパネル(PDP)では2011年度実績でわずか数%だった非テレビ事業の構成比を、2012年度には20%にまで拡大。さらに、液晶では2011年ではゼロだったものを、2012年度には一気に50%にまで拡大する計画だ。
非テレビ事業では、商業分野におけるデジタルサイネージや、医療分野における高精細ディスプレーなどのほか、教育分野や企業の会議室用途での需要が想定される電子黒板などがある。
色再現、広視野角、高速応答性などの表示性能に加えて
電子ペンシステムによる“書き込み”で優位性を追求
今回発表した「TH-65PB1」は、非テレビ用途のひとつの柱である電子黒板市場での展開を明確に打ち出したもので、「PDPが持つ特徴を最大限に発揮できる製品になる」と、伊藤上席副社長は語る。
画素自体が高速発光するPDPの特性を生かし、専用の電子ペンを活用することで、フルHD解像度の各画素ごとに、1秒間に60回のスピードでペンの位置を検出。これにより、ペン先と描画位置が一致した滑らかで自然な書き心地を実現しているという。
液晶パネルを採用した電子黒板で一般的に採用されている赤外線遮断方式に比べて、2.5倍の速度で検出しているため、細かい線や文字も鮮明に表示できるのが特徴だ。
また、最大4本の電子ペンを個別に認識し、異なる色/太さで同時に書き込めるうえ、服や手が画面に触れても誤動作しない。これにより、教育現場では、児童が同時に答えを電子黒板に書き込むといった使い方もできる。液晶パネルにおいて同様の仕組みを実現するには、別途オプションのシステムなどを付け加える必要があり、コスト増につながる。PDPはこれを抑えられるという。
「PDPは、色再現性、表示性能、広視野角、高速応答性などに優れている。さらに、単に表示するだけでなく、“書き込む”という点でのインタラクティブの実現においても優位性がある。PDPは、電子黒板には最適なディスプレーであり、テレビ用途以上に、パネルの強みが発揮できる分野である」とも語る。
PCをはじめ、iPadなどiOS機器とのワイヤレス連携をサポート
技術者が、PDPの特性がペン入力を行う電子黒板に最適であると気が付いたのは、今から約1年前のことだ。当初は今年秋の発売を投入していたが、これを前倒しで展開した。スピード感を持った製品投入が行なわれている。
また、TH-65PB1には、多機能描画ソフトを搭載。「パナソニックのグループ会社で開発したものをベースに改良を加えて搭載した」(伊藤上席副社長)というように、開発面でのグループ連携もみせている。これにより、電子ペン上のボタンを操作するだけで、メニュー表示や色の変更などの操作が可能だ。
さらに、ディスプレーを横方向だけでなく、縦方向へも設置することが可能で、教育現場では教材や書籍などを1ページ単位でフルに表示。さらに企業の会議では、上部に動画や写真、パワーポイントのデータを表示し、下部を電子黒板としても使用できる。この場合、上部の画像などは37型サイズでの表示が可能だという。
加えて、PCのほかに、iPadをはじめとするタブレット端末などのデータを、インタラクティブ・プラズマディスプレイにワイヤレスで送信することが可能だ。