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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第152回

プロセス変更で大きく変わるIntel 8シリーズチップセット

2012年05月21日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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Intel X79の後継は来年以降?

2011~2012年のインテルチップセットロードマップ

 最後に、Extreme Edition向けについても触れておこう。結果論ではあるが、どうもExtreme Editionではチップセットを2世代おきに更新というのが、ここしばらくの流れになっている。Bloomfield(最初のCore i7)と共に登場した「Intel X58」の後継品は「Intel X79」に飛んでおり、また「X89」に相当するチップセットは、今のところ登場するという話はまったくない。

 連載150回でも説明したが、Extreme Edition向けにIvy BridgeベースのXeonを投入するかどうかはまだ未定である。しかも、仮に投入したとしても既存のX79で対応できるから、無理に新しいチップセットを投入する必要がない。X79はすでにPCI Express Gen3に対応済みで、見劣りするのはSATA 6Gbpsの対応とUSB 3.0の対応程度。どのみちX79のグレードになると、マザーボードの単価も高い分、オンボードでUSB 3.0コントローラを複数搭載しているのが普通なので、これは大きなデメリットとはならない。問題はSATA 6Gbpsのポートが依然として2ポートのみである点だ。

 X79のSATAポートについては連載112回の末尾でも触れたが、プロトタイプ段階ではSASとSATAあわせて14ポートあり、うち6Gbps対応が10ポートという恐ろしく豪勢な構成だった。それが製品段階では、2ポートを残してすべてが3Gbpsになってしまった。この理由は単純で、65nmプロセスで6Gbpsの高速PHYを大量に搭載するのは、回路技術的に難しく、発熱あるいは信頼性の観点で実用に耐えないと判断されたからだ。

 このX79を含む「Patsburg」には、元々「Patsburg-A/B/D/T」の4製品があった。Patsburg-D/TはSATA 6ポートとSAS 8ポートの合計14ポートが使えるが、SATAの2ポートを以外は全部3Gbpsどまりである。最近、このPatuburgにCステッピングが登場したと話題になっているが、根本的には65nmプロセスを使う限り、発熱とそれにともなう信頼性の問題は解決できないから、45nmあるいは32nmへの移行が必要である。

 ところが製造プロセスを変えると、基本的にはもう一度プラットフォームの検証をやり直す必要がある。ベースがXeon向けの製品だから、信頼性は非常に重要な観点であるし、I/O周りとなるとそのプロセスに最適化した形で作りこんだハードウェア回路(ハードIP)の比重が増えるから、「プロセスを微細化しただけで回路は一緒です」という言い分は通用しない。例えば、65nm向けのUSBコントローラーのハードIPと、45nm向けのUSBコントローラーのハードIPは基本的に別物である。そのため「本当に正しく動くのか」の検証を全部やり直す必要があり、ステッピング変更では収まらないからだ。

 噂では、Cステッピングでは「Tweak Tool」(設定変更ツール)が存在するらしいので、これを使って(信頼性を犠牲にして)むりやり6Gbpsで動かすことも不可能ではないだろうが、公式にこれがサポートされることはないだろうと見られる。そんなわけで、X79の後継は45~32nmプロセスで製造する必要があるため、最短でもIntel 9シリーズの派生型ということになる。だが、これは「Haswell」世代向けチップセットとなるわけで、2012年中にX79の後継が登場する可能性はかなり低い、と筆者は考えている。

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